延喜式の太平洋航路・補充計算編

昨日の遠江の仮定で概算してみます。まず延喜式ですが、

參河國,【卅三束。】海路米一石,充賃稻十六束二把

三河から京へのルートは

  1. 三河 → 伊勢:海路
  2. 伊勢 → 京:陸路
想定は税金荷物50石としますが、陸路部分は4日ですから400束です。50石の功賃は810束ですから、
  1. 海路:410束
  2. 陸路:400束
こういう按配になります。延喜式の船賃の構成は、
  • 荷物石あたりの功賃
  • 船員代(挾杪1人、水手4人で1艘)
船員代は挾杪と水手で変わりますが、試算の都合上合わせて5人で考える事にします。さて功賃は
    810束 = 810斗(容量)= 81石(容量)
税金分に持つと合わせると131石になります。遠江方式の功賃仮説は、
  1. 荷物にかかる功賃は税金分50石のみ
  2. 船員の功賃は、功賃分の荷物を含めた船員分
2艘になれば船員代が2倍、3艘なら3倍かかる事になります。試算結果は、
荷物単価
(束/石)
荷物代
(束)
船員代
(束)
船員代/荷物代
1艘 2艘 3艘
1.0 50 360 7.20 3.60 2.40
1.1 55 355 6.45 3.55 2.15
1.2 60 350 5.83 3.18 1.94
1.3 65 345 5.31 2.88 1.77
1.4 70 340 4.86 2.62 1.62
1.5 75 335 4.47 2.39 1.49
試算の方法は他航路と比較するために1艘に船員5人になるように計算しています。2艘になった時は2艘目の船員代は除外し、3艘目になった時は2艘目と3艘目の船員代を除外しています。他の延喜式の船員代/荷物代は計算できる範囲で北陸航路で2.5〜4.0束ぐらい、瀬戸内航路で1.0〜2.0束ぐらいになります。仮に船員代/荷物代を2.0前後とすると、3艘で石あたりの単価が1.1〜1.3束ぐらいでしょうか。 この方式で遠江をやると、
荷物単価
(束/石)
荷物代
(束)
船員代
(束)
船員代/荷物代
1艘 2艘 3艘
1.0 50 700 14.00 7.00 4.67
1.1 55 695 12.64 6.95 4.21
1.2 60 690 11.50 6.27 3.83
1.3 65 685 10.54 5.71 3.51
1.4 70 680 9.71 5.23 3.24
1.5 75 675 9.00 4.82 3.00
1.6 80 670 8.38 4.47 2.79
1.7 85 665 7.82 4.16 2.61
1.8 90 660 7.33 3.88 2.44
1.9 95 655 6.89 3.64 2.30
2.0 100 650 6.50 3.42 2.17
2.1 105 645 6.14 3.23 2.05
2.2 110 640 5.82 3.05 1.94
2.3 115 635 5.52 2.89 1.84
2.4 120 630 5.25 2.74 1.75
2.5 125 625 5.00 2.60 1.67
遠江航路の石単位の単価はやはり3艘で2.1〜2.2束ぐらいになりそうです。三河の2倍弱ぐらいってところです。 三河の石単価が1.2束、遠江が2.2束なら、駿河は3.0〜3.5足は必要になります。駿河を推測すると、
石単価 荷物代 陸路代 4艘 石別功賃 駄別功賃
3.0 150 400 1200 24.0 36.0
3.1 155 400 1240 24.8 37.2
3.2 160 400 1280 25.6 38.4
3.3 165 400 1320 26.4 39.6
石単価 荷物代 陸路代 5艘 石別功賃 駄別功賃
3.4 170 400 1360 27.2 40.8
3.5 175 400 1400 28.0 42.0
3.6 180 400 1440 28.8 43.2
3.7 185 400 1480 29.6 44.4
3.8 190 400 1520 30.4 45.6
3.9 195 400 1560 31.2 46.8
4.0 200 400 1600 32.0 48.0
陸路が駄別54束ですから、石単価が3.0束程度ならペイしそうです。一方で3.4束ぐらいになると5艘体制が必要になり陸路コストに接近します。遠江三河も陸路の半額ぐらいのコスト設定でしたから、3.0束程度にしないと駿河としては海路を積極的には選びたくなさそうな気がします。それと遠江が2.1〜2.2束ですから駿河が3.0束はかなりディスカウントになると思います。遠江の2倍ぐらい請求しても多すぎると思えませんから、駿河延喜式に掲載される海路は持たなかったと考えられます。