道はますます陰気になってくのだけど、ようやく三つ目の門が見えてきた。まだ三つ目だけど、冥界の門って、洞窟の広間みたいなところの次の洞窟の入口を塞ぐような作ってあるみたい、洞窟自体、えらい狭かったり、ちょっと広かったり、登ったり下りたりもあるんだけど、門があるところは天井も高くてかなり広い。
狭苦しいところを抜けて来るから、広い分だけホッとする感じもあるけど、空気も臭いもさすがは冥界で胸糞悪いのよねぇ。でも三つ目の門はちょっと雰囲気が違う。門のデザインだって、今まで二つの門は人を脅すというか、どんなセンスでデザインしたか頭を疑いたくなる代物だったけど、ここのは赤と白が基調で瀟洒。ここには門番みたいなのがいなかったから、
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「わたしはエレギオンの三座の女神、ここを通らせよ」
こう怒鳴ってみた。また乱闘騒ぎを覚悟してたのだけど、出てきたのはなんと女。それも冥界だと言うのにかなり華やかな格好してる。
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「これはこれはお美しい女神様。歓迎させて頂きます」
なんだなんだ、この展開は。門内の建物も妙に華やかで、しかも純和風。冥界に来て初めて見たけど、庭もあって花なんか咲いてるのよ。
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「どうぞこちらへ」
冥界に来てから初めて『清潔』って感じの気分になれた。そのまま案内されたのはなんとお風呂。どうしようかと思ったけど、勧められるのを断るのも悪そうだから入ることにした。浴室は広々してて、
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「温泉でございます」
へぇ、冥界にも温泉が湧いてるんだ。つかって見ると気持ちイイ。変質者の冥界の神と戦うには、相手と触れなきゃいけないから、もう百五十人ぐらいに触られてることになるのよね。しっかり洗っとこうっと。そこに裸の女が入ってきて、
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「お手伝いさせて頂きます」
風呂からあがると華やかなデザインの浴衣が用意されてて、そこから大広間みたいなところに案内され、座らされたのはいわゆる上座。なにをするのかと思ったら、
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「歓迎の宴でございます」
広間には結構な数が集まってるのだけど、なんと全部が女。変質者野郎に襲われるより百倍マシとはいえ、これだけ女ばかりってのも、かえって気味悪い気もしてた。理由を聞いてみると、
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「冥界は大変なところで、女はいつも襲われます」
たしかにそんな感じだった。
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「ですから、わたしたちは一致団結して、この第三の門で自らを守っているのです」
だから女ばかりってことか。
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「ここまで来られるのがいかに大変だったかはよくわかります。でもここは冥界でも別世界、ゆっくり御寛ぎ下さい」
別世界なのは見たらわかる。匂いも空気もこれまでの二つの門とは大違い。冥界にもこんなところがあるんだと感心した。冥界の中の楽園とかオアシスって感じはわかるもの。そこから飲めや、歌えの大騒ぎになり、しこたま飲まされた。イイ気分になったところで、
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「御寝所に案内します」
そうなのよ、ここは冥界。こんな夢のような世界がある方がおかしいじゃない。それと女たちの視線も気になった。そりゃ、主客だし、余所者だから、見られるのは仕方がないけど、あれって同性を見てる気がしないのよ。
浴室での丁寧すぎる洗い方も気になるし、浴室への案内、浴室から大広間、さらに寝室に案内される時も、ずっと手を取って離さなかったのよね。
そこまで考えると、イヤな気がしてきた。第一の門、第二の門は変質者野郎の塊だったけど、この第三の門はひょっとしてレズボス地獄じゃないかって。冥界でもアレするどころか、地上界より剥きだし過ぎるのは良くわかったし、その対象にミサキがなってるのもわかってる。男がそうなら、女の変質者だってミサキを狙うんじゃないかって。
それなら先手を打って泡にしちゃった方が戦術的に効果的なんだけど、今のところ推測だけだし、とりあえず歓待されてるし、女にそこまでするのはどうにもって考えていたら、
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『ドドドドッ』
部屋の中に女たちがワンサカ乱入。さらに手慣れたもので、あっと思う間もなくミサキは女たちの下敷きになり身動きできなくなっちゃった。つうか、のしかかられて苦しい、
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「お美しい女神様。これから本当の歓迎をさせて頂きますわ。まずは冥界の掟を守って頂きます」
えっ、冥界の掟って、綺麗な服のこと。それだったらアンタらも着てたじゃないかと思ったけど、女どもは白の寝巻姿。ちょっと待って、ちょっと待ってと言う間もなく、下着まで毟り取られて素っ裸に
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「なにするの、やめてよ」
「さて、お美しい花を拝見させて頂きます」
うわぁ、こいつら間違いなくレズだ。それも集団のガチレズだ。両足に手がかかって、
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『グイッ』
そこは見ちゃダメ。いくら女同士だって見せるもんじゃない。見てイイのはマルコだけ、触っていいのもマルコだけ、愛してイイのもマルコだけ。もう必死なって抵抗したけど、とにかく相手は数いるから、
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「ダメ、見ちゃダメ」
と叫んだところで誰も聞いてくれるはずもなく、惨めな姿をさらす羽目に、
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「なんとお美しい。では、これから満開の花を咲かせましょう」
花を咲かせるって、やっぱり、そうされるの、それだけは許してと叫んだところでこれまた無駄なことで、ミサキに伸びてくる指、指、指、指。素っ裸にされた上にガッチリ抑え込まれてるから、相手はやり放題、
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「イヤァァァ」
どこを触ってるのよ、ダメだって、そんなところを、だからミサキにそんな趣味は無いって。ミサキに出来るのは身悶えと悲鳴だけ、
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「おほほほ、声もお美しいこと」
「やめて、お願い」
こんなもの、女にされたって良くなんだから、男だってマルコ以外はダメって、気持ち悪いだけなんだから、アカン言うてるやんか、やめろって、
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「御遠慮なさらずに御堪能下さい」
「ヤダァァァ」
なんとか逃げようと体をよじろうとしても、ほとんど動かず、されるがまま。そうやってやられ続けているうちに、なにかおかしな感覚が、
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「ほらほら、良いお顔になってきてますよ。今夜はすべて拝見させて頂きます」
そう言えばコトリ副社長もアラッタの女官時代にやられたって聞いたことがある。どんなに頑張っても、どんなに歯を食い縛ったって、どんなに嫌悪感を強くもったって、すべてが突き崩されて、すべてが晒されるだけ晒されるって。このままじゃ、ミサキもそうなっちゃうとか。ヤバイ、体がいう事を聞いてくれなくなって来てる。声が押さえきれない、
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「あっ、あっ」
「イイ声になってきましたわ」
なんてこと、こんな連中相手に、そうなっちゃうって言うの。なんとか抑え込まないと。そうだそうだ、これもコトリ副社長が言ってたけど、あまりに感じまいと思いすぎると、逆に集中して不本意に感じてしまうことがあるって言ってたっけ。こんな連中の慰み者にされてたまるものですか・・・でも抑えきれない。
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「いっ、あっ、うっ、うっ、あぁっ、あぁぁぁ」
「ほら、もう満開です。もうすぐですよ」
このままじゃ、このままじゃ、ミサキは。ダメよ、そうなってはダメ、絶対ダメ。なにがあってもダメ。ダメと思っても、体が・・・もう限界、耐えられない。気を逸らしたくても、他の事を考えられない、来ちゃう、来ちゃう、ああどうしたら、
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「さぁ、盛大にお見せ下さい」
なにが『盛大』よ、どうしてミサキがそんな目に遭わなきゃいけないの。その時にミサキの怒りに火が着いてくれた。相手が女だから、神の力を使うのは遠慮してたけど、これだって立派なレイプじゃない。それに女だけどしょせんは冥界の神、ミサキの敵よ。こんな奴らのオモチャされてなるものかって、
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「お前ら、地獄に落ちやがれ」
完全にミサキは怒ってた。プルプル震えるぐらい怒ってた。ここは誤解したいでね、プルプルしてたのは怒りだからね。我慢しすぎてプルプルしてた分もあるのは否定しないけど。そしたら部屋の中だけでなく、この屋敷中の女が泡となった。思い知ったか、
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「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
あのねぇ、ミサキの体はマルコだけのもの、ミサキが果てるのはマルコの時だけ、その姿を見てもイイのはマルコだけ、その姿を喜んでイイのもマルコだけなの。それをここまで追い詰めやがって、この火照り切った体をどうしてくれるのよ。なんとかしたいけど、女の誇りにかけて自然鎮火させなきゃ。こっちはこっちで辛すぎる作業だけど。
やはりここは冥界、まともな奴などいやしない、男も女も例外なく変質者で、どいつもこいつもミサキの体を狙ってやがる。もう油断なんかしない、誰が出て来ても皆殺しにしてやる。女だって容赦はしない。この三座の女神の怒りをタップリと冥界の連中に教え込んでやる。ところでお風呂はどこだっけ。こんなんじゃ冥界の旅を続けれないじゃない。