堀潤事件簿

よく知らない人

 実は殆んど存じ上げない方です。NHKの人気アナウンサーだったそうですが、我が家はあんまりテレビを見ない上にチャンネル権を喪失して長いので、NHK時代の活躍は「まったく」存じません。wikipediaで確認すると2001年に入社、2013年4月1日に退職となっていますから、NHK時代は12年間だったらしい事ぐらいはわかります。ついでにwikipediaからですが、

同年6月15日、宇野常寛とともに、放送への市民参加の実現と市民による発信力の強化に貢献することをめざして、市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げる。

 同年とは2012年の事でNHK在職中になります。兼業しても「エエんかいな」と素直に思いますが、きっと良かったんでしょう。マスコミにも華々しく取り上げられています


事件簿その1 8bitNews

 とにもかくにも8bitNewsは発足し、翌年にはNHKも退職して専念となったのですが、マスコミの称賛とは別に当初から不安視されていました。マスコミは、

今までにもPJニュースやJANJAN、オーマイニュースなど、市民ジャーナリズムの確立をめざしたサイトはあったが、これらは既存の報道スタイルのまま、記者をプロから市民に、発信の場を放送からネットに置き換えただけのようなところがあった。それに対し、8ビットは完全に個人が発信する場であり、ニュースサイトというよりも個人がブログやユーチューブで配信しているものを集約する場であることを標榜している。

 オーマイニュースとは違うと強調していますが、オーマイニュースの失敗の原因は、

    既存の報道スタイルのまま、記者をプロから市民に、発信の場を放送からネットに置き換えただけのようなところがあった
 本当にそれだけがオーマイニュースが挫折した原因かどうか、さらにそれだけを改善すれば問題は解決したかどうかです。堀氏はwikipdiaより、

2012年6月よりアメリカ合衆国カリフォルニア大学ロサンゼルス校に客員研究員として派遣され、SNSの活用などを研究。

 この時に学習した知識が基本となっていると考えますが、結果としての運営方針は、

サイトにはコメント欄を設けてあります。議論の場になり、様々な角度の知見が集まり、互いに検証し合えればというのが、理想の形です。8bitNewsはまずは場として、規約違反以外の映像投稿に制限は加えません。(8bitNewsの市民発信についての対話

 堀氏の理想が実現するには条件が必要です。

  1. 記事を読んだものが「誰しも」記事内容を鵜呑みしない
  2. 記事内容についての議論が収束するのを誰しも待ち続ける
 しかし現実には記事内容を鵜呑みし、検証議論など見もしない人間が多いと言う事です。当たり前のお話ですが、自分に直接関る、もしくは知識が深い分野なら検証議論に参加もするでしょうが、そうでなければ記事の額面をそのまま受け取って終ってしまうです。私だって医療系とその他の数分野を除けば「そうしてしまわない」ととても言えません。そんなノンビリ、さして興味も知識もない問題に関っていられないからです。話題は次から次へと出てきますから、興味と関心はすぐに移ってしまうと言う事です。

 さらにこの世には確信犯的もしくは職業的なデマッターが存在します。彼ら彼女らはまことしやかなデマをあらゆる技法を用いて流布されます。さらにこのデマを打ち消そうとすると猛烈に反発されます。その反発もまたありとあらゆる技法を駆使されます。たとえ泥仕合の議論になろうとも、飽くことなく反論を徹底的に続けられます。さらにさらに、このデマッターのデマの信奉者もおられ参戦してくるわけです。

 記事として並ぶ限り、デマとその他記事に見た目上の差は無く、鵜のみ派の人はデマを真実と信じ込んで無邪気に拡散される事になります。検証議論もデマッター・クラスタに跳梁跋扈されたら、余ほどの大デマでもない限り良識的な人間はスルーしてしまいます。付き合うには余ほどの気力と執念が必要で、既に「こいつはデマッター」とレッテルを貼られている人間なら「いつものアイツのいつもの事」で片付けてしまうです。ここで問題は「いつものアイツのいつもの事」を知らない人間です。デマを鵜呑みしてデマ拡散者に加担してしまう事が起こります。

 現在の8bitNewsのリニューアルに向けてには、

 2012年6月15日の開始以来、1000本以上の動画が投稿され、原発作業員による内部告発をはじめ、テレビニュースではあまり報じられない様々な現場を、投稿者自身が発信してきました。

 一方で、疑似科学、ヘイトスピーチ、陰謀論に関わる投稿も寄せられました。問題提起、議論や検証のきっかけになればという思いから、なるべく削除を控えて参りましたが、本来の意図が伝わらず、(議論や検証をする前に)情報が拡散して一人歩きするケースもありました。これは事務局のミスとして率直にお詫びを申し上げますと共に、寄せられる報道の選別選定を強化します。

 小なりとも報道機関を自負するものが報道する情報には最低限のフィルタリングが求められると言う事です。それぐらい元記事の影響力は大きく、一度デマとして拡散してしまえば、これを打ち消すのは非常な手間ヒマがかかってしまうのが現実です。かくして堀氏のオーマーニュースの二番煎じは、多くの人が予想した通りデマッターの活躍の場を与え、8bitNewsとは「そういうところだ」のレッテルを貼り付けられる結果となってしまったと言うところです。


事件簿その2 著作権事件

 堀氏の新企画のようで、その日のトピックス的なものを1日の終りにピックアップして元アナウンサーの堀氏が読み上げるものです。まあ、読むだけでなく自分の感想とかを入れて、アナウンサーとニュース解説者の二役を兼ねるぐらいの狙いでも良いかもしれません。このパイロット版と言うか、広告編みたいなものが出ただけで強い批判に曝されたのも記憶に新しいところです。堀氏が批判されたのはただ一点で、

    読み上げたニュースの著作権はどうなっている?
 報道記事にも当然ですが著作権はあります。引用ならともかく転載となればその記事を買う必要があります。通信社とは情報を集めこれを報道機関に売るのが商売ですから、報道人なら常識と言うのも恥しいレベルのお話です。この指摘について堀氏はついに「ちゃんと買っている」の返答を出来ませんでした。あれは引用云々の弁解を繰り返した挙句、パイロット版を削除して逃げてしまったです。

 程度を云々する以前のお話で、あまりのお粗末さに呆れ返った人間が多数出現した結果を、新企画の初っ端にやらかしてしまったと言うところでしょうか。


事件簿その3 WEDGE記事事件

 元動画は私も見ていませんが、実際に見られた方の感想を堀潤さんの「問題の動画」を観て、考えてみた。から引用します。

 その話題がようやく出てきたのは、開始47分後(その話は、全部で5分くらいでした)。

 もっと「糾弾ムード」なのかと思いきや、のんびりした雰囲気で、「『WEDGE』の方に今日話を訊く機会があって(たしかに、『WEDGE』の方(かた)、と言っています、放送内では)」という前置きで、その話は始まりました。

 内容は、「『WEDGE』はJR東海が出している雑誌で、『WEDGE』9月号の「いまこそ、原発を再稼働すべきだ!」という特集は、JR東海の葛西会長の肝いりで決まった」というのと、「それに対して、JR東海の労働組合が、『いまの時点でそういう特集をするのはあまりにもバランスを欠いている』と反発し、車両内の広告の量が減った」というものです。

 5分程度の内容だそうです。WEDGE記事とは引用にもある通り、原発再稼動賛成の記事で少し話題になってはいました。この記事についてのやり取りが

 ここにまとめられています。やまもといちろう氏が「三手詰み」とも評されたものですが主要部分だけ引用しておきます。

  • 堀潤

      今夜もネルマエニュースをご覧頂き感謝です。今夜は柏崎刈羽原発の再稼働申請を巡る泉田知事と東電社長面会のニュースを中心に担当者から直接聞いたWEDGE9月号原発推進特集の舞台裏について放送しました。


  • 第一手:WEDGE担当者

      あのー、その担当者です。僕、あなたに取材されてませんけど??


  • 堀潤

      編集長以外にも出版に関わっていらっしゃる方はいるかと思います。でしたら、大江さん!ぜひ直接今度、お話をお聞かせいただけませんか?僕も興味を持って熟読させて頂きました。原発の問題を考える上ではとても重要なアプローチだったと思いますが、ぜひお話お聞かせ下さい。


  • 第二手:WEDGE担当者

      あの記事は僕が担当なんです。他にはいません。まずは、堀さんの仰った「担当者」の意味を教えてください。


  • 堀潤

      御社の雑誌販売に関わる方々です。取材源の秘匿があるのでもちろん詳しくは明かせませんが、ぜひ、裏とりも必要ですので、直接大江さんのお話を伺えると助かります!


  • 第三手:WEDGE担当者

      それは関係者であって担当者ではないと思います。そういう日本語の使い方する方なんですか?


  • 堀潤

      いやいや、記事を書いた担当者とは言っていませんよ。販売したり、広告をうったり、印刷をしたり、一つの雑誌を制作するのに、さまざまな担当者がいらっしゃるのではありませんか?

 言い出せばWEDGE担当者と称する人が本当に担当者かどうかも問題になりますが、堀氏のツイートは間違い無く堀氏ですので幾つかの事が確認できます。

  • 当日のネルマエ・ニュースのある種の目玉であった
  • 堀氏はWEDGEの当該記事担当者には会った事すらない
  • 誰から取材したのかは明らかにしていない
 取材源の秘匿つうものがあるので、誰からの取材かを必ずしも明らかにする必要はありません。ただ宣伝文句として「担当者から直接聞いた」としていますから、実名こそ伏せていますが非常に限定される対象になります。ツイッターでWEDGE担当者が反応したのもその点だと思います。そりゃ取材は愚か会った事も人間から「直接聞いた」と言われれば反応ぐらいしたくなります。

 ここで指摘があった時にトットと「担当者」ではなく「関係者」の誤りであったぐらいにしておけば「まだしも」だったのですが、堀氏は「担当者」に異様に拘りを見せます。まあ自社のアピール・ツイートだったので「間違い」を認めたくなかったのだろうぐらいは推測できます。そのために何故か担当者の定義の拡大にひたすら励まれます。とくに失笑を買ったのが、

    販売したり、広告をうったり、印刷をしたり
 そりゃ販売担当とか、広告担当とか、印刷担当とかの表現はしますが、今回ではチト無理があるだろうです。印刷担当に記事の内容の評価とか、意図とかを聞かれても正直困るでしょうし、そんなものを取材根拠にされても読む方も迷惑だぐらいのところです。堀氏が弁解に努めるほど醜態をさらした事件でした。


三度目もありそう

 堀氏が起した事件を私が知っている範囲で3つ書きました。堀氏が8bitNewsを設立したのが2012年6月15日となっていますから、たった1年ちょっとの間に「続けざま」に起している事になります。この3つの事件も2つに分類できると考えます。どんな職業にも基本基礎があります。事件の性質もこの基本基礎レベルのものなのか、基本基礎レベルを踏まえた上の応用レベルのものなのかは分けられる考えます。3つの事件を分けて見ると、

基本基礎以上 8bitNews
基本基礎未満 著作権事件、WEDGE記事事件


 8bitNewsの失敗は基本基礎以上のもので、理想と現実の差を授業料を払って学ばれたぐらいには評価可能です。これに対して残りの2つは基本基礎未満の非常に雑なものであったの評価を為されても致し方ないかと存じます。その道のプロ、さらには一人前と見なされている人間は基本基礎未満の失敗は一度でも最悪「命取り」になるぐらいのダメージを受けます。そんなミスは弁解を聞く以前の代物だと言う事です。

 それでも人間ですから起さないとは言いませんが、短期間に2度も起せば評価は非常に下がります。基本基礎が出来ているとは、基本基礎でのミスは既に無意識に回避できる事を意味します。ですからどんな業界でも基本基礎を習得中の者は「見習い」として扱われ、指導者の管理監督の下で働くわけです。それと見習い中だって基本基礎のミスを繰り返すものは良い評価を受けません。ましてや一人前になったらと言うぐらいでしょうか。

 マルクスの言葉だそうですが(ルイポナバルトのブリュメール18日 第1部冒頭)、

「歴史的な大事件や重要人物はすべて、いうならば二度繰り返される」とヘーゲルはどこかで指摘したが、彼は以下の事を付け加えるのを忘れている。一度目は悲劇だが、二度目は茶番劇だと言う事を。

 ヘーゲルの言葉の引用部分はともかく、最後の

    一度目は悲劇だが、二度目は茶番劇だと言う事を
 ヘーゲルもマルクスも歴史の喩えとして出していますから、3度目の話はありません。しかし堀氏はどうなんでしょうか。2度の教訓で次は無いのでしょうか。マルクスの「二度目は茶番劇」の表現からすると三度目はどんな表現になるだろうぐらいのところです。とにかく誰も見たくもなくなるレベルにめり込むぐらいは想定できます。それぐらい社会は厳しい面があります。

 ネット上では既に某大物デマッターに匹敵する(弟子と言う表現さえ出てました)もしくはそのカテゴリーの人間であるとの評価が拡散定着しつつあります。その路線でも食っていけそうですから、目指されるのならそれもビジネスですが、堀氏の高邁な理想からすると「おそらく」不本意だと推測しています。そういう評価を振り払うには、そうでない事の証明を自ら行うしかありません。とにもかくにも3度目は全力を挙げて回避に努められるべきでしょう。未だに堀氏に期待されている人は少なからずおられる気配がありますから・・・今後の精進に期待します。