偽カエサルとの戦いがあった年に妊娠し娘が生まれました。そのまま産休から育休に入ったのですが、育休から復帰してすぐに二人目を妊娠して産休・育休、次は息子が生まれて二人の子持ちになって職場復帰です。マルコなんて喜んじゃって大変なのですが、そんなマルコの料理に進歩がありました。作らせれば芸術的なトンデモ料理になるのは相変わらずですが、やっと、やっと、やっとなんです。結婚してから、いや、あのマルコの独身時代を含めればいつからかわからないぐらい前からですが、
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「ミサ〜キ、どうもボクの作る料理は不味いこともあるらしい」
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「ボクとミサキの可愛い娘のサラと愛する息子のケイに、不味い御飯を食べさしたら大変だから、ミサ〜キには悪いが、料理の手伝いはやめようと思う。イイかなぁ」
ちょっと心配していたのは、子どもが出来てミサキへの態度が変わらないかでした。どうしたって育児中は女と言うより母親になってしまうからです。一番ドキドキしたのはミサキも自慢だったロング・ヘアーをショート・カットに変えた時です。ミサキのロング・ヘアーはマルコも大のお気に入りで、ミサキのロング・ヘアーを褒め称えるマルコの賛辞の嵐は耳タコ状態だったからです。
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「おお、なんてこった。髪を切ってしまったんだ!」
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「ボクは今の今まで、ミサキのショート・カットの美しさ、素晴らしさを知らずに生きて来たんだ。これは人生の損失だ、大後悔だ、取り戻せない時間だ」
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「ミサキちゃんところが羨ましい。ミツルが三人になるのは嬉しいけど、やっぱり女の子も欲しいよね。三人目、頑張ろうかしら」
職場復帰して、久しぶりに歴女の会に顔を出してみました。コトリ部長から、
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「たまには顔出してね」
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「ミサ〜キ、仕事の付き合いも大事だよ。サラとケイはボクが見るから、たまには息抜きしといで」
店に入った瞬間に照明が消え、スポットライトで照らし出されました。そこにクラッカーの嵐と歴女の会のメンバーだけでなく、マルコやサラとケイ、マルコの工房の弟子たち、天使ブランドの工房の職人さんたちも加わって大合唱で、
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「お誕生日、おめでとうございま〜す」
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『香坂課長代理のアラサーを祝う会』
さて会社の方は大事件が起こりました。いやいや、事件と言っても魔王や偽カエサルが出てくるようなものではなく、河原崎社長が退任されたのです。これもコトリ部長に聞いてみると、
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「本来はもうちょっと早くする予定だったみたいなの・・・」
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「私が居たのでは綾瀬君がやりにくい」
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「ミサキちゃん、専務なんて呼んだらドッカン食らわすよ」
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「シノブとの差は、どうやっても縮まないだよね・・・」
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「ミサキちゃん、常務なんて呼んだら一撃ぶっ放すわよ」
そうそう、コトリ専務はついに総務部長を退任されました。後任が必要になるのですが、驚いたことにミサキが部長になってました。それだけでなくジュエリー事業の副本部長兼任した上で、執行役員にもなっています。そうなんです、ミサキも重役席の端っこに着いちゃったのです。ビックリした、ビックリした。
綾瀬体制で重視されるのは誰が見ても高野副社長と佐竹本部長、それに三女神の五人です。コトリ専務とシノブ常務はまだわかりますが、ミサキも入っているのは本当に意外でした。それでもって、この五人が綾瀬副社長から呼ばれました。呼ばれたのは料亭なんですが、とにかく物凄い門構えのお店で、見ただけで気後れしそうになったのは白状しておきます。コトリ専務は、
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「この店はね、前社長の頃から重役連中の密談場所なの」
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「香坂副本部長ですね。これからも御贔屓によろしくお願いします。それにしても、皆さま本当に若くてお美しくて羨ましい限りです」
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「おう、三天使がいらっしゃったか」
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「このたびはお招きいただき・・・」
「香坂君も早く席につきたまえ。腹減ってしまって、挨拶の時間ももったいないわ。それと今日は顔合わせ会みたいなものだから、気楽にやってくれ」
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「私が初めてこの料亭に呼ばれた時はヒラだったのよ。それも、前社長と、綾瀬社長と、高野副社長と四人だけで、そりゃ、ギッチリ尋問会で大変だったの。その時の綾瀬社長の怖いこと、怖いこと。食事の味なんかしなかったもの」
「結崎君、まるで私がイジメたみたいじゃないか」
「小娘をおっさんが三人がかりですから、あれは間違いなくイジメです」
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「社長、小島専務や結崎常務の就任はわかるのですが、わたしは意外すぎる気がします。お二人に較べると実績も無いですし」
「ぶははは、天使は自覚がないのは知っておるが、香坂君もそうなのは良くわかる。産休・育休が入ってしまったが、対ラ・ボーテ戦からあの株主総会まで香坂君が残した業績はまさに巨大だ。あの時に小島君と香坂君が鉄人コンビで支えてくれたから今のクレイエールはあると言っても過言ではない」
「小島専務の後ろに付いて行ってただけですが・・・」
「あの時の小島専務に全部付いていけただけで驚嘆すべきことなのだ。それだけでない『癒しの天使』の効果は社内の誰もが認めておる。前社長も香坂君の処遇が中途半端になっていたのを悔やんでおられた。君は十分すぎる実績を認められての昇進だよ」
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「さて新体制だが、私も含めてこの六人が会社のエンジンになる。不肖綾瀬ではあるが、どうか支えてもらいたい」
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「あ、それ。見方やねんけど、シノブちゃんも、ミサキちゃんも、社内ではコトリ派って感じになってるの」
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「社長が取り込みたいのはコトリ派だから、シノブちゃんは言うまでもないけど、ミサキちゃんも抱き合わせにしておくぐらいの判断でイイと思うよ」
「では、ミサキはオマケみたいなもの」
「違うよ。社長の目は節穴じゃないよ。社長は本当に仕事が出来る人間を選んでるんだ。社長の目にも三女神は別格ってちゃんと見えてるってこと。オマケというより青田買いにやや近いかな。とにかく期待されてるんだから、頑張ればイイってこと。総務部は任せたわよ」