球春は楽しい

 2月にキャンプインしてから開幕までの間もプロ野球ファンにとって楽しいものです。なにが楽しいかって、そりゃ、期待に胸だけ膨らませるだけ膨らませるだけで良い時期だからです。とくに今年は監督が代わったのもありますし、代わったのが岡田と言うのもあると思います。

 岡田監督の評価もあれこれあります。最後の阪神の優勝監督である一方で、感覚が昭和で今の選手が付いて行けるかなんてのもあります。だったら落合待望論はなんだったんだと言いたいですが、とにもかくにも、

    プロ野球の評価は結果がすべて
 これに尽きると思っています。矢野前監督の評価もあれこれあります。残した成績も決して悪いものではありませんでしたが、モヤモヤする部分は結果としてありました。端的には優勝できなかったのもありますが、優勝のための戦略はどうだったんだろうです。

 完全すぎる後出しジャンケンに過ぎませんが、矢野阪神の長所は強力な投手陣です。これは12球団で随一とまでされています。逆に短所は打線です。思うように点が取れないのに見ていても歯噛みしていました。

 もちろん打線の強化に矢野も努めていたとは思いますが、結果としては満足できるものになっていません。そうなってしまった理由はあれこれあるにせよ、打線の強化も唱えればすぐに出来るものではないぐらいは知っています。

 ここでなのですが、強力な投手陣とイマイチ打線を抱えた時に、打線の強化以外の戦略は考えなかったのだろうかはあります。強力投手陣とイマイチ打線でペナントレースを戦うとなると、必然的にロースコア・ゲームが増え、それをいかにして拾えるかが戦略になるはずです。

 つまりは接戦のゲームをいかに勝つかの戦術です。接戦に勝つのに打線がアテにならないのなら、守備の強化はあったはずです。接戦での守備の破綻は致命傷ですし、矢野阪神もここってところで守乱で泣かされたゲームは少なからず記憶しています。

 阪神の守乱は金本阪神時代から言われており、矢野阪神もその状態を受け継いでスタートしています。守乱の原因は若手の我慢の起用とか、野手の駒不足なんかもありますが、矢野阪神が守備強化を実績として残したとはお世辞にも言いにくいところがあります。

 その象徴が末期には矢野シャッフルとも酷評されたポジションの頻繁な変更です。あれもコロナ禍のために、いつレギュラーが不在になるかの備えと弁護している人もおられましたが、コロナ禍は阪神だけでなく他の球団も等しく脅威ですから、矢野シャッフルの弁護としてはどうかと思わないでもありません。

 あくまでも素人の目から見てですが、矢野は守備に目を瞑っても打線の強化を目指した戦略だった気がしています。それぐらい打てない点を重視していたぐらいでしょうか。

 もう一つ誰かが指摘されていましたが、捕手出身監督の悪い面が出たともされています。捕手は野手の中でも特殊で、非常に専門性が高いポジションと言えます。ですが捕手の目から見れば、他の野手ならどこだって守れるはずの思想が出ることがあるそうです。

 これも聞いただけの話ですが、名捕手として大きな期待を受けてヤクルトの監督に就任した古田にもあったとされ、それだけが原因ではないと思いますが、古田ヤクルトの成績は揮わないものになっています。さらに言えば名将とされる野村にもあったとされます。

 矢野もそういう思想が根底にあって打線の強化を目指したのであれば、矢野シャッフルになった理由がある程度説明が出来そうな気はします。


 岡田の手法はオーソドックスです。ポジションごとに専門のレギュラーがいると言うものです。もう少し付け加えれば、ポジションにはレギュラーと控えがいて、競争とはレギュラーと控えで争われるものだぐらいでしょうか。

 ポジション別の野手の固定のメリットは、そのポジションの練習に専念できるのはあります。当たり前の話ですが、複数ポジションを守るより、一つのポジションの練習に専念した方が上達しやすくなりますし、野手同士の連携の成熟度も上がります。

 というか複数のポジションを守れるのも一つの才能で有り特技でもあります。それが出来る選手が少ないからユーテリティ・プレイヤーは重宝されると言い替えても良いはずです。この辺は野球とサッカーは違いますからね。


 岡田はポジションの固定、打順の固定を打ち出していますが、これはあくまでもチーム運用の指針と言うか、矢野阪神との違いを明確にしているだけのものとも見ています。岡田は顔に似合わずと言えば失礼ですが、ひたすら勝ちにこだわる勝負師であり策士です。

 シーズンが始まれば様々なアクシデントが起こる時は起こります。わかりやすいのは故障で、ワンプレーでシーズンを棒に振る事さえあります。また突然の大スランプに見舞われる選手もいます。そもそも体力不足でシーズンが進むにつれて成績が下がって行く選手もいます。

 それを見極め、いかに入れ替えて行くかが監督の手腕になります。苦境を乗り切るために岡田シャッフルが出ても驚きません。それがその時の戦力を勘案してベストであれば岡田は躊躇なく行使すると見ています。そう、

    プロ野球の評価は結果がすべて
 これを骨の髄まで知っているのが岡田のはずです。最後は定番のボヤキですが、最後の日本一が1985年、最後のペナント制覇が2005年、最後のシリーズ出場が2014年です。生きてるうちにペナント制覇、さらにシリーズ制覇を見たいですよね。待たされるのが阪神ファンの醍醐味とは言え、こっちの寿命が持たない歳になってます。