ちょっとした経験談と関連連想です。
一口に医師会と言っても実はシンプルなものではなく、神戸を例に取ると
この4つの医師会があります。これらは別法人であり、別組織です。財団法人改革が行われる前は、それでも規則上は上部組織に従属するという条項がありましたが、今後はそれもなくなります。でもって「お前はどの医師会に属しているか」ですが、全部です。医師会に入会するとは神戸ならこの4つの医師会に同時入会する事を意味します。政令指定都市以外なら区医師会はないはずですから3つ同時です。「なぜ」の疑問も当然出てくるとは思いますが「昔からそうなっている」で、そういう「きまり」になっているぐらいしか言い様がありません。それ以外の入会は事実上認められていません。その結果どうなっているかと言えば、御存知の通り、
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日医 → 都道府県医師会 → 郡市医師会 → (区医師会)
これだけでも複雑なんですが、別組織である事よりも実態的に一体の組織である事を医師会は強調します。別組織である建前を確認させておいてから医師会幹部に「では別組織である事を強調しても良いですね」としたら、それこそ満面に渋面を作って「そうだが、そうではない」の難解な説明が為されます。根拠は4つの医師会の同時会員であるからです。
それならわざわざ別組織にせずに、実質もそうであり、世間一般からもそう見られている一本化すれば良さそうなものです。実態は一本だがあくまでも別組織でも、さして問題は少ないとも言えそうですが、やはり弊害はあります。是非は別にして医師会は勤務医会員を増やそうの動きはあります。増やそうと言うより最終目標として医師の全員加入を構想しています。ここもあくまでも是非は別にしてですが、それをやろうとすれば別組織は大きなネックになります。
勤務医会員(通常はB会員以下がほとんど)であっても神戸なら4つの医師会への同時加入が必要です。入る時はまあ良いとして、勤務医には異動があります。異動すれば所属医師会のどれかを入り直す必要が出てきます。神戸市内であっても区が変われば区医師会の退会・入会が必要であり、神戸市外に異動となれば、郡市医師会の退会・入会が必要になります。県外なら県医師会も郡市医師会も必要です。やらなきゃ医師会ごと退会です。
単なる事務手続きに過ぎないと言えばそれまでですが、やはり面倒です。そのうえ医師会ごとに会費も異なります。これが一本化されれば同じ事務作業でも、勤務病院や住所の異動手続きだけで終わりです。そこまでしてなぜ別組織にこだわるかの合理的理由を知る事はできませんでした。何か理由があるのでしょうが、私如きでは理解は不能です。
ちなみにさらに笑うのは、法人改革後の会計上の都合により神戸医師会区支部も今度作られます。あくまでも会計上の都合の説明でしたが、外形上は区医師会と区支部が並立する状況が間もなく出現します。だからどうしたって程の事はないかもしれませんが、かなり奇怪な組織だと私は思っています。
医師会のシステムをなんに喩えるとわかり安いかと考えていたのですが、一番近いのは日本の行政システムの様な気がしています。国民は日本国民であり、都道府県民であり、市町村民だと言う事です。各自治体は原則独立しており税金も別々に払いますが、住民は一貫した行政制度にいると感じるわけです。単純に言えば基本は日本国民であり、その上で○○県人であり、△△市民みたいな感じでしょうか。
おそらく日医の組織感覚も、一番の基本は日医会員がベースであり、その上で○○県医師会員であり、△△市医師会員であり、私なら××区医師会員みたいなものです。日本国民がそれぞれの行政区に属しているのと同じように、医師会員も各レベルの医師会に属するみたいなものです。そういう意味で「日本人 = 日本国民」と同じような感覚で「医師会員 = 日医」の解釈でも間違いとは言えません。
ここまでは似ているのですが相違点もあります。自治システムは似ていますがかなり違います。喩えとして議会を出しておくと、日本の場合は、
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市町村議会 → 都道府県議会 → 国会
これは各レベルの議会が独立した直接選挙で選ばれるのもあり、また各レベルの議会の自治手法が必ずしもその上の自治手法と同じでないのもあると思っています。市議会や県議会でブイブイ言わせる能力と国政を司る能力は同じではないぐらいの理解でも良いかと思っています。
医師会の場合は理事なり日医代議員になりますが、
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郡市医師会 → 都道府県医師会 → 日医
飛び級がないのは直接選挙がないのが大きいと思っています。直接選挙があるのは郡市医師会レベルだけです。神戸なら神戸市医師会に対しても末端会員は直接選挙権はなく、かろうじてその下の区医師会だけにあります。これもあくまでも「かろうじて」であり、ここも実質的にはありません。
実質的に無い理由も単純で、私の属している区は総ざらいしても会員数は200人足らずです。そこから15人程度(だったかな)の理事を選出するとなれば、争うというより見つけ出す、ないしは頭数をそろえるお話になります。医師会理事と言っても、都道府県以下であれば手弁当のボランティアみたいなものであり、なれば本業への影響は必至だからです。なりたい人より嫌がる人の方が多く、様相として自治会役員の選出みたいなのになり、なんとか定数分の理事をそろえたら事実上そのまま承認です。
これは医師会ごとに違うかもしれませんが、定数分しか候補者がいなかったら、承認のための選挙すら行われないはずです。やるだけ手間ですから、そうなっても不思議とは思えません。
ではその上のステップにどうやって進むかと言えば、何期か続けるのが実績になり推薦されるです。ここは詳しくはありませんが、上からの引きもあるようです。それでも悪いとは思えませんでした。見ようなんですが、医師会業務をやりたい人間だけが選抜されていくシステムとも言えるからです。えらい寛大と思われるかもしれませんが、これは都道府県以下の理事は手弁当のボランティアが実態だからです。
本業を犠牲にしてまでボランティアでやりたい、もしくはやれる人間はそうは多くなく、そういう限られた人間を選出しないと医師会業務は回りません。あれって区レベルでも仰天するほど多忙です。本態的には都道府県以下の理事は自治会役員であり、やりたい人がやるものだと思うからです。それで結果的にもさして支障なく回っているかと思います。
問題は日医です。ここは国政同様に地方自治体感覚ではやれないところです。ここは違う種類の人材がやはり必要ではないかです。ここのシステム上の欠点は結果としても現れているかと考えています。
もうちょっと論を進めたかったのですが、時間が無くて申し訳ありません。機会があれば続編を書きたいと思います。