近江勧学館探訪記

 小説に競技カルタを題材として取り上げたので、非常に珍しい事ですが現地取材を敢行しました。神社自体は立派なもので、映画ちはやふる関連グッズがあれこれ売られているのは微笑ましく感じました。ちはやぶる関連じゃないですが、

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 近江神宮に来たシンボルみたいなシーンに使われていましたが、これは楼門です。この楼門は二代目で初代は昭和19年(1943年)に完成し白木の桧皮葺でした。これが昭和28年(1953年)に放火にて焼失、昭和31年(1956年)に再建竣工となっています。拝殿は白木の桧皮葺でやや地味ですから、映画的にはこちらを使うのはわかる気がします。

 脇道ばっかり逸れますが、近江神宮は宇佐山の麓にあるのですが、なぜに宇佐山なのかは滋賀県神社庁より、

治暦元年源頼義が当山に祠宇を建て、豊前国宇佐神宮を勧請した、よってこの山を宇佐山という。

 ではしょぼい状態になっているかと言えば大津市歴史博物館より宇佐八幡神社の夜祭として、

9月14日夜から15日にかけて錦織一丁目の宇佐八幡神社で行われる。当社は平安時代源頼義が豊前国(大分県)の宇佐神社を移したもの。14日夜8時頃、標高200メートルの神社から2基の神輿が松明をたよりに下ろされる。神輿は一気に下りず、何度も山道を上り下りするのが見どころ。

 だそうです。神社もググってみましたが、なかなか立派なものでビックリしました。また日を改めて訪れてみたいと思っています。200メートルとなると山登りになるので、それなりの装備も必要ですしね。


 近江神宮はカルタの聖地ですが、真の聖地は会場になる近江勧学館です。ただなんですが、近江勧学館が出来たのは平成9年(1997年)です。一方で名人戦が1955年、クイーン戦が1957年から始まっています。現在の近江勧学館の前身的な施設があった可能性は否定できませんが、遺憾ながら確認できていません。

 もっとも名人戦・クイーン戦だけなら、拝殿に特設会場を作ればなんとかなりそうですが、高校カルタ選手権も1979年に始まっています。そう当時は近江勧学館がなかった可能性が出てきます。高校カルタ選手権となると団体戦ですから特設会場じゃ厳しくなります。

 じゃあどこでになります。あれこれ考えていたのですが、カルタに必要なものは畳です。つまりは畳敷きの大広間。本殿の隣には神楽殿があり、さらにその隣には結婚式場があります。これは境内の案内でそうなっていて正式には社務所なのですが、

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 逆光気味だったので映りが悪いのはご容赦頂くとして、これも1940年の創建当初からの一連の建物として良さそうです。唐破風のある玄関が貴賓玄関で、左側が応接間だそうです。現在の近江神宮の結婚式の披露宴はホテルのようですが、かつては応接間で披露宴を挙げていた時期もあったかもしれません。近江勧学館が1997年に出来るまではこちらがカルタ大会の会場だったのかもしれません。


 寄り道ばかりで申し訳ありませんが、近江勧学館です。

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 セミナー・ハウスみたいですが、主目的はそちらになります。宿泊施設もあり、食堂も、入浴施設もあります。では聖地の心臓部がどこになるかと言えば二階の大広間である浦安の間と豊栄の間。大会の時は襖を取り払って一つの大広間になります。見に行った時もそうなっていました。
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 広さはまず横に畳が縦に五畳敷きです。それで浦安の間が九列、豊栄の間が七列になります。つまり合わせて八十畳の広さになります。この大広間に行くには、二階への階段を上がり、靴を脱いで広い板敷きの廊下を通ることになります。

 上述したように近江勧学館自体はセミナー・ハウスですが、二階の大広間の一角は和風で趣のある作りになっています。ちはやふるでクイーン戦に臨むヒロインが廊下を歩くシーンの撮影は可能です。ついでの話ですが、館内にはちはやふる関連グッズが数多く売られているだけでなく、主要登場人物の等身大の書置きがあったりして、好きな人は楽しめそうです。

 中に入っての見学が自由なので見れたのですが、素直な疑問が出ました。八十畳の大広間は狭くはありませんが、カルタ大会、とくに団体戦を行うには狭くないかです。実際にも高校カルタ選手権では周囲の幾つもの施設も使われます。

 実際の団体戦がどうやって行われているのかが気になって調べてみたのですが、基本は横一列に一つのチームが座り、向かい合って対戦しています。畳の列は16列なので、間隔をあれこれ調べたのですが、どうも一度に試合出来るのは6試合で良さそうです。

 えっと、たったの6試合です。カルタの試合時間は1時間から1時間20分ぐらいだそうです。1時間としても1日で7回転させるのが目いっぱいの気がします。

 さらにがありまして、カルタ大会の基本はトーナメントで、1回戦がすべて終わり勝者が決まらないと2回戦が始まりません。これも高校カルタ大会が始まった頃の8校とか16校時代ならなんとかなったかもしれませんが、今は64校です。つまり優勝するには6回戦まで戦う必要があります。

 これも高校野球の様に何日もかけて行われるのなら、どうにかなりますが、大会は1日で終了します。これも高校カルタだから1日ではなく、他のカルタ大会もそうで、全日本選手権でも2日です。ですから大会運営としてはまず1回戦32試合を一度に済ませる会場が必要になります。

 さらにがあって、1日6試合を行うには、試合と試合の間隔はさほど取れません。たとえば試合後の移動・休憩時間も含めて90分間隔でやっても、午前中が2回戦まで、午後で4回戦をこなせば大会が終了するのは18時を超えます。実際はもっと詰めてやっているはずです。

 こんなものを近江勧学館でこなせるはずもありあせん。勧学館には大広間の他にも27畳の中広間もありますが、これを使ったとしても一度に8試合ぐらいが限界の気がします。十畳の和室では個人戦には使えても、団体戦では無理でしょう。

 どうしているのかと思いましたが、どうもメインの会場は別で良さそうです。県立武道館も会場になっているのですが、そこには柔道場が4面続いてあります。

 この柔道場ですが、テレビでしか見たことがなくて広さが実感しにくかったのですが、正式のものはビックリするぐらい広いものです。柔道場は中央に赤い線で囲まれた試合を行うところがありますが、あれだけで五十畳あります。

 その周囲も場外部分があるのですが、全部含めると畳で16列×16列、つまりは256畳で、これが4面続いて並んでいますから、1024畳になります。さらにがあって、競技カルタを行う時は左右に広さが必要です。カルタは横に薙ぎ払われることが多いですから、壁のすぐそばで試合は出来ないのです。その点で柔道場なら、壁まで余裕があり1024畳をフルに使えます。

 おそらく殆どの試合は武道館で行われている気がします。それは良いのですが、ここでも疑問が出ます。どうやって勧学館と武道場を移動しているかです。たとえば電車を使えば、勧学館から京阪の近江神宮駅前駅まで10分。さらに京阪膳所駅まで10分。さらに京阪膳所駅から歩いて20分ぐらいです。専用バスでも大会の時に出るのでしょうか。
 
 高校カルタ大会でも1回戦を勧学館で戦われている動画ありましたから、使用されているのは確認できましたが、過密な試合スケジュールをどうやって運用しているかは、これまた遺憾ながら確認できませんでした。