これについては新聞社自身が関る事ですから、記事情報はある種の統一見解と見て良いかと判断します。
新聞協会の軽減税率を求める声明より、
日本新聞協会は、新聞、書籍、雑誌には消費税の軽減税率を適用するよう求める。
知識への課税強化は国の力を衰退させかねないほか、欧州では民主主義を支える公共財として新聞などの活字媒体には課税しないという共通認識がある。民主主義社会の健全な発展と国民生活に寄与する新聞を、全国どこでも容易に購読できる環境を維持することが重要である
マスコミには批判的なスタンスを取る事が私は多いですが、主張には理はあると思います。理はあるとは思うのですが、軽減税率の適用範囲はどうなんだろうの疑問は出てきます。新聞協会の声明では、
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新聞、書籍、雑誌には消費税の軽減税率を適用するよう求める
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知識への課税強化は国の力を衰退
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活字媒体には課税しないという共通認識
紙媒体に記された活字媒体も知識になりますが、それ以外の電子媒体に記された活字媒体、さらには音声や画像・動画などの課税への整合性の説明が欲しいところです。読み様によっては紙媒体の活字媒体のみに知識の源泉があり、それのみの軽減税率適用を訴えているようにも見えます。そういう解釈で良いのか悪いのかです。
1/16付読売新聞からです。
また、同協会は同日、全国の成人男女1210人を対象に昨年11月に行った軽減税率に関する面接調査の結果を公表した。それによると、8割を超える回答者が軽減税率の導入を求め、そのうち4分の3が新聞・書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいる。
調査によると、軽減税率について「導入すべきだ」と回答した人は62・3%にあたる754人。「どちらかというと導入した方がいい」と回答した人(262人)と合わせると、8割を超える1016人が導入に肯定的だった。
サラッと読むと手前味噌の調査とは言え新聞・書籍への軽減税率適用を求めていると感じます。ただなんですが、この調査にはバイアスがあると考えます。記事にある調査のさらなる前提が抜けている気がします。何が抜けているかと言うと、
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新聞・書籍は消費税の特別扱いをする対象として相応しいか?
質問として新聞・書籍は他の品目とは別格にし、とくに有用性を求めて軽減税率の適用が必要かどうかのアンケートが必要と思います。それこそ電気・ガス・水道・食料品などと同格ないしは別格で、新聞・書籍を扱うのが適当かどうかです。そうではなく単に新聞・書籍が消費増税により値上げになるが、それを歓迎するか否かなんて質問にどんな意味があるのか疑問です。
読売記事だけではわかりにくいので、記事が引用した調査のオリジナルを確認してみます。助かった事に新聞協会HPに調査結果があります。公表されている範囲では質問は2項目で、
- 生活必需品などの税率を低くする軽減税率を日本でも導入すべきだと思いますか。導入すべきではないと思いますか。
- 日本でも軽減税率が導入された場合、生活必需品と同じように新聞・書籍も軽減税率の対象にするべきだと思いますか。対象にするべきではないと思いますか。
生活必需品などの税率を低くする軽減税率を日本でも導入すべきだと思いますか。導入すべきではないと思いますか。 | 回答 比率 |
賛否率 | 日本でも軽減税率が導入された場合、生活必需品と同じように新聞・書籍も軽減税率の対象にするべきだと思いますか。対象にするべきではないと思いますか。 | 回答 比率 |
賛否率 | 全体の 賛否率 |
どちらかというと導入しない方がいい | 5.0 | 16.0 | * | * | * | 36.7 |
導入すべきではない | 5.3 | |||||
わからない | 5.7 | |||||
導入すべきだ | 62.3 | 84.0 | どちらかというと対象にしない方がいい | 9.7 | 24.7 | |
対象にするべきでない | 10.6 | |||||
わからない | 4.3 | |||||
どちらかというと導入した方がいい | 21.7 | 対象にするべきだ | 42.1 | 75.3 | 63.3 | |
どちらかというと対象にした方がいい | 33.2 |
読売記事と照らし合わせて読み直すと、
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8割を超える回答者が軽減税率の導入を求め
質問は二段になっているのは上述しましたが、この軽減税率を求める者のうち
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そのうち4分の3が新聞・書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいる
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63.3%
この調査結果の考え方ですが、とりあえず2/3が多いか少ないかの比較がありません。他の生活必需品の軽減税率導入の必要性の相対比較です。これがないと多いのか少ないのか比較しようがありません。たとえば食料品と較べてどうなのかみたいな比較です。もう少し言えば、仮に軽減税率を導入するにしても優先順位と言う考え方が出てきます。
優先順位は税収への影響が現実的に大きいでしょうが、たとえば新聞・書籍クラスの他の生活必需品と選択になった時にどちらを選ぶかみたいな状況の時に判断材料になります。新聞・書籍の2/3より大きな必要性があるものがあれば、「民意」として優先されるのはありえても良いと考えるからです。
2/3ですがもう一つ見方があります。データは絶対比較しか出来ないですが、それなら果たして2/3のうちどれほどが強く新聞書籍の軽減税率を望んでいるかです。質問は二段なのですが良く見て欲しいところは、最初の生活必需品への軽減税率適用に賛成するものへの項目です。
- 導入すべきだ
- どちらかというと導入した方がいい
そう考えると新聞・書籍への軽減税率適用を「対象にするべきだ」とした回答者の母数は、その前の質問である「導入すべきだ」と強く答えた人間にニア・イコールと解釈できるんじゃないかの見解が出てきます。もしそうなら、少し表の見方が変わります。
生活必需品などの税率を低くする軽減税率を日本でも導入すべきだと思いますか。導入すべきではないと思いますか。 | 回答 比率 |
日本でも軽減税率が導入された場合、生活必需品と同じように新聞・書籍も軽減税率の対象にするべきだと思いますか。対象にするべきではないと思いますか。 | 回答 比率 |
全体の 賛否率 |
どちらかというと導入しない方がいい | 5.0 | * | * | 36.7 |
導入すべきではない | 5.3 | |||
わからない | 5.7 | |||
どちらかというと導入した方がいい | 21.7 | どちらかというと対象にしない方がいい | 9.7 | |
対象にするべきでない | 10.6 | |||
わからない | 4.3 | |||
どちらかというと対象にした方がいい | 33.2 | 27.9 | ||
導入すべきだ | 62.3 | |||
対象にするべきだ | 42.1 | 35.4 |
こうやって見直すと新聞・書籍への軽減税率適用は、
- 1/3は望まない、わからない
- 1/3はどちらかというと望む
- 1/3は強く望む
それと個人的に無茶苦茶気になったのは、新聞協会の調査が新聞と書籍を抱き合わせにしてアンケートを行っている事です。やはりこれは分けるべきものと私は考えます。新聞と書籍が分離できない一体のものとは思えないからです。軽減税率の適用として、書籍と新聞は別になるケースも十分に考えられます。たとえば教科書とかです。むしろその方が私は自然かと思います。
まさか新聞単独でアンケートを取ると「思わぬ公表できない結果」になる事を懸念されたのでしょうか。それとも新聞協会の調査は公表されている2項目のアンケートだけではなく、他の項目もあり、そこには表に出せないデータが埋もれているのでしょうか。捻って考えれば書籍と抱き合わせてもこの程度であるとの見方もできます。色んな事を考えさせてくれる楽しい調査結果でした。