朝になってようやく警察の事情聴取から解放されましたが、救出された四人と山本先生は入院となっています。とくに山本先生は重傷で、幸いにして急所は外れて致命傷にはならなかったものの、ICUで懸命の治療を受けておられます。小島本部長も違った意味での重傷で、見つかった時には意識不明であっただけではなく、従わせるためにヘロインを打たれ始めていたとのお話です。まだ中毒症状に至っていないとの説明でしたが、しばらくは経過観察が必要と聞いています。残りの三人ですが、これまた意識不明の状態です。自分が考えた計画ですが、あまりの被害の大きさに自己嫌悪に陥っています。
見舞いに駆けつけて来られた加納さんには何度も頭を下げましたが、加納さんは気丈に、
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「だいじょうぶよ、カズ君は死なない。死なせるものですか」
謎の集団による荒々しい拉致誘拐、それを阻止しようとした人間が撃たれ、埠頭を離れた船が突然の謎の爆発。これで飛びつかなければウソでしょう。唯一の現場証言者であるボクのところにも取材申し込みが殺到と言うより、クレイエールの玄関に百人以上も待ち構えています。ボクも昨夜からの騒動で疲れ果てていたのですが、綾瀬副社長から、
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「佐竹君。君も入院したまえ。そうでもしないと、本社が仕事にならん」
ボクは一週間で退院となりました。退院した途端にマスコミの記者会見に引っ張り出されて大変な目に遭いましたが、それがなんとか終わったのでようやくシノブたちの見舞いに行けます。
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「シノブ、ゴメン。こんな目に遭わせてしまって」
「いいのよ、ミツル。助かったんだから。ところで他の人たちは」
「香坂君やマルコ氏はだいぶ元気になってる。ただ・・・」
「だた、どうしたの」
「小島本部長はかなり大変な目に遭ってしまって、しばらく入院が必要みたいなんだ」
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「コトリ先輩ならだいじょうぶ。必ず復活するわよ」
「それとだけど・・・」
「まだ何かあるの」
「山本先生が・・・」
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「で、どうなってるの。万が一なんてことはないのでしょうね」
「うん、ずっと加納さんが付いてる。お見舞いに行こうかと思ったけど、怖くて近寄れなかった。容体はまだまだ予断を許さない状態みたいだ」
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「山本先生はコトリ先輩が今でも好きなのよ。前に魔王戦でコトリ先輩が意識不明になった時にお見舞いに来られて、三時間ぐらいずっと手を取って泣いておられたわ」
「そんなに・・・」
「最終的に選んだのは加納さんだけど、コトリ先輩を捨てる結果になったのにずっと負い目があったみたい。だから命を懸けて飛び出していかれたのだと思う」
「ひょっとして死ぬ気だったとか」
「そこまでは無いと思うけど、たとえ死んでも後悔しないぐらいのつもりで出て行かれたのだと思うよ」
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「たぶん偽カエサルで良いと思う」
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「偽カエサルは船にいた?」
「たぶんいなかったと思う。あの現場のボスというか、リーダーみたいなのは偽カエサルでないのは間違いないよ」
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「そうなると偽カエサルは逮捕されていないことになる」
「日本にまだいるのかなぁ、たぶん前もって出国している気がするけど」