シオリの冒険:機内にて

 シベリア鉄道で帰ると頑張るコトリを無理やり飛行機に押し込んでの帰り道。

    「そんなに怒らなくとも」
    「怒るわい」
    「帰り道もお話したかったし」
    「話やったら、日本に帰ったら幾らでもできるわい」
    「そりゃ、そうだけど、せっかくだし」
    「あのなぁ、朝食に痺れ薬仕込んだのはどこの誰やねん」
    「あら、そうだったの。誰でしょうねぇ、イタリアって怖いわね」
    「ユッキーの方がもっと怖いわ」

 やっぱり怒ってるか、

    「こっち向いてよ」
    「やだ、なにされるかわからん」
    「わたしが信用できないの」
    「信用したから、ここにいる羽目になってる」

 こうなったら、

    「あっ、イイ男」
    「なになに」

 コトリの口の中にケーキをドサッ、

    「やりやがったな」

 やっとこっちを向いてくれた。

    「ユダが抱えているイエスだけど、ソロモンかもしれない」
    「最近の人やな」
    「それでね、ソロモンの前はエジプトでラーやってたらしいからラムセス二世もかも」

 コトリが疑わしそうに、

    「だから太陽神ウツってか」
    「あれだけユダが別物として話ながら、妙に詳しいからそうだと見てる」

 今回の騒動で謎だったのはユダが抱えているイエスの反応。これがあったばっかりにフェレンツェのシオリの助けに行ってあげられなかった。まあ、あれだけ強大になってたら結果としては助太刀なんか不要だったけど。

    「でもなんとも言えんで。ウツならアンが復活したら一味になるために蠢動しても理屈は通るけど、ソロモンからイエスまでの千年は長いし」

 そうよね、ユダの話だし、

    「シオリはどうなるんだろ」
    「だんだんに元に戻るやろ。そうなるって書いてあった」
    「そうなんだけど、眠ってるの、起きてるの」
    「起きてるやん。だから麻吹つばさやんか」

 これがコトリと二人で出した今回の事件の結論。シオリに記憶の継承を行った時にやはりイナンナは目覚めたんだろうって。目覚めたけど、イナンナにならずシオリになった。たぶんだけど、ある条件の宿主になったときにそうなる仕掛けがあった気がしてる。

    「アンとの絡みは偶然?」
    「見えてた可能性はゼロとは言えん。ユッキーだって、とんでもなく遠くが見えることがあるやんか。たとえば、ユッキーがエレギオン時代に今を見たみたいに」

 でもこれで目覚めたる主女神時代に戻ったことになるけど、

    「シオリちゃんが暴れたら一蓮托生なるだけの話やろ」
    「一蓮托生と言うより、鎧袖一触かも」
    「なんか不満か」
    「ちっとも」