今日は花金。秘書グループとの親睦会です。総務では全体の親睦会も行いますが、担当グループごとの親睦会も行われます。ミサキもそのすべてに顔を出していたらキリがなくなるので、全部出ている訳じゃありませんが、メグちゃんの様子が気になったので出席させてもらいました。
部長や課長まで出席しての親睦会で部員の本音が聞ける訳ではありませんが、会社とは違った顔が見れることがあり、それなりに収穫があるものです。とりあえず今日の注目はメグちゃんです。会社で見る雰囲気が相当変わっているのは実感していますが、こういう親睦会ではどうなっているかです。
メグちゃんの入社当時のイメージが、そうですねぇ、ちょっと可愛い系ぐらいでしょうか。それも媚びた感じがないのを気に入った感じです。総務に配属になってからも飛び抜けて出来る訳じゃありませんが、確実に仕事を見に付けているぐらいの評価になります。ただ秘書にするには、かなりの不安がありました。
秘書業務はコトリ専務の時から重役をリードする能力が求められます。ヒラが重役をリードするのですから、よほどの機転と愛想も必要です。言い方は悪いですが、手玉に取るぐらいの手腕が求められるところです。時には重役から業務上の相談を受けたりもあり、その時に秘書の役目を守りながらの対応も求められます。
それでも秘書担当になってもらったのは、本人の希望もありましたが秘書不足の非常事態のためです。コトリ専務のところに行ってもらったのですが、果たして耐えられるかに不安があったのは白状しておきます。最初にヒイヒイ言ってた頃もいつ『やめる』と言い出さないかハラハラしてましたし、コトリ専務の奇行が始まった時はなおさらでした。
さて、今日のメグちゃんは実に落ち着いています。まだ二年目なので末席に静かにしていますが、黙って座っているだけで存在感を感じてしまいます。時々声をかけられて、話もしますが、その態度に余裕を感じてなりません。ミサキも少し話してみましたが、春先にコトリ専務の下で秘書見習いを始めた時とは別人のようです。それでいて、驕るような態度は毛ほども見せません。懇親会が終わると定番の、
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「ウルサイ上司は帰るから、後は楽しんでね」
とくにアテがあった訳ではありませんが、三宮からハーバーランド方面に少し歩いて、地下鉄で帰るかタクシーでも拾おうとの算段です。歩きだしてしばらくすると妙な感じがします。どうにも尾行されてる感じがするのです。ミサキも実年齢はともかく若く見えますから、変質者にでも目を付けられたのかもしれません。
まっすぐ三宮から電車に乗れば良かったと後悔しながら、トットと逃げてしまおうとタクシーを探しますが、こんな時に限って見当たりません。ただこのまま歩いて行くと人通りはドンドン減っていきます。オリエンタル・ホテルあたりまで歩いてタクシーに乗るか、引き返すか迷った瞬間に後ろから羽交い絞めにされました。
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「ちょっと付き合ってもらうぞ、癒しの女神よ」
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「誰なの」
「死にたくなかったら、黙って従え」
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「連れてきましたぜ」
「ご苦労だった」
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「誰なの、わたしになんの用」
「前に会ったことがあるが覚えてないのかな」
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「あの傷は深かった。ここまで戻るのだけでも十二年かかった。それでもまだまだ完全には程遠い。完全復活するには女神の体が必要なんだよ。今の力では次座どころか四座の女神にも歯が立たない。いずれ餌食にするつもりだが、そのためにもまず癒しの女神が必要だ。悪いが私の糧になってもらう」
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「ま、まさかアングマールの魔王・・・」
「察しが良いな。舞子では油断だった。まさか二発目の一撃を次座の女神が放つとは予想もしてなかった」
「死んだのでは・・・」
「まさに瀕死だった。ひたすら傷口を癒し続ける日々だった。次座の女神には二度も瀕死の重傷を負わされたから、この借りを早く返さないといけない」
「何をする気」
「女神の力をわが身に取り込んでパワーアップするのだよ。君の力を取り込めば、次は四座の女神、最後は次座の女神だ」
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「女神を相手にするのは何千年ぶりだろう。あの頃は女神狩りでパワーアップを存分に出来て楽しい時代だったよ。とくに君のような戦う力が無い女神は御馳走だった。今夜は楽しみだ」
「一緒にいるのはミニチュア神」
「よく知ってるね。必要だから、ちょっと無理して作った。もっとも、そんな分ぐらい君であり余るほどお釣りが来る」
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「女神を殺すのね」
「結果的にそうなるが、普通に殺すのではない。絞り尽くしてありがたく頂くのだ。せいぜい頑張ってくれ給え」
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「頑張るって、なにを」
「はははは、君は次座の女神から教えてもらわなかったのかね。それとも忘れたとか。これも楽しみの一つだから教えといてやろう。今から君を抱く。抱かれた君がエクスタシーに達するたびに、君の力を搾り取れるのだよ。それもエクスタシーが大きいほど盛大に吸い取れるんだ」
「そんな・・・」
「君が頑張り続けてエクスタシーにさえ達しなければ吸い取ることは出来ないのだよ」
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「そんなことはさせない」
「みんなそういうから楽しいのだ。レイプされるだけでなく、エクスタシーでよがり狂うなんて想像も出来ないだろう。でもそうなるのだ、君の力をすべて吸い取るまでに数えきれないぐらいのエクスタシーを感じてもらうことになる。途中から旦那の事なんて頭から消えてなくなるぐらいにな」
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「戦う女神の場合は、抱ける程度に半殺しにしないとならないし、半殺しにしてしまうと吸い取れるパワーも減ってしまう。そのうえで、体が無抵抗に近くなって犯す面白味が減ってしまうのだ。やはり一番美味しいのは、神としては戦えず、ただ必死になって神の能力でエクスタシーに達しまいと頑張る姿だよ」
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「限界を越えて頑張り続けて、最後に自分の体の裏切りを恨みながらエクスタシーに達した瞬間の反応は最高だよ。君がどんな反応を見せるかと思うと今からワクワクする」
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「・・・」
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「やはり君もそうするね。ホテルに行くまで声は封じさせてもらった」
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「そうそう、楽しいプレイは二人がかりでやらせてもらう。君も人の力で精いっぱい暴れたまえ。その時には声も存分に出させてあげよう。どんな声で泣くのか楽しみだ。もっとも犯すのはほぼ私で、こいつにはおこぼれを少し上げる程度だが」
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「立ち話はこれぐらいで十分だろう。そろそろお楽しみに行くとしよう。君の人生最後のエクスタシーが今から絞り尽くされるのだ。まあ、それは私がパワーを吸い取らせてもらう、ささやかなお礼と思ってくれたまえ」
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「そうそう、ついでだから君の人の生命力も御馳走になる。完全に分けて吸い取るのは無理だからな。せいぜい頑張るのを期待している。君が出来るのはそれだけだ」
と、考えたところで後の祭り。今のミサキは蛛の巣にとらえられた蝶以下です。渾身の力を込めてすれ違う人に助けを求めようとしましたが、無駄です。一歩、一歩が絶望に続く道だというのに足取りは軽快どころか弾むようなものになっています。これでは、たとえクレイエールの社員と出会っても、ミサキが不倫しているようにしか見えません。
魔王が目指しているのは北野のホテル街で良さそうです。別に歩いて行かなくても、タクシーなりクルマを使えば良さそうなものです。これをわざわざ歩かせているというのは、ミサキにより屈辱と絶望を味あわせる以外に考えられません。これがクソエロ魔王のエゲツナイやり方なんだと思い知らされます。
魔王が選んだのは選りもよって北野坂。まるで見せびらかすように歩かされます。ミサキのピンチを救えるのは魔王が見えて戦うことが出来るコトリ専務か、ユッキーさん以外にいませんが、コトリ専務は上の空状態、ユッキーさんは山本先生の中です。つまり可能性はゼロに近いってことです。でも、誰か助けて、このままじゃミサキは・・・