イオンモール論で思ったこと

モトネタは

本当はショッピングモール論らしいのですが、実態としてイオンモールが非常に強いのでイオンモール論ないしはイオン論と呼ばれているそうです。読みながらフムフムと納得する部分も多かったのですが、先日旧友と話した時の事を思い出しました。話の肝は「昭和は既に遠い」です。そりゃ平成も25年が暮れようとしているわけですから、昭和と言っても四半世紀前のお話です。もう少し言うと平成になった時点で5歳未満なら昭和の記憶はあんまり期待できませんから、今の30歳未満の人に昭和と言っても殆ど実感はない気がします。

もう少し言うと、ショッピングモール台頭前の地方商店街が本当に活気のある時代を知っている者はさらに少なくなります。これは地域によって時間差はあると思いますが、私の故郷の商店街に活気のあったのは昭和40年代ぐらいまでになります。ちと記憶が怪しいのですが、昭和40年代の末ぐらいにジャスコが進出してきて、以後は長期低落を続け今に至るです。三丁目の夕日状態が全国どこにでも見られたのを知っているのは私の世代ぐらいが最後かもしれません。以後は時間差はあっても「昔は・・・」を「聞いたことがある」が精一杯の気がします。そうなると人口の4割ぐらいしかもう知っていないかもしれません。


当時はイオンモールではなくスーパーの進出とされましたが、この害悪論は当時も盛んだったと思っています。典型的な害悪論は、

    資本に物を言わせて赤字覚悟で地元商店を叩き潰し、その後に悠然と値上げして赤字分を取り戻す
良くは存じませんがそういう商法を取っていたスーパーもあったのかもしれません。ただこの害悪論は結果的に外れる事になったとして良いかと思います。スーパー進出当時は地元商店がライバルですが、地元商店を叩き潰して地域の独占が続けられるほど商売は甘くなかったぐらいの説明で良いかと思います。これも常識ですが地方に行くほどクルマの普及率が高く、ちょうど地方へのスーパーの進出時期と連動するように高くなっていた点です。

クルマの普及に便乗するように広い駐車場を持つ郊外型の大型店舗が繁栄したのですが、同時に移動手段がクルマであるために、クルマの前の時代の商圏を超えて人は買い物に出かけるようになったぐらいと理解しています。ある地方の地元商店を叩いて勝っても、今度は隣接する商圏のスーパーとの競合を余儀なくされたぐらいです。これが殆ど連続して起こったと思っています。そうなると相手も大資本ですから、値段を吊り上げてウハウハなんて言ってられなくなります。それだけでなく同じ地域に直接乗り込んでくる競争相手も続々出現するようになります。

商売の基本は値段と品ぞろえとサービスですが、値段と品ぞろえだけで勝負できるのは相手が地元小資本程度の時だけで、大資本同士の競合となればその上にサービスをいかに乗せるかが勝負のカギになります。そういうサービス形態の一つの発展形がショッピングモールであり、その現在の勝者がイオンモールぐらいに理解しています。


人は買い物に何を求めるかを考えると面白いのですが、たとえば乾電池がそれを切れたから買いに行くだけみたいな目的がはっきりしたものもあります。ここで考えてほしいのですが、時間がなければ乾電池さえ買えればどこでも良いのですが、姿勢として「乾電池も買いに行く」になれば話は変わります。目的として乾電池は必ず買うのですが、これはあくまでも出かけるための理由で、その「ついで」に何かを期待することは珍しいものとは言えません。

乾電池を買う「ついで」にあれこれ商品を見て回り、「おぉ」と思うものがあれば「つい」買ってしまう状態です。珍しいもの、面白いもの、興味のあるもの、欲しかったものが「たまたま」目につけば、それも買う事を期待に含めているとすれば言いすぎでしょうか。これは商品でなくとも構いません。ついでに昼食なりを食べて帰ろうぐらいも含まれます。食事までいかなくてもコーヒーの一杯でも飲んで、女性なら美味しそうなケーキを食べようぐらいはごく普通に出てきます。


地方商店街全盛時代を知ってはいますが、それでも都会に出て行く買い物というのが田舎者にはありました。これは地元の商店街に買い物に行くのとは別格の気構えでした。ある程度の目的の商品はあるのですが、それだけを買いに出かけるのではなく、最初から何か他のものを買う気がマンマンぐらいとしても言い過ぎではありません。気分は祝祭に出かけるようなもので、非常に浮かれた気分を味あうのを期待しているぐらいです。これは遥かなる昭和の時代は楽しみが今に比べても少なかったのは間違いなくあります。都会に出かけて買い物をするのが一大娯楽だったわけです。

地方の商店街でもそれなりの娯楽的要素はありましたが、その程度ではまず昔ながらのスーパーの楽しさにまず勝てなかったのは事実です。あれから幾星霜、昭和の時代に比べると楽しみは増えました。これに対して楽しみの要素を常に工夫してきたところが現在の勝者の気がしています。そりゃ、同じ商品を、同じ値段で買うにしても、買うまでの過程が楽しいところに人は集まるのは当然です。そういう勝者の地方での一つの形態がイオンモールの気がしています。


でもってなんですが、ネット時代がやって来ています。私はあんまり利用していませんが、確かに便利なものです。ネット販売とイオンモールでは勝負はどうかです。これについては意見は様々で、現物を手に取って見れるメリットを推す人もいますし、利便性でネット販売を推す人もおられます。私は現物を確認したい派ですが、これも世代感覚がありこれからの優劣は何とも言えないところの気はしています。現実には店で現物を確認した上でネットで安いところを探す派なんて折衷派も少なからずおられる気はしています。

この勝負は「イオンモール vs ネット販売」と言うより、「リアル店舗型 vs ネット販売」の図式と見る方がより正確だと思っています。さらに言えばどちらが勝つかではなく、並立するとは思ってはいます。ただ並立はするのですが、やはり店舗型の何割かはネット販売がさらっていくのも確実と思っています。つまりはリアル店舗型のパイはどうしたって縮小し、その中で集客力のあるところが勝ち残るだろうです。


実はと言うほどではありませんが、話を地方商店街の活性化策に持って行きたかったのですが、時代が「リアル店舗型 vs ネット販売」の時代に移っている中ではシビアすぎて論が出ませんでした。地方商店街が活性化するには、

  1. イオンモールに勝る演出を行って集客力で拮抗する
  2. その上でネット販売に勝る魅力も必要
とりあえずイオンモールに勝たないと話が始まらないと思いますが、勝てるところと言うか、勝てるだけの余力がまだ残る商店街は少ないだろうなぁ・・・と正直に思った次第です。