コロナワクチン接種計画

 下書きを書いているうちに次々に情報が増えて、まとめるのに往生させられました。とりあえず参考にしたのは、

 このあたりから調べてみます。


ワクチン数

 まず 表にしてみます。

メーカー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
ファイザー 6000万人分 1200万人分
モデルナ * * * 2000万人分 500万人分
アストラゼネカ * * * 1500万人分 4500万人分

 この表にも注釈が必要です。基本は12月情報ですが、官邸情報ではファイザー製が上積みされています。数が増えるのは悪いことではないですが、その代わりに入荷時期が曖昧になっていたはずです。12月時点では6月までに6000万人分が確保されるとなっていましたが、それが年内、つまり12月までに7200万人分が確保できるニュアンスに変化していました。たしか厚労大臣の記者会見のニュースのはずです。

 ファイザー製にはまだ続報がありましたが、モデルナ製、アストラゼネカ製については、官邸情報で確保量が再確認できましたが、入荷時期については12月情報に留まります。それでも言えそうなことは、とくに接種開始時にはファイザー製が使われそうぐらいです。

 ・・・そういう先からアストラゼネカ製の国内生産の話が今朝の神戸新聞にありました。


優先順位

 これも現時点では

  1. 医療従事者等
  2. 65歳以上の高齢者
  3. 基礎疾患を有する者
  4. 高齢者施設等の従事者
  5. 60~64歳の者
  6. 上記以外の者
 この順番になっています。このうち医療従事者等は、

新型コロナウイルス感染症患者(新型コロナウイルス感染症疑い患者を含む)に直接医療を提供する施設の医療従事者等(新型コロナウイルス感染症患者の搬送に携わる救急隊員等及び患者と接する業務を行う保健所職員等を含む。)

 これに私が入るかどうかと言われると入りそうな気がしませんが、医療従事者接種の予定人数は370万人とありました、医療従事者で、

  • 医師30万人
  • 看護師・准看護師155万人
 こうなっています。とにかく対象者の表現の中で、
    直接医療を提供する施設の医療従事者等
 ここの解釈が微妙で、狭く取ればコロナ患者収容病院の中でも、さらに直接コロナ治療に従事する者にも取れますが、一方で370万人ならもっと広い感触があります。それでもうちのような診療所は外れている気がしないでもありませんが、後述しますがやっぱり入る気がしないでもありません。

 それと資料を読む限りですが、接種計画が具体的なのは65歳以上の高齢者(3700万人)までであり、この辺は始めてみなければわからない部分と、ワクチン供給の不透明さが関連していると考えられます。


超低温冷凍庫

 これも振り回されました。超低温冷凍庫も2種類あり、

    ファイザー製用のマイナス75度対応(F type)
    モデルナ製用のマイナス20度対応(M type)
 これが1/18付報道で、

厚労省は超低温冷凍庫を、2月末までに約1500台配る。6月末までに計約1万台を全市区町村に最低1台割り当て、基本型施設に位置づける。

 この1万台について12月時点では、 

医療機関で冷凍保管が必要なワクチンを適切に保管できるように、マイナス75°Cのディープフリーザーを3,000台、マイナス20°Cのディープフリーザーを7,500台確保。

 報道ではF typeが1万台みたいな書き方をしていますが、M typeとの混同があるぐらに考えていました。F typeが3000台でも単純平均で4万人あたりに1台になるからです。そこからサテライト型となっている接種機関に分配する計画でも不自然じゃなかったからです。

 ところがギッチョンです。官邸情報を見て仰天しました。

フリーザー2万台(-75度1万台、-20度1万台)を国で確保済み。

 たった1か月でF typeが3000台から1万台に増えています。どんなマジックかと思いました。F typeの配布予定も書かれてあり、

-75度のフリーザー(ファイザー社のワクチン用)は、3月末までに3,370台(2月:1,510台、3月:1,860台)が順次配送される。

 残りの6000台余りは6月末までに順次配備で良さそうです。1万台の何に驚くかですが、単純平均で実に1万2000人に1台になるのもありますが、配備先の医療機関がどこになるかです。イメージとして基幹病院になるのですが、医療施設動態調査を確認すると、病院数はすべてひっくるめて、

    8327ヵ所
 大小合わせてすべての病院に配置しても、1600台ぐらい余ります。他に配置しそうなところとして保健所ぐらいが思い浮かびますがこれも469ヵ所しかありません。そう、まだ1000台ぐらいありますから、後は・・・診療所でしょうか。

 卑近な例を考えると、私が住んでいる区は12万人ですから、F typeが10台配備されるはずですが、病院は全部で8ヵ所、保健所に置いても9台、残り1台はどこに置くのだろうってぐらいになります。M typeも同数ありますから、これがどう配備されるかは注目されます。


各社のワクチンの特徴

ファイザー モデルナ アストラゼネカ
保管温度 -75℃±15℃ -20℃±5℃ 2~8℃
バイアル単位 5回分 10回分 10回分
最小流通単位 195 10、2 10
 ファイザー製、モデルナ製がmRNAワクチンで、アストラゼネカ製がベクターワクチンです。最小流通単位とは、購入するときの最小単位、つまり1箱の単位になります。たとえばファイザー製なら1箱に195本のバイアルが入っており、975回接種分があるということになります。

接種ペース

 12月時点の計画では、

1か所当たり、月3,000回の接種を行うことになる。

 これみて驚きました。月に3000接種と言えば週当たり750接種であり、週5日として1日150接種です。1日150接種と言っても実感しにくいと思いますが、診察室に接種希望者が入り、次の接種希望者が入るまでを、

  • 1分として2時間半
  • 2分として5時間
  • 3分として7時間半
  • 4分として10時間
 こういうものには律速段階があります。行列を作って接種するだけなら1分でも可能ですが、ワクチン準備、接種券の事務手続き、定番の丁寧な説明・・・少なくとも診療所が診察の傍らに接種するスタイルではこなせる数ではありません。

 そうなるとコロナワクチン専用外来の設置が必要ですが、そのためには、それに対応する専属医師及びスタッフが必要になり、そういうマン・パワーを提供できる医療機関は・・・とにかくすべての病院にF typeもM typeも配備されて余るぐらいの計画ですから、前線ではどうなるのだろうです。

 考えれるのは集団予防接種会場を設けるぐらいですが、昭和の時代の学校の集団接種スタイルって訳にはいかない部分があります。接種者であっても密は避けるが適用されます。これは病院でもそうなりますが、仮設会場であっても適用されるはずです。

 それと接種に伴う副反応、とくにアナフィラキシー反応が既に報告されています。頻度は低いのですが、これが起こっても対応できる体制の整備は怠れません。怠れば・・・長くなるので今日は省略です。

 もう一つの問題点は仮設であっても常設会場に近い運用が求められます。単発で1日や2日やっても意味ないでしょう。医師は医師会が動員可能でも、その他スタッフはどうするかは出てきます。いくら医療者でも、いきなり初顔合わせで多人数の対応は難しいところがあります。


 ・・・ここまでは下書き部分で、もっと具体的に示されてました。基本モデルがわかりやすいのですが、これは10万人の自治体を想定しています。実はって程ではありませんが私が住んでいる区の人口が12万人なのでイメージしやすいのですが、まず接種対象者が高齢化率を27%として2.7万人としています。

 2回接種ですから5.4万回の接種が必要になりますが、これを9週間で接種を終えるのが厚労省の目標になっています。そうなると、

    54000(回)÷9(週間)= 6000(回/週)
 こうなります。接種施設を分類してまして、
  • 基本型接種施設
  • 連携型接種施設
  • サテライト型接種施設
 違いは基本型には超低温冷凍庫が設置してあり、連携型やサテライト型にワクチン分配機能を持ちます。とくに連携型は冷凍庫が配布されるまでの過渡期的なものと考えれれ、順次基本型になっていくと見ています。とにかく1万台ありますから。

 他には求められる接種規模が違い、

  • 連携型は1日100接種以上可能
  • サテライト型はそこまで要求されない
 だがこれも別の資料を読むと様相が変わります。「基本型 = 連携型」としておきますが、
  • 基本型は10日間で1000接種以上(月間3000接種に該当でしょう)
  • サテライト型は1日に100接種以上、ただし接種日のみ
 こうなっています。上で概算した通り、基本型は週に750接種になりますから、サテライト型は残りの450接種が求められると考えられますから、1か所当たり150接種ぐらいになります。

 それとここまでなら基本型が5か所程度でサテライト型が15か所程度ですが、最終的には、

市内の病院5か所、診療所70か所と仮定

 ここも最初に読んだ時に目を剥いたのですが、これは3月段階の目標ではなく、とくにアストラゼネカ製の使用が可能になった時と見るべきかと思います。

 さて週に6000接種のために医療機関に求められるものがより具体的にイメージしてあるのですが、基本型に付属する3か所のサテライト型で1グループとするようです。

 おそらく1グループあたりで週間1200接種を行えば、5グループもあれば6000接種は可能とした気がしています。


感想

 さすがは厚労省の計画で可能そうに読めない事もありませんが、現実を私の住んでいる区で想定すると厳しそうな気がします。まず基本型とされた病院が月間3000接種も可能かはあります。病院と言っても規模も能力もピンキリだからです。

 うちの区は8病院あるのはありますが、5ヵ所とか6ヵ所も基本型にされると対応できるのかの疑問は正直にところ出てきます。

 サテライト型は診療所になりますが、接種対象者からして内科が中心になります。小児科が接種しても良いのでしょうが、小児科は小児科で定期接種を行っています。その上に1日あたり100接種以上の日を作るのは容易ではありません。つうか、高齢者が小児科に来るのかもあります。

 内科診療所が中心になるでしょうが、どうなんでしょう、1日100接種に対応できるところが、どれほどあるかです。その数になると、スタッフの熟練度がかなり左右する気がします。小児科はflu接種時期に近いことを毎年やってますが、その辺はどうだろうかです。

 ですから高齢者接種の大部分を9週間で終わらせるのはやはり画餅でしょう。画餅の理由で大きいのは、接種機関が仮に対応できたとしても、そんなに整然と接種者が接種機関に来てくれると思えないからです。どんなに頑張って予約で固めても、

    今日は天気が悪いからやめとこ
 これが出るのがワクチン接種です。言い出せばキリがないのですが、うちの区はいわゆる都市部で人口密集地域になり、厚労省のモデルに近い接種体制を曲がりなりにも取れるかもしれません。高齢者率ももう少し低いはずですし。

 ですが同じ10万人ぐらいの自治体でも、そうはいかないところも少なくありません。もっと範囲が広く、高齢者率も高く、医療体制が弱いところです。ついでに財政基盤も脆弱みたいな感じです。

 どうしても批判的になる部分が出てしまいますが、出来るだけ計画に近いスケジュールで進行してくれることは期待はしています。そうならないとコロナ禍からの脱出が先に延びるだけだからです。