改憲算数雑談

憲法改正のためには、

憲法第九十六条

 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

とにもかくにも衆参の各院の2/3以上の賛成が必要になります。この九十六条の改正もまた同様です。その後の国民投票は今日は置いとき、衆議院も置いときます。問題は参議院です。7月に選挙がありますが、定数は242です。このうち2人は議長と副議長で事実上の投票権ないとすると、240の2/3で160人、逆に阻止しようと思えば81人必要です。ただなんですが慣例として議長は第1党、副議長は第2党から選出されます。そのため

  1. 改正決議に必要なのは161
  2. 改正阻止に必要なのは82
ここも煩雑で第2党が改正阻止派にいるという前提が上の数字ですがですが、第2党も改正派にいれば162が必要になります。まあややこしいので上に挙げた数字で算数にします。


非改選議席

参議院衆議院と違い、全議席の改選ではなく半数ずつを改選します。7月に改選されるのは121で、残りの121は選挙の影響を受けません。この非改選議席がどうなっているかですが、

党派 議席
A B C
自民 45 54 65
公明 9
みん党 9 11
維新 1
改革 1
生活 2
民主 42 47
共産 3
社民 2
無所属 2 2
欠員 0 0


あくまでも現時点の予想ですが、自民は当然、みん党・維新もおそらく、公明は自民と離れるわけには行かないので結局、大雑把に改憲派になると見ています。改革も改憲派に考えています。一方で共産・社民は昔からの護憲派ですから今さら変わらんでしょう。民主は微妙なところがあるのですが、あそこは野党気分が強い政党ですから、与党に脊髄反射的に反対の立場を取ると考え非改憲派と分類しておきます。


2/3シミュレーション

まずなんですが自民の非改選議席は45です。過半数は122ですから、自民単独で過半数を占めようと思えば77議席必要です。かつては自民もそれぐらい勝っていた時代もあったと思いますが、現在ではかなりハードルの高い数字と思います。単独で2/3となると実に116議席となり、改選121議席を総取りするぐらいの完勝が必要になります。単独2/3はもちろんとして単独過半数も非常に難しそうに思います。

そうなると連立パートナーである公明がどれほどになるかです。公明の特徴はコチコチの組織票です。コチコチであるが故に少々の逆風状態でもしっかり議席を獲得できる一方で、風が吹いてもさして伸びないと言うところがあります。そのためか公明の非改選は9、改選は10となっています。自公あわせての非改選は54ですから、

公明は10議席程度と見ると自民は58議席で自公過半数は可能です。これはかなり確率は高そうです。しかし自公2/3となると121議席中107議席と自民単独とさして変わらない高いハードルとなります。自公過半数は現実的と見ても、自公2/3はこれも無理そうに思えます。


そうなると連立与党の自公以外の勢力を合わせないと2/3に達しません。自公以外で改憲に積極的なのはみん党、維新、改革と見ます。改革は置いておいて、みん党・維新の非改選議席は10で、自公+みん党・維新の非改選議席は64になります。仮に自公+みん党・維新を改憲派とすれば、

仮に自公がキッチリ過半数だとしたらみん党+維新で29議席必要になります。29議席はちょっとハードルが高いかな? 自公とみん+維新の議席関係を表にしておくと、


自公 みん党・維新 自公過半数
68 29 ±0
73 24 +5
78 19 +10
83 14 +15
88 9 +20
93 4 +25


結構微妙そうなところです。私の勝手な見方ですが、自民・みん党・維新の支持層って案外重なっている気がしています。参議院選挙の焦点が7月時点でどうなっているかの予想は難しいのですが、改憲がある程度争点となれば、改憲ついてはあんまり差が出ない事になります。平たく言えば改憲反対派の受け皿にはならないです。みん党や維新が伸びるには改憲以外の争点で支持を集める必要があります。

改憲以外となると思い浮かぶのは経済政策ですが、今日の予想の基にしているのは現在のアベノミクスへの支持率が7月時点でもあんまり変わらないです。だから自民が勝つ予想なのですが、みん党や維新は経済政策で自民と違う色を打ち出して支持を集める事が出来るでしょうか。なんとなく埋没してしまいそうな気がしないでもありません。あくまでも予想ですが、

  1. 自民単独の過半数は無理
  2. 自公は過半数を取る
  3. 改憲派で2/3に届くかどうか
こんな感じは一つ立てられそうです。


維新

改憲派2/3のためにはみん党と維新で20議席程度は「必要そうだ」が上に書いた予測ですが、まずみん党ですがせいぜい横這いぐらいじゃないかと見ています。みん党が議席を伸ばした背景には、当時の与党の民主の反対勢力の受け皿があったと考えます。野党時代の自民は政権時代の負の遺産があり、民主には反対でも自民も支持できないぐらいの感じでしょうか。そういう層の受け皿です。しかし次期参議院選挙では素直に「自民支持でエエやん」が増えそうな予想も立てられるからです。

みん党が10議席程度に留まると維新が10議席程度取る必要が出てきます。維新は去年の総選挙で480議席中54議席を獲得しています。衆議院参議院では選挙制度が違うので単純比較できないのですが、参議院の改選議席が121議席ですから、あえて単純計算をすれば13議席ぐらいは「総選挙当時の勢い」があれば不可能でないぐらいは言えます。

維新の国政選挙の実績は前回の総選挙しかないので予想が難しいのですが、前回の総選挙でもある時点までの選挙予測で100議席を超える話が出ていました。あくまでも週刊誌レベルの予測なので信憑性はその程度なのですが、実際は半分程度です。チト強引ですが、前回総選挙時点でも維新の勢いは既にピークを越えて下り坂になっていたんじゃなかろうかの推測は立てられます。

あくまでもマスコミ報道の観測ですが、維新内部にも勢いの失速を深刻に受け止めているフシはあります。外野から見ても一時の「猫も杓子も維新で正解」なんて感じは失われている気がしています。国会議員の代表も、市長の代表もその空気をヒシヒシと感じている気配はあります。維新の選挙戦術も「風頼み」が基本ですから、このままじゃ「不味い」はあり、話題づくりに長ける市長代表はさっそく動いたようです。

あんまり維新に好意的でないマスコミ報道、とくにあの朝日の報道ですからかなり割り引く必要がありますが、相当踏み込んだ発言と言うか、注目を嫌でも集める発言を意図的に行ったであろう事は窺えます。計算通り注目は集まっているのですが、これまでの話題づくりの発言に較べると相当危険なテーマを扱っている気がします。正直なところ、そこまでキワモノの話題を持ち出さないと注目を呼べないのであろうかです。

かの市長の常套手法は、

  1. かなり刺激的な発言で注目を集める
  2. 刺激的であるが故に反発も出るが、反発者を徹底的に叩きのめす
  3. 叩かれた反発者は敵に回るが、その他大勢の支持者を引っ張り込む
今回もこれから「発言の真意と違う」「マスコミは曲解して伝えている」などなどのカウンター攻撃を用意しているとは思うのですが、個人的には非常に筋が悪いものと感じています。女性のとくに「性」に関する問題はデリケートで感情的問題に発展しやすい性質があります。レベルは全然違いますが、政府が提唱した女性手帳問題でもどれだけの反発があったかです。市長のディベート技術は優れてはいますが、この問題を女性からの支持に変えるのは大変そうに思った次第です。

維新が去年の総選挙時点より半分程度に後退すれば改憲勢力はどうなるんだろうです。その分を自民が吸収するだけの話になるのか、2/3に届かない最大の要因になるのかは私如きでは予想不能です。ま、対抗馬の民主の弱体化は目を覆うばかりのところがありますから、現時点の予想として2/3はやっぱり微妙としておきます。