情報調査部というか歴女の会の山村さんと鈴木さんが相次いで御結婚されました。ちなみに山村さんが微笑む天使で、鈴木さんは雅の天使のブライダル・プランでした。ミサキも歴女の会つながりで呼んで頂いたのですが、とっても素敵でした。来賓は直接の上司になるシノブ部長と、総務課時代から付き合いの深いコトリ部長で、それぞれに祝辞を述べられました。披露宴と二次会が終わった後に三人でいつものバーに。結婚式の感想をあれこれ話していたのですが、コトリ部長は、
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「サキちゃんも、ミドリちゃんも、シノブちゃんも、ミサキちゃんも結婚できたのに悔しい。考えてみればアラフォー・パーティしてもらってから、あのクソエロ魔王に邪魔されて男を探す時間がロクロク取れなかったのよね。もう四十三歳になっちゃうよ」
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『いつの時代でも好きになれる男がいたのも覚えてるから安心して』
そうなると二千年前にコトリ部長が魅かれまくったというカエサル・クラスになります。そりゃ、カエサルならコトリ部長との釣り合いは申し分ありませんが、カエサルほどの人物はそれこそ千年に一人出るか出ないかになってしまう気がします。そんなことを漠然と考えていたのですが、その時に
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「カランカラン」
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「私は日本語が得意じゃないので」
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「では・・・」
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「記憶のうち、無意識の体験部分は使えるようになってるから。その方が便利でしょ」
ラテン語は学術用語に今も使われていますし、書き言葉として教養として学ぶ人も欧米では少なくありませんが、話し言葉としては使われなくなってどれぐらい経っているかわからないぐらいです。そんなラテン語をこれだけ流暢に使うこの男は誰なんだろうです。さらにコトリ部長が、その男ならラテン語で話すのが適していると判断した理由はなんだろうです。
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「君がいたとはな」
「あなたの部下だったの」
「そうなる。この程度の仕事なら余裕と見ていたのだが」
「まだいるの」
「いや、最後の一人だった」
「いえ、最後の一人はあなたでしょう」
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「知っての通り、我々の一族はもうほとんど残っていない。また増えることもない。君には悪かったと思うが、あの程度でも使わざるを得なかった」
「じゃあ、あの時も」
「いや、その後だ」
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「それにしても三人に会えるとは驚いている。道理でああなる訳だ」
「なんとお呼びすれば良いかしら、私はコトリと呼んで頂けると嬉しいですが」
「なんとでも、君の好きなように」
「ではガイウスとお呼びさせて頂きます」
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「ガイウス、あなたは違ったわ。知るまで信じられなかったぐらい。そういうタイプがいること自体が信じられなかった」
「それは、どうもありがとう。そう言えば、あの時も君が来ると思ってた」
「コトリでは不満でしたか」
「いや、未だに君以上の相手を見つけていない」
「うふふふ、何人の女に同じセリフを使われたのかしら」
「君にはかなわんな」
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「君が信じないのはわかるが、君に満足したのは信じて欲しいな」
「ええ、その言葉、お褒めの言葉と受け取らせて頂きますわ」
「それはありがたい」
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「ところで無粋なお話に来られましたか」
「そうでもない。基本的に手を引く。君とこれ以上争うには、この私がかかりきりになる必要がある。それをやるほどヒマでも重要な仕事でもない」
「欲しかったのはやはりエレギオンの金銀細工師ですね」
「ま、そういうことだ。パトローネスの意向だったからな」
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「それにしても、ガイウスともあろうお方が、こんなチャチな仕事に手を染められるとは意外でしたわ」
「それをいうなら君がこんなショボい会社で働いている方が驚きだ」
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「まあ、身過ぎ世過ぎだ。今回の仕事はショボかったが、面白い仕事もあるんだよ」
「でしょうね。そうじゃなければ、あなたが働いているはずがないですもの。ところで、今日の目的は勧誘?」
「君はなんでもお見通しだね。今度は一緒に来ないか。君と私が組めば最高のコンビになる。あの時に君を連れて行かなかったのを今でも後悔している」
「あははは、コトリじゃなくとも、たくさんおられるではないですか」
「そうだ数だけならいる。でも本当に必要なのは一人だ。今回の件は後から知った。まさかと思った。本当だとわかった時には狂喜した。あの時の続きをするには君が必要だ」
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「回りくどくなられましたね」
「あははは、そうかもしれない。では返事は」
「後日でお願いします」
「君も回りくどくなってるぞ」
「お互い様ということで」
コトリ部長の表情は何かを思い出しているようです。それも苦い思い出ではなく、楽しい思い出に感じてなりません。例の魔王の悪口を言う時とは全然違います。コトリ部長はあのガイウスと呼ばれる男に魅かれているのでしょうか。聞きたいこと、確認したいことがあるのですが、コトリ部長の雰囲気に気おされて口に出しにくい感じです。シノブ部長を見てもそんな感じです。沈黙を破ったのはコトリ部長で、
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「マスター、御勘定」
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「マスター、コトリも願掛けカクテル作りたいな」
「チェリー・ブロッサムですか?」
「あれも悪くないけど他のにしたい」
「なんにいたしましょう」
「そうね、コトリの今の気持ちにしたいからセブンス・ヘブンでよろしく」
「かしこまりました」