ツーリング日和2(第4話)神戸

 原田の親戚が協力してくれて見つけてくれたマンションに入りました。

「マンションだぞ」
「それも2Kだぞ」

 原田に言わせると阪神沿線は安いようです。高いのは、

「そりゃ阪急沿線だ」

 住んでいるとわかって来ましたが、神戸は北は六甲山、南は海。浜の方が庶民的で、山に登るほど高級住宅街になるようです。東京なら山手になりますが、とにかく東西に細長くて、南北が狭く、浜手から山手までと言ってもすぐなのです。

 さすがに百五十万都市ですが、街自体はコンパクトです。三宮周辺が繁華街になるようですが、これだけって感じたものです。

「東京と較べたら、どこの街だってそうだ」

 そうかもです。でも馴染んでくると手頃感は確実にあります。それとバイク乗りには嬉しいのですが、六甲山を越えると途端に田舎になります。手軽に田舎道のツーリングを楽しめるってところです。

「六甲山も楽しいだろう」

 これも驚きでしたが、六甲山は観光地化され、道路も整備されています。ただし道は甘くありません。それこその急坂とヘアピンの連続です。東京なら日光のいろは坂に匹敵すると思いますが、それが市街地からすぐに行けます。それと海が近いのです。東京だって海に面した街ですが、神戸の方が格段に近い気がします。

「食べ物も悪くないだろう」

 これも驚いたのですがパン屋が普通にあります。これではわかりにくいですね。東京では手作りパンであるだけでプレミアが付きますが、神戸では普通にあります。

「甘い物もな」

 洋菓子やもそうです。神戸では手作りケーキが当たり前になっているのです。それより何より、どこで外食しても美味い。

「関西では不味い店は生き残れないらしい」

 当たり前そうな話ですが、東京ではそうじゃありませんでした。しばらくは引っ越しの後片付けと、バイト探しをしていましたが、

「本業をやらないとな」

 やっているのは、やっています。東京から神戸に引っ越しをしたネタで何本か作っていますがが、モト・ブロガーとしてツーリングをやらないと意味がありません。どこに行くかになるが、

「気ままツーリングにしないか」

 これもツーリングのジャンルとしてあります。ツーリングと言うか、旅行のやり方の一つですが、その日に行くところはおおよそ決めて出発しますが、行く先で気が向いたところに行き、泊るところもその場で決めて行くサプライズ型のものとすれば良いでしょう。

「どこに行く気だ」
「うどん県」

 香川か、讃岐うどんは魅力的だな。香川に行くとなると思い浮かぶのは明石大橋ですが。

「それもあるが、ここは神戸だ。フェリーを使おう」

 へぇ、神戸から高松に行くフェリーがあるみたいです。船旅は絵になりますし、聞くと料金も高速利用より安そうです。原田が言うには問題は時刻だそうで、

 第一便・・・一・〇〇 → 五・一五
 第二便・・・六・〇〇 → 一〇・四五

 第一便で行くと高松を起点にしてのロング・ツーリングに良いですが、

「香川でうどんが食べにくい」

 要は店がまだ開いていないと言う事です。そうなると第二便になりますが、

「休日ダイヤになると第二便が八時出航で、高松着が十二時四十五分になってしまう」

 そうなると平日出発になります。それといくら気ままツーリングと言っても、バイトもそうそうは休めません。メインの収入源ですからね。そうなると金曜の朝にフェリーに乗って、日曜に帰って来るぐらいになりそうです。

「帰りもフェリーでも良いし、淡路経由で帰るのもあるだろう」

 そうなると香川から徳島に向かうツーリングがラフ・プランになります。どこのうどん屋にするかぐらいは決めて置いても良いと思うのですが、

「ここはどうだ」

 わら家という店で、四国村という民俗資料館的の一角にあるようです。近くに屋島スカイラインってのもあり走れば楽しそうです。

「目玉はいるからな」

 ツーリング動画も車載カメラからひたすら走行風景を撮るスタイルもあります。あれはツーリング場所によってはそうなってしまうのもありますが、やはりプラス・アルファがある方が評判が良いところがあります。

 言い方は悪いですが名所めぐり的な要素がある方が喜ばれます。ここも名所めぐりに偏り過ぎるのも良くないところがありますが、全く無いとあまりPVが稼げない気がします。

「どこを走っても似たような動画になりやすいからな」

 ツーリング動画を見る目的は、自分が行く時の参考にする人が少なくありません。だから道案内的な要素がある方が良い気もしています。とくにわかりにくいところはそうです。それと何が見れるかの情報も欲しい人も多いと考えています。

 ツーリングをする人も、ただ走りたい人もいますが、観光をミックスさせたい人も多いのです。休憩とのかねあいもありますし、食事をどうするかも案外重要な情報です。行って見つけるのもツーリングの楽しみですが、

「行ったら無かったもあるからな」

 マップ情報は良く出来ていますが、行ってみたら休みだったり、満員で入れなかったり、

「行っては見たものの入る気がしなかったりもあるからな」

 そういうのも含めてツーリングですが、それなりの事前情報が欲しいのはあります。だからツーリング動画と同じコースを走る人も多いようです。この辺は休日は限られていますし、少しでも有効利用したいだろうからと思います。

「今回は初めて走る人の視点が入ると思うぞ」

 ここも微妙な点ですが、行き慣れたところを番組にすると、かえってスムーズに行き過ぎて面白味が乏しい時もあります。迷い過ぎるのも良くありませんが、少しトラブルがある方が面白がってくれる面が確実にあります。

 原田と計画を詰めていたののですが、今回は最悪うどんを食べて帰るだけでも良いとしました。帰りのフェリーは一九・一五分の高松発があり、それに乗れば、

「原田、神戸着は零時だぞ」
「泊まるより安い」

 とにかくカネがありませんから、取材費はなるべく抑えたいところです。泊まるなら泊まるだけのインパクトとメリットが欲しいのです。

「後は成り行き次第だな」
「美女との出会いがあるかも」
「鏡を見て言え」