学校のAED

私の覚えている範囲ですが、

  1. 高校の野球の練習試合で打球を受けた選手が倒れ、試合場に備えておかなかった注意責任義務
  2. 中学校の長距離走で女児が倒れ、この時に学校にあったAEDを使わなかった注意責任義務
この2つが訴訟になっていたと記憶しています。どちらも痛ましい急死ですがとにかく訴訟として争われています。でもって10/5付読売新聞より、

AED使わず学校で小5死亡、両親が市を提訴

 長岡市内の市立小学校で2010年10月、小学5年の次男(当時11歳)を亡くした両親が、「学校がAED(自動体外式除細動器)を使用すれば助かった」として、長岡市を相手取り、9186万円の損害賠償などを求める訴訟を新潟地裁長岡支部に起こした。

 訴状によると、男児は同月20日、昼休みにサッカーをするために校庭に出ようとしたところ、校舎の通路で左胸を押さえるように倒れた。教諭や校長が駆けつけ、人工呼吸や心臓マッサージなどで心肺蘇生を行った。倒れてから4分後、1人の教諭が校内に備え付けてあったAEDを持ってきたが、誰も使用しなかった。児童はその後病院に搬送されたが、約4時間後に死亡した。

 校長らは、事故の4か月前にAEDの使用法について救急講習会で受けていたという。両親は、AEDを使わなかったのは「故意、重過失による作為義務違反」と主張している。

これまた痛ましい急死で、亡くなった男児の御冥福を謹んでお祈りします。記事情報からだけの状況分析ですが、

  1. 昼休みに突然男児が倒れた
  2. おそらく急報を聞きつけた教師が駆けつけた
  3. 教師は心マッサージを行った
  4. AEDを持ってきた教師がいたが使わなかった
これ以外に当然行われている事は、救急隊への要請は当然あったと考えられます。救急隊がどれほどの時間で駆けつけられたかは記事からは不明ですが、おそらく10分以内には到着した可能性は高いと考えています。これだけの情報で教師のその時の状況判断を推測するのは難しいのですが、駆けつけた時には男児は既に蒼白になっており、必死で心マッサージを行なったのだろうぐらいは言えます。AEDが現場に持ち込まれたのは「4分後」となっていますが、AEDを使うより心マッサージを行いながら救急隊の到着を待ったんじゃなかろうかです。さてこの経緯で訴訟を起した理由は、記事を信じれば、
    故意、重過失による作為義務違反
本当に訴状に「重過失」と書いてあったのでしょうか。これについて確認する術はありません。もちろんまだ訴えられただけで、教師の重過失が認められた訳でもなんでもありません。



さてさてさてと、どこかで指摘があったのですが、これらの訴訟の共通点を指摘されている弁護士がおられました。私も言われて見て「なるほど!」と気がついたのですが、いずれも

    学校のAED使用問題
つまり学校だから訴訟になっているとの考え方です。これも私の狭い範囲の記憶ですが、AEDにまつわる訴訟で学校以外は記憶にありません。法的なロジックはうろ覚えですが、学校は子どもの安全を守る責任がより強く課せらるぐらいの考え方です。言われなくても教師も学校もそう意識しているでしょうが、AEDにまつわる訴訟もそこから過失判断を考えているぐらいです。この記事で言えば、
    校長らは、事故の4か月前にAEDの使用法について救急講習会で受けていたという
これを一つのポイントと見るそうで、講習会を受けたからには「常に正しい」AEDの使用義務が発生し、これを怠った上に重大な結果を招いたのは「重過失」であるとの考え方になるそうです。派生して考えると、仮にAEDを使おうとして何らかのメカニカル・トラブルが発生したときにも管理責任義務を厳しく問われるぐらいと考えても良さそうです。備えたからには常に使える状態に管理して置くのは、児童生徒の安全管理を担う者として当然と言うか課せられた義務みたいなロジックぐらいでしょうか。

もう一度、念を押しておきますが、そういう注意責任義務が本当に学校や教師にあるかどうかはまだ確定していません。ただ法的なロジックでは訴える事は可能であるぐらいの解釈で良いかと思います。現実に私が知っているだけで3つの訴訟が起されているからです。最後に亡くなられた男児の御冥福をもう一度祈らせて頂きます。