昼が過ぎ枢機卿の随員からパンを頂きましたが、まだコトリ部長は教会から出てきません。遅れてくるはずのシノブ部長も来ません。じりじりする時間だけが過ぎていきますが、待つしかありません。そこに一台のタクシーが。下りて来たのはシノブ部長です。とにかく寂しかったので飛びついちゃいました。
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「コトリ先輩、まだ」
「はい、まだです」
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「イティ・イネキュス・セビーラス」
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「サム・エキス・ペレレクタス。エト・ルチア・アンジェルス」
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「エチェ・エアム」
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「ま、まさか、そんなことが・・・」
「まさかは起ったのだ。私が気づいていないとでも思っていたのか」
「う・・・」
「マンチーニよ、私は神戸のルチア・ベレ・エクレシアで秘本を読んだのだ」
「あれは天使と言えども読めないはず」
「逆だマンチーニ、天使であるから読めたのだ。天使にとってあの程度の封印は無きに等しい」
「そんなバカな、天使と言えどもあの封印を破るには」
「まだわからぬかマンチーニ、聖ルチアにも会っているのだ」
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「愚かだったなマンチーニ。聖ルチアに会い、第一の天使にも会っている私に秘儀をわざわざ施そうとするとは。お前の秘密はすべて知った。これからヴェチカンに行きたいか」
「それだけはお許しを」
「ではエレギオンを解放せよ。あれは聖ルチアのためのものだ。既にお前の邪法は通じぬ」
「わかった」
「マンチーニよ誰に向かって口を利いておるのだ」
「かしこまりました。仰せに従います」
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「取ってまいれ」
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「乗せてもらうぞ」
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「ホテルに帰ってくれる」
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「そちの名は」
「ジョバンニと申します、天使様」
「ではジョバンニよ、あそこで見たり聞いたりしたことを人に語ってはならぬ。語らねばそちに幸せが訪れるであろう。もし語れば、その報いを必ず受ける」
「決して語りません。天使様の言葉は絶対にございます」
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「なんとか終わったよシノブちゃん」
「コトリ先輩、格好イイ」
「だ か ら、この服嫌いなのよ。とにかくカビ臭いし」
「ホントだ。ファブリーズしましょ」
「クリーニングできそうにないものね」
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「なにが起こったのですか?」
「やっぱり、ああなったかってところかな」
「コトリ部長は全部知っておられたのですか」
「そうじゃないよ、たぶんそのはずの賭けの部分が相当あったんだ。最後はどっちに転ぶかわからなかったよ」
「かなり危険だったのですか」
「危険ねぇ・・・これも『たぶん』だけど、コトリ先輩が素直に最後の秘儀を受けていたら、おそらく今まで通り。ああなってしまったから、こっちの方がある意味危険かな」
「どういうことですか」
「そりゃ、ああなったコトリ先輩がどうなるかが、わからないから」
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「とにかく扉を開いてしまったのだから、そこから先のことはコトリ先輩から聞かないと私もわからないのよ」
「扉って」
「天使の記憶の封印よ。コトリ先輩の気力が残っていたら、今夜にでも聞けるよ。私も知らないことが多いの」
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「今日はさすがに疲れた。悪いけど寝る」
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「シノブ部長、どうなっているのか少しは教えてください」
「見たままよ、ルチアの天使は目覚めたの」
「シノブ部長が第一の天使ってどういうことですか」
「聞いたままよ、でも詳しいことはコトリ先輩から聞いた方がイイよ。私も楽しみにしている」
「ではエレギオンの解放って、どういう意味ですか」
「それはね、会社の方のお仕事になってくるわ」