また大阪市長選挙があるそうで・・・

橋下氏と選挙

調べられる範囲で橋下氏及び彼が率いる維新の選挙歴を調べてみます。

年月 選挙名 選挙結果
2008.1 大阪府知事選挙 80万票以上の差で圧勝
2011.4 府議会・市議会選挙 府議会で過半数、市議会で第1党
2011.11 大阪市長・府知事選挙 現職候補に20万票以上の差で圧勝。府知事も盟友松井氏が勝利
2012.12 衆議院選挙 54議席で院内第3党に
2013.4 伊丹・宝塚市長選 兵庫県知事選・神戸市長選の前哨戦とされたが維新敗北
2013.6 東京都議会選挙 2議席と惨敗
2013.7 参議院選 9議席と伸びず院内第6党に
2013.9 堺市長 大阪都構想堺市が入るかどうかで争われたが維新敗北


他にもあるかもしれませんが、私が印象に残っている範囲の選挙結果です。こうやって橋下氏の選挙結果を書き出したのは、橋下氏がよく口にされる「私は選挙で選ばれた」があるためです。この言葉が非常に効果的だったのは、現職候補を蹴散らして大阪市長選に勝った頃までだった気がします。府知事選挙、府議会選挙、市長選挙、市議会選挙と目覚ましい勝利を重ねられていたからです。前にも書きましたが、橋下氏はここで市政に専念され、課題の大阪都構想に腰を据えて取り組まれるべきじゃなかったかと思っています。しかしそうされませんでした。

たしかに都構想は中央から白眼視されている部分がありましたから、国政の場に発言権を得る事の必要性を重視されたのかもしれません。またそれだけの追い風が橋下氏及び維新に吹いている観測は当時はありました。総選挙もある時点の状況分析では100議席を超えるんじゃないかの予測も飛んでいたぐらいです。政治にも賭けるべき「天の時」がありますから、今がその時との判断だったのかもしれません。ところが風向きは変わってきます。総選挙ではそれなりの議席を獲得したとは言うものの、自民圧勝劇の中では維新は勝利したとは言えない結果です。どうもこのあたりが追い風の分水嶺だった気がします。

以後の選挙結果は見ての通りで、2013年に4つのポイントになりそうな選挙を戦っていますが、いずれも敗北として良いでしょう。とくに伊丹・宝塚市長選は、隣県兵庫進出の橋頭保になるはずでしたが、ここで敗北したために結局兵庫県知事選も、神戸市長選も参戦できなかっただけでなく、お膝元の堺で火が付き、なおかつ敗北しています。橋下氏のフレーズをもじると「選挙で認められていない」ぐらいでしょうか。


着眼点は正直なところ評価しています。大阪府は面積的に小さな府ですから、そこにある巨大都市大阪市大阪府が2本立てになっているのは無駄が多いとも言えます。ただ一つにまとめるとなると当然反対意見も多く吹き出します。いろんな反対意見はありましたが、私は府財政と市財政の差はあると見ています。市財政は比較的健全ですが、府財政はかなり深刻です。見ようによっては、深刻な府財政を比較的健全な市財政でカバーしようとしているようにも受け取れます。ぶっちゃけた話、大阪市及び大阪市民にとってはデメリットの多い合併統合です。順序的には深刻な府財政をまず建て直し、財政状態を、

こういう状態にしてから都構想の具体化に進むべきじゃなかったかと見ています。こうなっていれば統合効果は非常に上がりそうに思いますし、win-winになるかもしれないからです。あくまでも「たぶん」ですが、橋下氏も当初はそういうプランも持っていた気がします。ところが知事になって財務の実情を知ると、府財政の建て直しは1期や2期程度では「どうにもならない」と判断された気がします。そこでまず府財政を建て直す路線をあきらめ、強引でも合併させる路線に進まれた気がします。それが知事辞任、市長・知事のダブル選挙戦術です。ダブル選挙の前に府議会・市議会選挙で勝利してますから、トップを握れば大阪都構想は実現するぐらいの感じです。

これも推測にすぎませんが、一連の選挙で勝利したことで、橋下氏は都構想について「もう、時間の問題」と判断された気もしています。維新議員の中にも大阪都には神戸(つうか阪神間)も吸収したいなんて発言が出ていたと記憶しています。これは橋下氏の気持ちが伝わっていた部分も大きかった気がします。ところが市議会選挙は勝利はしていましたが、過半数を握れていません。風を受けている間は良かったのですが、失速傾向が見え始めると市議会野党連合が構築されます。都構想のための布石プランが選挙で選ばれた市議会議員に次々と否決されます。


最後のカード

橋下氏にとって選挙で選ばれる意義は非常に大きなものがあります。ここで議会の反対で都構想が進まないのであれば、筋からして市議会を解散して過半数を目指すべきかと思います。しかし橋下氏はそれを選んでいません。これは書くまでもなく市議会選挙で過半数を取れる計算が立たないためと考えます。下手すりゃ議席を減らしかねませんし、議席が減れば都構想は挫折してしまいます。ではでは、市長・知事のダブル選挙も選択としてあったはずです。大阪都は言うまでもなく、大阪市民だけではなく大阪府民にも直接関係する問題ですから、民意を大阪市民だけに問うのも変だろうと言うところです。しかし橋下氏はダブル選挙は選ばず市長選単独を選択しています。

これまた「たぶん」ですが、ダブル選挙になれば有力な対抗馬は市長選ではなく知事選に出馬してくるだろうの読みだと思っています。橋下氏が市長選で負ける公算は極めて低いですが、知事選はどうなるかは予断を許さないものがあります。もし知事が敗れたら、これまた都構想が挫折しますから、そのリスクを回避したぐらいでしょうか。ピークの頃から退潮傾向が著しい橋下氏の選挙での最後のカードが自らの選挙と見ています。他の戦術は危険性が高くて、もう使えない状態ぐらいです。

橋下氏が市長選で勝つ公算は高いのですが、たんに勝つだけでは十分な成果とは言えません。「民意は我にあり」の圧勝劇を演じる必要があります。負ければ引退宣言もされているようですが、宣言などしなくとも政治生命は終わります。橋下氏にとって一番望ましい展開は、有力候補が対抗馬として出現し、なおかつ対抗馬に市会の反対勢力が相乗りしてくれることです。そういう状態の対抗馬をコテンパンに叩きのめす快勝劇が政治的に是非必要ぐらいでしょうか。ちなみに大阪市長選は前回の2007年時に6億円ほどの税金が必要だったそうです。そこまでの税金を投じるわけですから、ある種の背水の陣みたいなものでしょうか。


対抗馬は出るのかなぁ?

橋下氏の狙いは私ぐらいでもミエミエです。当然対抗勢力にもミエミエです。抜き打ち選挙ですから、出馬準備を進めていた陣営などないと考えています。ヨーイドンで候補者を探し、反対諸勢力の支持を集めて回るのは相当な困難を伴います。そのうえ勝てる公算が低く、低いだけでなく橋下氏の引き立て役のピエロにされるのも確実です。橋下氏の辞職・出直し選挙宣言に対し、野党陣営が「候補者は立てない」の感想を漏らしていたのはある種の本音かとも感じています。候補者を立てないのも一つの戦術で、橋下氏も泡沫候補相手に圧勝劇を演じたところで政治的効果は乏しいうえに、メディアの注目も低くなります。せっかくの出直し選挙劇場の客がスカスカ状態になりかねないからです。

それでもあえて候補を立てるところと言えば、まずは共産党。ここは、まあほとんどの選挙に候補者を立てられます。橋下氏絶対有利だからと言って控える理由に乏しいところがあります。共産候補も橋下氏に取って嫌な相手の気がします。泡沫候補よりはマシですが、勝つどころか圧勝して当たり前の相手です。ここで中途半端に票が集まったりするとそれだけでダメージになります。共産候補相手では勝っても話題にならず、共産候補の票が伸びた時のみ「批判票」として話題にされる相手と言うところです。

後は流浪の一発屋の参戦です。たとえば都知事選を回避した元宮崎県知事。ただこの人物、維新から衆議院議員に当選しながら袂を分かった経緯があります。一応、円満離党みたいですが、出りゃ猛烈な批判合戦、つうかネガキャン合戦になる可能性はあります。その程度は選挙のリスクとも言えますが、たぶん出馬条件は橋下反対勢力の一致した支持だと思いますし、そういう機運が起こりそうかと言えばかなり乏しそうな気がします。単独では橋下氏に勝てる公算は低いですから、やはり回避でしょうねぇ。

後は大阪特有の選挙事情で芸人候補の出馬です。これも誰が出るかで変わりますが、たとえば西川きよし桂文枝(三枝)クラスがひょいと出てくれば選挙事情は一変します。個人的には、芸人候補の出馬を強く懸念して府知事選を回避したんじゃないかとも考えています。芸人候補相手でも橋下氏なら勝てるでしょうが、府知事では足下を掬われる公算があるの判断です。それぐらい大阪では芸人候補は強いと言うところです。しかし橋下氏との一騎打ちに出馬するかになると・・・出る公算はこれも低そうに思います。

こう見てみると選挙戦の構図は、

  1. 橋下氏 vs 泡沫候補のみ
  2. 橋下氏 vs 共産候補(プラス・アルファで泡沫候補
2.の可能性が高そうな気がします。このさい誰も立候補せずに無投票にて決着なんて事になれば、それはそれで外野として「大阪的」で面白いのですが、どうなる事やら。有力対抗馬が出現せずに、盛り上がりもなく、メディアのさしての注目もない出直し市長選劇場になった時の戦略は用意されているのでしょうか。橋下氏が自分で書かれたシナリオですから、そこも計算済みと考えています。そう言えば今朝のマスコミ記事を見ていたら、法定協議会は今回の出直し市長選で突破し、その後の議会承認の時にもめたら、もう1回出直し市長選をやる戦略とも流れていましたが・・・ホンマかいなと思っています。