斉の国の都で、女性たちに丈夫の飾りが流行します。伝えられるところでは男性風ファッションだったとされます。これを見た為政者である霊公はこれを風紀の乱れと判断し禁止令を出します。
ところが禁止令など、どこ吹く風で丈夫の飾りの流行は止まりません。そこで霊公は役人に、丈夫の飾りをしている女の帯を切ってしまえと命令します。帯を切られれば前がはだけますから、恥しくて歩けなくなるだろうぐらいで良いと思います。
ところがそれでも丈夫の飾りは減るどころか、逆に増える勢いを示します。自分の威権を無視された霊公ですが、さすがに鼻を削ぐとか、耳を切るみたいな罰は過剰過ぎるとは考えます。とは言え禁止令を無視されたままで終わる訳には行きません。
ここで晏嬰に助言を求めます。晏嬰の解答は霊公の寵妃が丈夫の飾りを好み、霊公がそれを認めている事実を指摘し、
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「そんな状態での禁止令など、店先に牛頭を掲げ、馬肉を売っているのと同じです」
もう一つ、これは燕の国のお話です。弱小国であるが故の悲哀を舐めていた昭公は、なんとか優秀な人材を招聘をしようとあれこれ努力を重ねていました。ところが一向に人材が集まる様子はなく、そこで郭隗にどうしたら集まるかを聞きます。すると、
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「隗より始めよ」
隗より始めよも、牛頭馬首も言い換えれば、
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率先垂範
率先垂範の『範』ですが、良い見本を示しても必ずしも従うとは限りません。とくに理では良いとはわかっても、情で違和感を持つ時とかです。逆に悪い見本を示した時には、この時の威力は絶大です。瞬く間に部下はそれを見習うどころか野放図に助長します。
政府は五輪を断行しました。これも一つの政治判断ですが、断行するにあたり、ある種の五輪聖域論を展開したと感じています。五輪だから許される、五輪だから特別だとかです。普段であれば五輪さえ終われば少々の特別扱いなど短期間で忘れ去られるはずですが、今回は尾を引きそうな気がしています。そんなもの誰だって思いつきます。
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「五輪でOKなのに、○○はどうしてダメなのか」
ましてや今の状況では溜まりに溜まっている怒りの矛先が向かうだけです。こんな時期に五輪という疫病神を抱え込んでしまった宿命なのでしょうか。