ハゲへの理不尽な扱い

ハゲてしまう事はその殆んどが本人の責任ではありません。どっちかと言うと遺伝的な問題の方が多いと思っています。ちなみに私は父方がハゲる傾向があり、母方はハゲない傾向があります。これも実は複雑で、曽祖父母の代まで遡るとミックスが色々あってなんとも言えない気はしています。今のところ、白髪は目立ってきていますが、ラッキーな事にハゲるまで至っていません。ちょっと薄くなってる気もしないでもないですが、なんとか頑張っているの感じでしょうか。

私の事はともかく、男性への最大の侮蔑の言葉としてハゲは厳然と存在します。たとえば2/2付朝日新聞ですが、

「ハゲ」と言われ平手打ち 神奈川の教諭、生徒16人に

 神奈川県小田原市教育委員会は2日、市立中学の50代の男性教諭が生徒から「死ね」「ハゲ」などと暴言を吐かれたことをきっかけに2年生の男子生徒16人を平手打ちする体罰があったと発表した。教諭は生徒や保護者に謝罪、当分の間は教壇に立たないという。

 市教委によると、1日午後の数学の授業に男子生徒らが遅れてきたため、教諭は「早く入れ」と促したが、複数の男子生徒が「うるせえ」「ばか」などと言い、笑い声も起きた。教諭は発言した生徒を問いただしたが名乗り出ないため、遅れてきた男子生徒16人全員を廊下に正座させた。再度、ただしたが名乗り出る生徒はなく、教諭は「卑怯(ひきょう)じゃないか」と、16人全員を平手打ちしたという。

 授業の後、教諭が自ら校長に報告した。「体罰がこれだけ報道されているのに申し訳ない」と反省しているという。教諭はこれまでも生徒から「ハゲ」などと言われることがあり、「差別はいけない。言ったことの責任を持たなければならない」と諭していたという。

この教師の普段の言動を知る由もないので、その点はなんとも言えませんが、最後に教師の理性を吹っ飛ばしたのが「ハゲ」であったろうぐらいは推測できます。それぐらい侮蔑語としてのハゲは効果的なものであるとの傍証ぐらいになります。男性に対してハゲと言葉を投げつけるときには、相手が理性を失うぐらい逆上する事さえありうるのは、まあ常識です。少なくとも心に怨念ぐらいは蓄積させると思っています。


ハゲへの侮蔑は男性同士でも強烈ですが、女性からの評価もまた低い現実があります。女性が結婚・恋愛相手を選ぶ時に外見上のマイナス点として、

    チビ、デブ、ハゲ
言い切ってしまうとこの3つのいずれかがあるだけで、評価は地を這ってしまうです。もちろん必ずしもそれで終わりという訳でなく、内面的なものの評価との総合にはなりますが、外見だけで男性は大きなハンデを背負わざるを得なくなるです。最終的に外見上のハンデをどこまで挽回するかの立場に、否応無しに最初から置かれてしまうぐらいのところでしょうか。

さらにこの3つのうちでさらに評価の低いものはどれかの質問を大昔に一定数(つうても片手と少し)の女性にした事があります。チビについては、自分の身長との相対問題もあり、極端な差でなければ案外許容範囲は広そうな感触でした。男性が仮に160cm足らずであったとしても、女性が150cm足らずであるのと170cm近くあるのとでは当然評価が変わります。

そうなると残るのはハゲとデブが残ります。デブもまた程度問題があるのですが、これはチョット置いといて、どっちがより嫌な条件かと聞いてみました。どっちも嫌だとの即答でしたが、あえて当時流行っていた(・・・と思う)「究極の選択」として聞いてみました。答えは誰もが同じで、

    デブの方がまだマシ
でもって理由もほぼ同じで、
    デブはまだやせる可能性があるが、ハゲは無理
実に合理的と言うか、論理的な答えに感心した記憶があります。当時、少々腹に貫禄がついていた私は「可能性」に対しての努力に励もうと決意したものです。しっかし、そこまで嫌がられるかなってところです。


さらにの話があります。チブ、デブ、ハゲの人は誰しもそれなりにコンプレックスをお持ちです。コンプレックスに対し開き直る心境までに達すれば良いのですが、なかなかそこまで悟りを開くのは容易ではありません。ましてや独身で恋愛相手を探していたら難しいものがあります。そこで弱点隠しを試みられる方はおられます。チビならシークレット・シューズの類を使うのはありですし、ハゲならカツラとか植毛とかが思いつきます。デブはお手軽にはどうしようもないのでダイエットです。

ここでその努力が露見した時のリアクションに著しい差が出ます。デブはダイエット行為を貶される事はありませんし、成功でもしようものなら称賛されます。失敗してもせいぜい軽い笑い話で片付けられます。しかしチビのシークレット・シューズはかなり評価を落とします。でもってハゲのカツラは猛烈な悪評になります。ハゲ以上の罵倒語として「カツラ」が使われるのは珍しいとは言えません。

不条理であるのは理性で判るのですが、感情としてそういう評価が横行するのが現実としか言い様がありません。ハゲはハゲだけで極めて低い評価を問答無用で付けられ、さらにハゲを隠そうとする行為が露見すると、さらに低い評価がなぜか付けられてしまうです。あえて理由付けすると、ハゲと言うウィークポイントを隠蔽するような奴はなおさら許されないみたいな感じでしょうか。誠に理不尽そのもののお話です。あえて表にしなくとも良いようなものですが、

チビ ハゲ デブ
コンプレックス 背が低い事 はげている事 太っている事
欲しいもの 身長 毛髪 減量
対策 シークレット・シューズ カツラ、植毛 ダイエット
対策の成功 ばれない事 ばれない事 減量
対策が失敗した時 なぜか下がる 下手すると人格まで疑われる せいぜい笑い話
対策が成功した時 称賛


こうやって見ると女性の究極の選択の合理性が浮き彫りになります。チビとハゲは言わば不可逆性のハンデですが、デブは可逆性のハンデであり、克服すれば称賛さえ得られるです。一方で不可逆性のハンデを持つ者は持つだけでマイナス点、さらに隠そうとする行為がばれるとさらにマイナスを喰らうリスクを背負う事になっているとしか言い様がありません。欠点を隠そうとする姿勢への反感とするにも、ハゲのカツラに対する反応は尋常とは思えません。


見た目に対する生理的な不快感情は、生理的であるが故にコントロールが難しいと言えばそれまでです。ハゲ、チビ、デブ以外にも肉体のハンディキャップに対する反応はこの世に一杯あります。えらそうな事を書いてはいますが、私も気に入らない奴がたまたまハゲなら、「あのくそハゲが・・・」と内心毒づく事があるのは白状しておきます。これも誤解を招きそうなので補足しておきますが、相手がハゲであるだけでは「あ、禿げてる」以上の感情的反応は起こりません。身体的特徴に対する反応に留まります。

これが何らかの理由で憎悪を燃やす対象になれば、「あのくそハゲが・・・」に変わります。この辺は同性なので、女性とは感覚が相違する部分はある気もしています。まあ、女性も恋愛対象として考えるか否かで変わるはずですが、男性の場合はあんまり恋愛対象にしませんからね。それでもカツラがばれた時には、やはり軽侮の感情がどこからか何故か湧いてきます。理由はどう考えても不明です。別にその人物がカツラを被ろうが、被ろまいがまったく関係しない立場にあるにも関らず、あんまり良い感情は出てこないのです。

これはそういう風に刷り込まれてきた結果なのでしょうか、それとも何か深い理由があるのでしょうか。世の中には思いもかけない端緒があって、これが文化的に定着してしまい、さらに元の理由が不明になっている事は結構あります。とくに女性が恋愛対象としてのハゲを理不尽なまでに嫌悪するのは、何か太古の記憶によるDNAの作用でもあるんかしらんと思ってしまいます。

私もハゲたら無条件に罵られるんだろうなぁ・・・年齢的にも危ないと言えば危ないので、そうなった時には甘受しなければならないのが世の定めなんでしょう。幸い既婚者なので恋愛対象とは無縁なのが幸いですが、本当にこの世のハゲに対する扱いは別格的に理不尽だと思っています。