カクテルのお話

今日は閑話です。それとカクテルと言ってもカクテル大会のお話です。

お酒は好きなんですが、焼酎とビールがあんまり好きでなく、そのうえ水割りも好まない人なのでバーで飲むのが好きです。バーとなればカクテルでこれは結構好きです。行きつけのバーはマスターともう1人若手(と一応しておきます)のバーテンダーがいるのですが、若手の方がコンクールによく出場されています。勉強のためとマスターの方針もあるのでしょうが、結構出ている方じゃないかと思っています。

バーテンダーも聞くと2系統あるそうで、ホテル系とその他だそうです。当然その他の系列に属されています。どっちが上とか言うものではなさそうで、2系統ある理由を前に聞いたのですが、ハハハハ忘れちゃいました。仲が良いか悪いかも・・・忘れました。

でもってカクテル・コンペは割りとあるようです。大きな大会から小さな大会まであるのですが、一番大きいのは全国バーテンダー技能競技大会です。ホテル系はまた違うとも聞きましたが、勝ち上がると世界大会までつながる大きなものです。その若手バーテンダーが出場するのはその神戸大会です。神戸大会と言うより兵庫県大会なのですが、神戸で常に開かれています。神戸で勝てば次は関西大会で、その次が全国大会みたいなステップです。

さすがに最大の大会だけあってバーテンダー協会に所属していれば誰でも出れるわけではなく、さらに別条件の出場資格も必要だそうです。ヒョットして小さな大会に小まめに出場されているのも、そういう出場資格を得るためなのかもしれません。

ちなみに神戸のレベルがどれぐらいかなんですが、決して低くはないそうです。ただ全国まで勝ちあがろうと思えば関西では大阪勢がやはり強力で、最近チョット不振だとマスターがこぼしていました。ちなみにマスターは全国大会で最優秀賞を取ってまして、「あの時代に較べると・・・」的なお話は聞いた事があります。


全国バーテンダー技能競技大会ともなると競技はフルコースです。3部門の総合で争われるのですが、

  • フルーツカッティング
  • 課題カクテル
  • 創作カクテル
聞く所では3部門の得点配分はイーブンだそうです。課題カクテルとは決められたカクテルを作るものであり、創作カクテルはそのまま自分のオリジナルです。創作もショートかロングかの条件が毎年変わるそうですが、今年はショートです。この課題と創作はわかるのですが、フルーツカッティングはなんなんだと聞いた事があります。

フルーツカッティング自体は読んで字の如しで、要はフルーツの盛り合わせです。それは判るのですが、なぜにカクテル選手権の競技にあるのかです。つうのもバーに行って食べた事も見たこともあんまりないからです。これは若手のバーテンダーも良く知らないと言ってましたが、かつてはバーで定番のように出されていたんじゃないかぐらいでした。

今はどうかと聞いて見ると「おられますよ♪」と言ってはいましたが、突っ込んで聞くと「1ヶ月に1人いるかいないか・・・」だそうです。実はフルーツはもう良いんじゃないかの意見もバーテンダー協会にもあるそうですが、「これは欠かせない」の意見が強いそうで、今年もまた競技にあるというところのようです。フィギュア・スケートのコンパルソリみたいなものでしょうか。


課題カクテルなんてレシピが決まっているのですから、誰が作っても同じと思われそうなものですが、実際見るとなかなか面白いものです。これもフィギュアスケートに喩えるとショートプログラムみたいなものになります。バーテンダーはカクテルを作る動作も一つの見せ場ですから、それぞれがかなり個性的です。やたら大仰な人から、静かにテキパキまで色々あります。

今年はショートですから、シェーカーが出てくるのですが、これがまた面白いです。大会用のシェーカーがあって、これは1回に5人前作れる大型シェーカーです。なぜこれを使うのかも由緒も「???」なのですが、とにかく普段よりふた周りぐらいデカイものを使います。それと大会の時はメジャーを使わず、すべて目分量で作ります。でもって、5人分はキッチリ作ることが要求されます。理想はグラス5人分でピッタリです。

あれは足りているほうが良いのか、余ったほうが良いのかを聞いたら、余るのは減点対象だが、足りないのは論外としていました。大会では5つのグラスの横に余りを入れるカップまで用意されており、そこに並々と注ぐなんて事になれば大きな減点対象になるそうです。足りないを避けながら、余りを出来るだけ減らすのはなかなか微妙なところです。普段使わないシェーカーと言うのもミソのようです。


シェーカーも振り方一つで味が変わるほど繊細なものですが、このシェーカーがしばしば飛んで行くことがあります。まあ普段使うものより大きいので、緊張で勢い余ってみたいな感じです。飛ぶ理由は他にもあって、これも聞いた話ですが、カクテルによってはシロップも入るのですが、これをシェーカーに入れる時に少し外にこぼれるというのもあるそうです。

手際も競う大会なので、テーブル上に布巾の類はなく、またそこで拭いたりすると手際が悪いと減点になるので、そのままシェーカーを振ると手からすり抜ける感じです。これは若手バーテンダーに聞いたのですが、飛ばさないように少しそっと振ったら、審査で「シェカーの振りに勢いがない」とキッチリ減点になったそうです。なかなか厳しいものです。


創作カクテルは大会の華なんですが、これも難しいものです。カクテルもある意味「シンプル・イズ・ベスト」の側面はあり、かの有名なマティーニだって、基本はジンとドライベルモットです。そういうシンプルで美味しいものが定番になるのですが、シンプルな組み合わせはそれこそやり尽くされているです。そのためどうしても4種、5種の組み合わせになります。

多種の組み合わせでも優れたカクテルはあるのですが、なかなか新たな定番にはならないようです。若手バーテンダーも各種大会のたびに新たな創作カクテルを作っていますが、申し訳ないですが一度味見したら次に注文したものは殆んど無かったと思います。不味いわけではありませんが、「またあれを飲みたい」のレベルまでなかなか届かないとすれば厳しすぎるでしょうか。


それと非常に感心するのは大会運営です。演出が非常に行き届いているのです。競技参加者はガチですから、その快い緊張感も楽しめますが、競技以外の演出が良く出来ているです。集まった客を飽きさせない工夫が随所に凝らされています。あれは競技会だけを見せているのではなく、集めた客を楽しませるのも大きな目的だからと思っています。

入場客の少なからぬ部分が、行きつけのバーで前売り券を購入しています。つまりは普段の客と言うわけです。そうやって来てもらった客に「つまらない」と思わせると後の商売に響くです。チケットは結構高いのですが、そんなチケットをわざわざ購入して来てくれる客は普段の大事な客と言うわけです。収支はどうなっているかまで知る由もありませんが、あれだけ取っても良くてトントン、下手すると持ち出しになっている気もしています。

まあプロによる大人の大会ぐらいと評すれば良いでしょうか。今年も11月に大会がありますから楽しみにしています。