医療閑話・鶏肉と食中毒

5/19付yomiDr「イベントで起こった食中毒…鶏肉とカンピロバクター」より、

 まず最初に、今回の事例に関するニュースをご紹介しましょう。日本中の肉料理を堪能できる大きなイベントが、ゴールデンウィークに開催されました。東京都で開催されたイベントでは49人が、福岡での同じイベントからは108人が、食中毒の症状を起こしたということが報道されました。

 これらのニュースのもとになった、行政からの報道発表資料はこちらです。発症した人に共通していた料理は「鶏肉の握りずし」で、一部の人たちの便からカンピロバクター菌が検出されています。

鶏肉の握りずしか・・・私は牛であっても生肉は好みませんから鶏肉はなおさらってところです。それは個人の嗜好の問題ですが、どれぐらい鶏肉に食中毒菌が含まれているかの調査があります。厚労省の公式定期調査でその名も

    食中毒菌汚染実態調査
もちろん鶏肉だけをしらべているのではなく食中毒菌汚染実態調査実施要項より

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これだけ調べているのですが、

    生食用の鶏肉等(鶏刺中心部まで十分加熱されない鶏たたき、馬刺等)
生食用の鶏肉も含まれているのが確認できます。でもって検出結果(平成27年度食品の食中毒菌汚染実態調査の結果について)です。

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ちょっと見にくいと思いますから、鶏肉の項目だけ抜き出してみます。

検体 検査結果(陽性率(%))
E.coli サルモネラ カンピロバクター
H.25 H.26 H.27 H.25 H.26 H.27 H.25 H.26 H.27
ミンチ肉(鶏) 47.4 66.7 - 48.4 54.5 62.9 62.5 0.0 20.0
鶏たたき 80.0 77.4 62.5 0.0 3.1 0.0 10.3 17.1 15.6
検体数は

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これぐらいなので時にブレが大きくなりますが、鶏肉を「たたき」として炙った消毒効果はサルモネラでは減少が見られますが、E.coli、カンピロバクターについては殆ど見られないぐらいとして良いかと思います。消毒効果の見られるサルモネラでもゼロにはなっていません。「そんなもんゼロになるもんか?」の回答として、

検体 検査結果(陽性率(%))
E.coli サルモネラ カンピロバクター
H.25 H.26 H.27 H.25 H.26 H.27 H.25 H.26 H.27
馬刺し 14.5 17.5 17.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
ローストビーフ 0.0 25.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
ローストビーフと比べるのはともかく、馬刺しと鶏たたきでは食中毒菌の存在率が「段違い」であるのがわかります。ましてや今回は鶏の生肉です。YomiDrではイベント会場が普段とは違う点を注意事項としてあげていますが、それ以前の鶏の生食問題の気が私にはします。まあ、南九州(鹿児島だったっけ)では鶏のたたきが郷土料理として定着しているようなので、これだけのデータで全面禁止の主張はしませんが、食べられる人はそれだけのリスクがあることを肝に銘じて食べられることをお勧めします。