企画:理想の研修病院とは? その2

皆様から御意見を頂いてまとめようとしたのですが、やはり難物です。単純には、とおりすがる様とtadano-ry様の

  1. 外科系でいうところの、いわゆるHigh volume centerですよね
  2. 一次〜三次までの救急症例が充実しており、総合診療的な色彩が強いこと

前々から言われている結論が無難です。さらにtadano-ry様の、

  1. 重要なのが競争相手、つまり同期の存在です

これを合わせると救急を積極的に行っている大病院が望ましいになります。軽症から重症までの様々な種類の症例を経験するには、そもそもの受診数が多い必要があり、さらに同期がそれなりに存在するには多くの定員を募集する必要があります。これは中規模以下の病院では難しくなります。とくに三次症例を実際に見たければ、バリバリの三次救急を行う病院でないと「送るだけ」の立場しか経験できません。

ただ研修医全員がそういう指向かと言うとそうでもないらしく、rijin様より、

 あまり例は多くありませんが、へき地医療のための人材育成に専念している小規模な研修病院もあります。研修プログラムも見事なまでに地元密着で、2年間でその地域の一通りを過不足無く経験できる仕組みができあがっており、年々歳々 brush upしています。

 これまた当然に、そういう病院は高機能な大規模病院ではありません。

当たり前ですがニッチな需要も存在し、研修医の指向と言えども一枚岩ではないぐらいに理解しても良さそうです。ここもなんですが、そういうニッチな需要がどれほどあるかは不明です。それこそ指向は多様で微妙と言うところでしょうか。

アメニティに関しては案外ポイントの意見もBugsy様からありました。考えれば当たり前で今や1/3が女性研修医の時代ですから、他の条件がある程度近ければ薄汚いより小綺麗の方が喜ばれて当然です。さすがにアメニティ重視だけで選択する研修医は多数派でないでしょうが、あんまり軽視すると「なぜうちは不人気なんだ!」状態に知らず知らずのうちに陥るみたいな感じでしょうか。

これはrijin様の意見ですが、研修病院側が打ち出させるカラーはもともとの病院のカラーの範疇に留まり、それが供給サイドの論理になるです。これに対して研修医側はそれこそ多様な希望を建前と本音の両方で持っており、需要側の論理としてあるぐらいでしょうか。需要と供給の関係はある程度の落差があり、これが人気不人気の差を大きく分ける原因になっているらしいぐらいは推測できます。


それとこれは私の古い古い経験にも少し合致するのですが、tadano-ry様と優駿様の意見です。

  • 単に教育熱心な指導医がいるという人的な面が強い場合もあります
  • うちのような病院では研修医への対応がほぼ各科に全権委任されており病院的にどのような研修をしているかなんて誰も把握していません。プログラムもあっても形骸化しています。しかしこんな病院がほとんど

医療に限らず指導者の人徳の影響は確実に存在します。とくに学ぶ時期には師匠をお手本にするのは誰しもですから、「あの先生の下で学べてよかった」はやがて「あの先生の下で学びたい」の評価となって広がっていくです。当然逆もまた然りで、良循環と悪循環のどちらに陥るかの要素として無視できないです。ここも医師としての技量が優秀と、指導者として優秀は必ずしも一致せず、さらに教える技量段階でも得手不得手もあり微妙なところです。


こういうものをひっくるめた上に「さらに」があります。現代日本の構図である「田舎 vs 都市」の綱引きです。上で指摘されたポイントがすべてスクエアであっても、もう一つ綱引きがある現実です。綱引きは前期研修医の獲得合戦に留まらない意見は元ライダー様が指摘されています。どれだけ前期研修医をかき集めても地域の医師数の増加にどれだけつながるかです。

まあ、前期研修医も集まらないような地域に医師は集まらないの意見が順当ですが、たとえば亀田です。亀田は田舎であっても研修希望者が殺到する象徴として良く例に使われますが、ほいでは亀田が存在する千葉県、もっと狭く千葉県南部の安房地域(南房地方)はどうなんだの話になります。詳しくは調べていませんが、そんなに多くはなかったはずです。ここも考え方として、

    必要条件:前期研修医が集まる
    十分条件:そこに定着するなんらかの理由(条件)
これぐらいの関係があるのかもしれません。十分条件は・・・長くなりそうなので一つだけ、これもtadano-ry様からですが、

特に市中病院に研修に出る医師はその病院に正式採用されることも視野に入れてますから、いくら研修医の待遇が良くても常勤医の待遇が悪ければ敬遠する傾向があります。

これも当たり前すぎる話で、研修医が終れば常勤医になるわけです。研修医はその病院での将来を指導医なり、他の常勤医の現状に見るわけですから、これ以上の「見学」はありません。いくら研修医としての待遇が良く、研修医として実りあるものが得られたとしても、常勤医として劣悪な状況に飛び込むのは喜ばれないと言った所です。

そうなるとこれも前から言われている話にしか行き着かないのですが、その地域に医師を集めたいと思うのなら、勝負は前期ではなく後期研修医ではないかです。後期となれば確実に将来を視野に入れてきます。言い様によっては前期で得た社会経験を後期の選択に活かすです。ただなんですが、後期の統計的資料が見当らないんですよねぇ。非公式のものですから、あんまり集計してないのかもしれません。


今週もブログを続けるにはチト厳しすぎる状態が続いています。申し訳ありませんが明日は休載にさせて頂きます。研修病院企画は継続にさせて頂きますので、宜しければ引き続き御意見を賜えれば幸いです。今のところは従来の見解を単に裏書した以上のものは出てきませんでしたが、少し違う見方が出てくれる事を「ほのか」に期待しています。良い意見があれば、「その3」としてまとめたいと思っています。