「統合医療」のあり方に関する検討会

とりあえずの結論みたいなものが出ています。もちろん中間報告でさえなく、

全部で19ページあるのですが大雑把な感想で言えば、
    棚上げ
こう読めました。なんちゅうか、民主党がマニュフェストに掲げ、鳩山元総理が所信表明伊演説に取り入れた一つの結論が出されたような気がしています。これで終わりじゃ、あまりに愛想が無いので少しだけ内容を拾ってみます。とりあえず鳩山元総理の影響部分ですが、

 平成22年1月29日に、鳩山内閣総理大臣(当時)が、施政方針演説において、健康寿命を延ばす観点から、「統合医療」の積極的な推進について検討を進めることを掲げた。

 これを受けて、厚生労働省においては、省内にプロジェクトチームを発足させるとともに、厚生労働科学研究事業による知見の収集を図ってきた。

まあここはこんなもので良いでしょう。次に目に付いたのは、

 また、検討会では、近代西洋医学と組み合わせる療法の範囲については、エビデンスの程度や有害性の如何に関わらず、あらゆる療法を一括りにして議論することに対して疑問が呈される等、相当議論があったところである。今後、療法の有効性だけでなく安全性に関する知見の集積状況も踏まえながら、療法の範囲について整理していくことが必要である。

この部分のどこに興味を持ったかですが、

    あらゆる療法を一括りにして議論することに対して疑問が呈される
「一括りにする議論」は誰が持ち出したのだろうかです。会議にはおよそ3派いたと考えられます。なんとなく定番の御用会議とは異なり、今回に関しては厚労省事務局の方針(決定)は揺らいでいだ可能性は有ると見ています。厚労省的には統合医療の保険医療への組み入れは公費医療費の増大をもらたす懸念は大きかったと思いますし、一方で総選挙で圧勝した民主政権の意向を無視するわけにもいかないです。両睨みでの対応を行っていたんじゃないかです。

推進派は当初は与党の後押しがありましたから、統合医療各派の結束がなされていたと見ています。つまり現代医学に対して統合医療と言うジャンルが存在し、これを保険診療体制に組み込んでしまう目論見です。この路線で当初はゴリゴリ押していた形跡ではなかろうかです。これに対し疑問派は統合医療は一つのジャンルでなく、種々雑多の体系も治療思想も異なる治療法の総称に過ぎない事を指摘したと見ます。

一つの分岐点は山口のホメパチ信者助産師によるVitK不投与事件かと思われます。あの事件でホメパチに対する世論の風当たりが猛烈に吹き荒れました。疑問派は日本学術会議からのメッセージを日医と共に出し、ホメパチの牙城である日本助産師会でさえ、ホメパチの助産業務への使用を中止するように勧告せざるを得ない立場に追い込まれます。

統合医療界において、勢力も、資金力も、政治力も最大であり、主導的な立場であったと見られるホメパチへの逆風は、他の統合医療各派の動向に大きな影響をもたらしたと見ます。ごく簡単には、それまでホメパチ主導である程度の結束を保っていたのが、ホメパチと歩調を合わせていたら同類と見なされてしまうです。そのため距離を置く事に腐心していったんじゃないかです。この時点で「一つの統合医療」の主張は崩れ、単なる総称の疑問派の主張に同意せざるを得なくなってしまったんじゃないかです。

これは統合医療保険診療に組み込めるかどうかもありますが、組み込まれなくともホメパチと同類項と見なされると現実の商売に大きすぎる支障を来たしてしまうです。こうやって結束が崩された統合医療推進派は疑問派に各個撃破される状況下に曝されざるを得なくなり、結論として、

 「統合医療」は多種多様であり、かつ玉石混淆(ぎょくせきこんこう)とされている。また、現時点では、全体として科学的知見が十分に得られているとは言えず、患者・国民に十分浸透しているとは言い難い。

 このような状況下で「統合医療」を推進していくためには、患者・国民の信頼を得ることが重要であり、まずは、安全性・有効性等が適切な形で確立されなければならない。特に安全性の確保ができない「統合医療」を患者・国民に提供することは適当でない。

推進派は玉石混交から抜け出すためのハードルも飲まざるを得なくなり、

統合医療」のエビデンスについては、ランダム化比較試験(RCT)のように、よりレベルの高いエビデンスが、より多く集積されることが望ましい。一方で、必ずしも全てがランダム化比較試験(RCT)による必要はないのではないかという意見もある。考慮できるエビデンスとしていくつかの段階があるとされているところ(参考;表4)、収集した科学的知見を情報発信する際には、そのエビデンスレベルを明示する形で行うべきである。

RCT以外の評価法も存在する事を残したのが精一杯の抵抗であったかと読めます。さらに推進派はコクランライブラリーの結果を論点整理に掲載せざるを得なくなったのも譲歩と私は見ます。コクランライブラリーの結果をグラフで引用しておくと、

元数値の表も出しておくと、

治療法 効果あり 効果なし 未確定 研究なし
4 1 25 0 30
漢方 0 0 3 0 3
音楽療法 0 0 11 2 13
ホメオパシー 0 0 9 0 9
エクササイズ 0 0 9 0 9
マッサージ 1 0 6 0 7
イチョウの葉エキス 0 0 5 0 5
ニンニク 0 1 2 0 3
ラクゼーション 0 0 0 2 2
瞑想 0 0 2 0 2
ヨガ 0 0 1 0 1
太極拳 1 0 0 0 1
エキナセア 0 0 1 0 1
アロマテラピー 0 0 1 0 1
アーユルベーダ 0 0 1 0 1
6 2 76 4 88

やたらと未確定が多いですが、これぐらいの権威の評価で「効果あり」を、これから個々の統合医療各派は示せぐらいの意味と私は受け取っています。それまでは「棚上げ」と言うところです。 それにしても政治に振り回されたもので、民主党がマニュフェストに採用して鳩山元総理が導入方針を明らかにしてから、
  1. 鳩山元総理は普天間問題で迷走の挙句、辞任
  2. 菅元総理は、




  3. 野田前総理は、2人の総理の負の遺産を背負い込んだ末に、消費税アップだけなんとか通して辞任、解散総選挙
それでもたいした物で、なんだかんだで統合医療問題は民主政権を通じてやっていた訳です。さ〜て、安倍総理はどうするのかな? この総理は教育とか、憲法とかに火種を抱えているわけで、その上で統合医療を蒸し返されるでしょうか。アベノミクスが成果を収めた上で、次の重要課題として統合医療問題を持ち出されれば大変ですが、安倍総理の次の優先事項は教育と見たいところです。これで当分話は終わりかなぁ。