医学部定員と入学者数

医学部入学者数の実数

今週は学校基本調査とニラメッコ状態なのですが、医学部入学者数はやはり素直に入学者統計で良いと判断しました。編入学者も含めての合計です。でもって編入学者数が統計に出てこない理由は「どうも」大学卒の入学者はすべて編入学者になっており、卒業時の統計のみに表されていると考えます。学校基本調査は留年者数も統計で出しているのですが、編入学者の留年はカウントしないとなっていたのを確認したからです。つまり統計上は高校卒の入学者の留年数のみカウントしていると言う事です。


医学部定員の考え方

医学部定員は一般には募集定員と考えられ、その年度に100人募集とあれば100人まで入学できると普通は見ます。ただもう一つの要因があり、年度毎の募集定員の6年の合計分が学部定員となります。こっちの方が実は意味がありそうで、今は学士入学などの編入学ルートが250人ぐらいある情報も確認しましたが、これは募集定員と別の学部定員から入学させていると見るのが宜しそうです。

さてこの学部定員ですが、文科省からの補助金の絡みがあります。学部定員に対する在学者数は充足率とされるようですが、充足率が110%を超えても、90%を下回っても処分があるようです。簡単にはペナルティとして補助金を減額されると言う事です。医学部も私が在学していた頃は、留年者の増大が問題になっていたと記憶しています。また募集定員以上の入学者を取っていた大学もあり指導があった話もあります。どうもそのためか、医学部では充足率のオーバーの基準が非常に辛い「自主規制」みたいなものがあるようです。

年度 募集定員 学部定員 在学者数 充足率(%)
1997 7625 45750 47185 103.1
1998 7625 45750 47442 103.7
1999 7625 45750 46807 102.3
2000 7625 45750 46697 102.1
2001 7625 45750 46655 102.0
2002 7625 45750 46410 101.4
2003 7625 45750 46258 101.1
2004 7625 45750 46207 101.0
2005 7625 45750 46256 101.1
2006 7625 45750 46190 101.0
2007 7625 45750 46248 101.1
2008 7793 45918 46610 101.5
2009 8486 46779 47496 101.5
2010 8846 48000 48615 101.3
2011 8923 49298 49693 100.8
2012 8991 50664 51650 101.9
2013 9041 52080 52969 101.7

1997年度からしかデータがありませんが、それでも1998年度に103.7%であった充足率が2004年度には101.0%まで下がっています。充足率に影響する数字としては、
  1. 留年者数、休学者数
  2. 退学者数
留年者数、休学者数は増加に働き、退学者数は減少に働きます。これらの因子がゼロで、入学者数が募集定員と同じなら充足率は100%になりますが、そうは問屋は卸してくれません。充足率101%も凄い数字で、募集定員100人なら各学年で1人しか滞留者(留年者+休学者 − 退学者)の発生は許されない事になります。もう少し具体的には今年度の学部定員が52080人ですから521人しか滞留者の発生が許されない事になります。留年者の統計を見るだけでもそんな事は不可能です。


充足率の調整法

医学部の滞留者の多くを占めると考えられる留年者は非常に減っています。医師が見てもビックリするぐらいです。それでも2.7%ぐらいはいると統計にはなっています。しかし充足率はそれ以下です。留年者の発生をこれ以上減らすのは実際的には難しいと考えられ、ましてや1%程度に減らすのは現実的でないと見ます。そのため入学者数で調整していると考えます。

年度 充足率 募集定数欠員数 101%基準超過数
1997 103.1 -129 978
1998 103.7 146 1235
1999 102.3 -296 600
2000 102.1 -338 490
2001 102.0 -372 448
2002 101.4 -367 203
2003 101.1 -347 51
2004 101.0 -360 -1
2005 101.1 -348 49
2006 101.0 -343 -18
2007 101.1 -230 41
2008 101.5 -330 233
2009 101.5 -368 249
2010 101.3 -426 135
2011 100.8 -515 -98
2012 101.9 -497 479
2013 101.7 -403 368

わかりにくい表で申し訳ないのですが、101%基準とは学部定員の101%を超えた在学者数です。実務的にはここに退学者数がからむので帳尻は合いませんが、入学者数を減らす事により、充足率を調整していると考えて良さそうです。傾向もあるようで、一時は充足率101%に収束していましたが、現在は102%ぐらいに緩和されているような印象を受けます。 まあ、それだけのお話です。今週初めから募集定員と入学者数の差が何故に生じるか個人的に疑問でした。それがなんとかでも説明できそうなのでホッとした気分です。