特定非営利活動法人日本助産評価機構

この組織の存在は琴子の母様の私がおもう「助産所評価説明会」への不足点で知りました。名前からして、てっきり例の公益財団法人日本医療機能評価機構のグループ組織かと思い、助産所も可哀そうだと正直なところ同情しましたが、どうもそうでないようです。探してみると、うろうろドクター様が出来た時の2009.3.11付CB記事を保存されておりました(うろうろドクター様も仕事が早い!)。

助産所の第三者評価、来年度にもスタート
3月11日13時3分配信 医療介護CBニュース

 NPO法人(特定非営利活動法人)日本助産評価機構(恵美須文枝理事長)は、助産所の安全確保対策の実施状況などを中立的な立場から評価する取り組みを始める。医薬品の管理体制の整備状況など70項目前後を評価する見通しで、現在、機構内で評価基準や評価体制の具体化を進めている。これらが決まり次第、試験運用をスタートし、来年度内の本格運用を目指す。

 日本助産師会の岡本喜代子副会長が、このほど開かれた「中小医療機関における患者安全のためのシンポジウム」で明らかにした。それによると、第三者評価は当初、助産師会が実施する方向で検討していたが、大半の助産所助産師会に所属しているため、中立性を担保する観点から同機構への移管を決めたという。

 医療界での第三者評価の取り組みとしては、日本医療機能評価機構による病院機能評価があるが、厚生労働省によると、助産所を中立的な立場で評価する試みには前例がない。

 岡本氏や同機構によると、この第三者評価は、助産所によるサービスの質向上と共に、利用者への情報提供につなげることが狙いで、病院などが開設するいわゆる「院内助産所」は対象外。

 現段階では、助産所の管理者らによる「評価チーム」が実際に助産所を訪れ、項目ごとに「A-D」の4段階で評価する方向で検討している。各助産所への評価は、同チームによる評価結果を踏まえて「評価委員会」が最終判断する。評価委員会には助産師や助産教育の関係者、一般有識者ら10人程度が加わる見通しで、同委員会が適格と認めた助産所に「認定証」を交付する。認定期間は5年。

 感染防止対策や医療機器の保守点検、医薬品管理など安全確保のための取り組みを特に重視するといい、これらに関しては全項目で最高の「A」評価の取得を求める。

 同機構では、評価基準などが固まり次第、説明会を開き、具体的な評価手順や事前提出が必要な資料などを明らかにする方針だ。

色々書いてありますが、今日はシンプルに絞って

  1. 三者評価は当初、助産師会が実施する方向で検討していたが、大半の助産所助産師会に所属しているため、中立性を担保する観点から同機構への移管を決めたという。
  2. 現段階では、助産所の管理者らによる「評価チーム」が実際に助産所を訪れ、項目ごとに「A-D」の4段階で評価する方向で検討している。
  3. 感染防止対策や医療機器の保守点検、医薬品管理など安全確保のための取り組みを特に重視するといい、これらに関しては全項目で最高の「A」評価の取得を求める。

この辺だけサラっと書いときます。琴子の母様もシリーズで調べられる予定のようですから、あんまり邪魔したら悪いですし。


三者評価

この評価が助産師会でやるのが当初の予定であったのはCB記事からして間違いないでしょう。なぜにそんな企画が出てきたかは定かではありませんが、なんか理由がきっとあるのでしょう。ただ助産師会が評価したのなら、医師会が診療所機能評価をやるようなもので、手前味噌批判がさすがに内部で出たのかもしれません。まあ、医療機能評価機構の評判は悪いですが、あれは確かに第三者に値する組織とは言えるからです。CB記事で気になった表現は、

    中立性を担保する観点から同機構への移管を決めたという
移管と言う事は助産師会にもともと母体になる組織なりがあった事になります。そうでなければこういう表現は用いられません。ここについては、「助産所評価ハンドブック」 2011年2月26日版(以後ハンドブックとします)にはこうあります。

日本助産評価機構は、社団法人日本助産師会、社団法人全国助産師教育協議会、日本助産学会の3団体の発起により、2006(平成18)年8月に設立され、2007(平成19)年1月17日に成立した特定非営利活動法人です。

なるほど日本助産師会、全国助産師教育協議会、日本助産学会の3団体の肝煎りで2006年8月にまず作られ、これが4ヵ月後の2007年1月にNPO法人となったと解釈して良さそうです。2007年にNPO法人となってから準備を進め、2009年7月、つまりNPO法人になって1年半からしてからCB記事になり、ハンドブックに

助産所評価は、2010年2月から実施されています。

CB記事より早く開始されたようです。まとめておくと、

年月 経緯
2006年8月 助産評価機構が助産師会、助産師教育協議会、助産学会の肝煎りで設立される
2007年1月 NPO法人取得
2009年7月 CB記事に「来年度内の本格運用を目指す」とされる
2010年2月 おそらく評価機能事業始まる


こうやって見ると最初からNPO法人取得を目指していたようにも見えますが、それはそれで問題ありません。私が気になったのは、2006年8月に設立して評価事業が始まるまでの準備期間が3年半ぐらいかかっている事です。3年半の準備の末に出来上がった評価基準の話は後に回しますが、それよりその間の資金繰りはどうしていたのだろうです。

とりあえず本拠地(事務局)ぐらいはいるでしょうし、事務職員、準備委員とか役員への報酬も必要です。いくらNPOでも運転資金は必要と言う事です。でもって本拠地ですが助産機能評価HPより、

東京都台東区鳥越2-12-2 日本助産師会館3階

家賃や光熱費の関係が気になりますが、やはり助産師会からの「寄付」となったのでしょうか。ちょっと気になって確認してみたのですが、

団体名 事務局
全国助産師教育協議会 日本助産師会館 3階
日本助産学会 日本助産師会館 3階
日本助産師会 日本助産師会
日本助産評価機構 日本助産師会館 3階
このうち日本助産学会は2011年11月に助産師会館から移転しております。それでも2011年までは助産師会館に設立3団体と助産機能評価機構が同居し、なおかつそのうち3つは同じフロアにおられた事がわかります。その方が人を集めるのにも便利であったろうと思いますが、運転資金面でも大きな役割を果たしていたのではなかろうかと推測します。でもって、
  • 中立性を担保する観点
  • 三者評価

まさか「第三者」とは助産師会、助産師教育協議会、助産学会の「三者」の事じゃないでしょうねぇ。仄聞するところではこの「三者」はかなり密接な御関係にあられると聞いてはいますが・・・まあ、世帯が小さいので仕方がないのかもしれません。


機能評価

3年半の歳月を傾けて、検討に検討を重ねられた評価項目です。これもハンドブックにあるのですが、まず評価基準です。

6章からなる「基準」及び、基準に係る細則・解釈・定義等の「解釈指針」で構成され、助産所として満たすことが必要と考えられる要件及び助産所の目的に照らして助産実践活動等の状況を多面的に分析するための内容を設定しています。

医療機能評価機構のものをチラッと見たことがありますが、あれは凄かったと思っています。流し読みするだけでも読みきれない多彩な項目に満ち溢れていました。助産機能評価も「6章」もある大部そうな気配があります。ただ評価結果が少し気になって、

評価基準に「適合している」、「適合していない」の2 区分で判断します。
評価基準に「適合している」と認めるには、各基準がすべて満たされていなければなりません。
「適合していない」場合は、適合しない理由に対する改善報告書の提出を求めます。

2009年のCB記事段階では「項目ごとに「A-D」の4段階で評価する」としていましたが、検討の結果「適・不適」の二段階評価に変わったようです。シンプルでわかりやすいですが、各基準満点が合格の条件となってますから、厳しくなったのか、優しくなったのかは「???」です。ではでは、ドト〜ンと全項目を一挙公開と思ったのですが結構な量があり、

ここへのリンクに留めます。とても引き写せるような代物ではありません。たぶん医療機能評価機構をかなり意識していると感じるのですが、かなりの力作だと思います。私だって評価する時は評価します。たとえば自宅分娩関連のところだけ引用しておくと、


評価基準 解釈指針 確認事項
自宅分娩等、在宅支援を行う場合の安全が確保されている。 助産所で、在宅支援が可能な妊産婦の基準を設けており、それに基づいて妊産婦の選択をしている。 在宅支援が可能な妊産婦の基準が記載された資料
自宅分娩を扱う場合、後方支援の医療機関が確保されている。 後方支援の医療機関、連絡方法の一覧表
自宅分娩を扱う場合は、分娩時に協力する助産師が確保されている。 分娩時に協力する助産師の一覧表
在宅支援を行う際に、施設利用者の安全確保のための体制を整えている。 在宅支援の際、助産所運営に支障が生じない体制の整備がわかる勤務表など
他施設へ紹介する妊産婦・新生児の転院や搬送の手順が整っている。 他施設へ紹介する妊産婦・新生児の転院や搬送の手順書がある。 搬送の手順が記載された資料
妊産婦・新生児の搬送について、搬送後の評価(搬送の是非の判断、及び、時期の判断、妊産婦等への対応、搬送手続きなど)を行っており、その記録がある。 搬送後の経過及び評価の記録

他施設へ紹介した事例の一覧表


自宅分娩自体は安全性の面から私は評価していませんが、項目設定としては妥当ではないかと思います。


実績

実際の審査状態については縁がないので触れません。そいでもって料金ですが、これもハンドブックにあり、

申請前年1月〜12月の分娩件数が約60件未満の場合
基本費用25万円+分娩件数に応じた5万円+消費税=31万5千円
※ 本機構の会員でない場合は、さらに1年間の会費を加えた額となります。

おおよそ分娩1回分ぐらいの料金でしょうか。高いのか安いのか微妙な金額ですが、2010年2月からの公表されている合格施設数です。これ以外にもまだ未公開分があるのかもしれませんが抜き出して見ます。

Date 実績
2010年11月3日 適格認定証を授与しました(第1号)
2011年2月 適格認定証を授与しました(第2号)
2011年10月 適格認定証を授与しました(第3号)
2012年10月 適格認定証を授与しました(第4号)


これ以外に大学院が1校のみあります。これはハンドブックにあるのですが、

機構の助産所評価に要する期間は、別紙「評価のプロセス」に記載のとおり、評価実施の決定時から評価報告書確定までに、評価結果に対する異議申立がなされる等により長期化した場合には1年6ヶ月、異議申立がなされなかった場合においても1年の期間を要することから、機構の評価を受けようとする助産所は、機構に対し、評価を受けるべき期限から1年6ヶ月を遡った時点までに、評価の申請を行うものとする。

助産機能評価が始まって3年ですから、現在審査中の分がドカッと出てくる可能性はあるとしておきますが、それでも直感的に少ない感じがしないでもありません。審査中や審査待ち、または不合格となった助産所の数については情報公開されていないようなので、見えている情報だけではあまり応募者が多そうな感じがどうしてもしません。ついでに言えば助産機能評価HPのトップページに

2012年11月06日 ホームページをリニューアルしました。

それでも仮に少ないとしても助産所を非難する気にはあまりなれません。審査項目一つ一つを満たすのは必ずしも困難とは言えませんが、あれだけの項目数になれば審査準備に相当な仕事量を要します。たぶんお手本にしていると考えられる医療機能評価機構の審査を受けた病院の状態からして、かなりの期間が審査準備に忙殺されると類推されます。

うちも診療所なのでなんとなく判るのですが、そういう本業以外の仕事が増えるのは職員は歓迎しません。つうかハッキリ言って忌避されます。いくらトップがその気になっても職員が動いてくれないと審査に応じようがありません。下手に突撃すると辞職されかねません。そりゃ、職員にとっては余計な仕事が増える上に、それで給料が増えるものでもないからです。

経営者にしても「審査対策手当」を大盤振舞までして取得したいかと言えば、回収の目途が殆んどないのはすぐに計算できます。ある程度、前向きに考えたとしても、審査項目の中で自分のところで弱点となっているところを、「審査なんか受けず」に、この際整備しておこうぐらいが良いところではないでしょうか。その程度なら殆んどロハで出来ます。それ以外の余計なオカズにカネと精力を費やすのは零細規模のところでは死活問題になりかねないの判断です。そういう職員への強制力は病院クラスと診療所では力関係が相当異質です。


だから医療機能評価機構も診療所には手を出さないのかもしれません。作ったところで応募する診療所の需要なんて「商売」として期待できないの計算です。とはいえ助産機能評価となると、そもそもマーケットは小さいですし、その上で開業助産所を外すとマーケットはさらに小さくなります。小さくなるというよりマーケットはゼロに近くなります。そうそう合格のメリットは、助産所評価の御案内と言うパンフレットに記載されていますが、

助産所評価基準に適合していることを示す認定証が交付され、認定マークの使用が認められます。機構は適格認定を発表して広く社会に知らせます。また「助躍所責任保険」加入保険料の減額を受けることがでぎます

保険料がどれほど減額されるか詳細は不明ですが、医療機能評価機構よりある意味公平な具体的なメリットがあります。ただこれだけのメリットではなかなか踊ってくれないようです。まあ、元祖の医療機能評価機構も受審希望病院の減少に苦しんでますから、どうこれを乗り越えていくかでしょう。