真のブラック病院はどこ?

6/7付回答する記者団記事より、

これは東京都の40の主要病院の36協定を開示請求を行った結果のようです。記事から一部ピックアップしておくと、

病院名 所在地 1カ月 3カ月 1年
1 日本赤十字社医療センター 渋谷区 327時間 ---- ----
2 武蔵野赤十字病院 武蔵野市 200時間 ---- 2400時間
3 (独法)東京医療センター 目黒区 ---- 600時間 1440時間
3 (独法)災害医療センター 立川市 ---- 600時間 1200時間
5 NTT東日本関東病院 品川区 150時間 ---- 1000時間
ふぇぇ、月200時間の年間2400時間か・・・少々魂消ました。36協定にも平日の時間外協定と休日の時間外協定を本来は分けて考えないといけないのですが、そこまで詳細な情報はないので合わせてのものとして見ます。月200時間はどれほどのものかですが、9時5時で1時間休憩の7時間勤務で月に日勤帯勤務が151.6時間となる試算式があります。仮にこれに基づけば1ヶ月を30日として、
  1. 1ヶ月の総時間数は720時間
  2. 日勤帯が151.6時間
  3. 残業が200時間
  4. 勤務拘束以外が368.4時間
1日単純平均5.5時間の残業が1年中続く事になります。1日5.5時間の残業ぐらいは社会人なら誰しも経験あるかもしれませんが、これが年間通して勤務している限り続くのは少々大変そうです。これまで36協定の奈良県の時間外勤務時間を長い協定の典型としていましたが、必ずしも奈良だけでない事が確認されたので、奈良県に対し遺憾とさせて頂きます。日本赤十字社医療センターですが、同じように計算すると、
  1. 1ヶ月の総時間数は720時間
  2. 日勤帯が151.6時間
  3. 残業が327時間
  4. 勤務拘束以外が241.4時間
単純平均で1日11時間の残業になります。病院勤務以外の時間が1日8時間程度ってところでしょうか、

ちなみにですが、ある社会労務士の方が奈良モデルの「年間1440時間+特別条項360時間」つまり合計1800時間の時間外勤務を、割増率を勘案して時間給に計算されています。実に詳細な計算(とても紹介できません)なんですが、結果だけで言うとこれが2745時間分に相当するらしいです。2000時間をあえて換算すると3050時間ぐらいになります。

先ほどの上記したの1ヶ月の勤務時間151.6時間では年間勤務時間は約1800時間ですが、法定上限2085時間になります。法廷上限に較べても時間外手当は1.5倍ぐらいになります。ここまでの残業代を払うのなら医師を増やすほうがペイしそうなものですが、首都圏であっても医師が集まらないのでしょうか。それとも、それだけ払っても人を増やさないほうが人件費的にはペイするのでしょうか。そこまでの試算は私では手に余ります。


ただなんですが、医師なら察しがつくと思いますが記事にある、

東京都内の主要40病院の6割にあたる24病院が、職員の残業時間の上限を定める労使協定で、国の過労死基準を上回る協定を締結していたことが、東京労働局が開示した協定書から明らかになった。

記事でワーストとされた病院が真のワーストと考える方は少ないと思っています。真のワースト病院は一般的(告示)な労基法の年間上限とされる年間360時間を36協定で遵守する病院にあると考えておられると思います。私もそうです。ワーストとされた病院の実態は存じませんが、その病院だけが例外的に飛び切り忙しいとは到底信じられないからです。他の病院だってそれほど変わらず忙しいはずです。何が言いたいかですが、実際に残業を年間2000時間働いた時に、

  1. 年間2000時間の36協定がある病院は残業代を支払う可能性がある
  2. 年間360時間の36協定がある病院は、それ以上の残業をサービス残業に転嫁している可能性がある
言い出せば2000時間の36協定があっても、協定があるだけで実際は払わない可能性も残りますが、360時間しか36協定が無い病院は年間2000時間はまず払わないだろうと言うところです。たとえば済生会栗橋病院を前に試算しましたが、「どうも」月に20時間、年間にして240時間しか残業代を払っていないようだからです。それで時間外勤務が済むような病院とは誰も信じる医師はいません。

記事情報から36協定の上限時間をまとめてみると、開示された情報が黒塗りだらけで判り難かったようですが、

確認期間 協定時間 病院名
3ヶ月単位 600時間 東京医療センター災害医療センター
180時間 日大板橋病院、東京女子医大病院
120時間 慈恵医科大病院、順天堂大学練馬病院、順天堂大学順天堂医院
1ヶ月 150時間 NTT東日本関東病院
120時間 東部地域病院、大久保病院、荏原病院、豊島病院、多摩南部地域病院、都立駒込病院、東京医科大病院
100時間 国立がん研究センター中央病院帝京大学病院
90時間 昭和大学病院東京大学病院、、慶應病院、東京医科大八王子医療センター、有明病院
75時間 国家公務員共済組合連合会 立川病院
70時間 東邦大学医療センター 大森病院
67時間 東京医科歯科大学医学部附属病院
60時間 財団法人東京都保健医療公社 多摩北部医療センター(村山市)、・財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院青梅市立総合病院
45時間 社会福祉法人仁生社 江戸川病院、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院独立行政法人労働者健康福祉機構 東京労災病院日本医科大学付属病院国家公務員共済組合連合会 東京共済病院
35時間 河北総合病院
30時間 聖路加国際病院
開示なし 杏林大学病院、公立昭和病院、都立多摩総合医療センター


参考までに一般的(告示)による1ヶ月の上限は45時間、いわゆる過労死ラインが1ヶ月に80時時間、過労死ラインで1年間やったら960時間です。どこが真のブラックなんでしょうねぇ?


そうそう医師以外はどうなっているかの参考情報が2011.3.6付My News Japanの就職人気企業の6割が過労死基準超え 225社の36協定で判明 トップは大日本印刷の時間外1920時間にありました。記事から上位のリストを作っておくと、

36協定残業時間年間上限 企業名
1920 大日本印刷
1600 任天堂
1500 ソニーニコン
1200 三菱電機東レ清水建設大成建設
1100 丸紅
1080 アサツー デイ・ケイ
1068 京都中央信用金庫
1056 中部電力
1000 日本電気NTTドコモNTT東日本東芝
990 大塚商会
980 中央三井トラストHD
960 日本テレビ日立製作所大和総研、京セラ、


このリストだって病院と同じで、長時間でも36協定がある方が時間外手当だけでも払ってくれる可能性があり、白々と「うちは360時間を守っています」と言うところの方がドス黒い闇の中にいる事が多いのは常識かと思っています。医師が長時間の36協定を結んでしまうのを批判する声もありますが、大企業労組もあんまりアテにはならなそうってところです。ワークシュアなんて言葉はどこの世界のお話かと素直に思いました。

まあ、長時間の36協定であっても時間外手当を払ってもらう方向に動いている分だけ、勤務医の時間外労働も一流企業並の待遇に近づいているのかもしれません。前途なお遥かなりってところです。そう言えばかなりブラックらしい某企業の会長が参議院に出馬するとかの話もありますから、本当に遥かなのかもしれません。