医師が新聞を読む率は高いか低いか

9/26付m3.comMR君・QOL君医療事故報道、「不満」がほぼ100%より、

なお、全国紙あるいは地方紙を自宅で購読しているのは、医師会員で約65%、医師以外の会員で約70%(Q1)という現状でした。

他の個所は論評するまでもないお話なので興味がある方はリンク先をどうぞ。さて今日の命題はこの購読率が高いか低いかです。参照資料は、

これから取ります。この調査は5年毎に行われており、現時点では最新調査になります。実はこの調査では購読率はわからないのですが、新聞を読む比率と新聞を読む時間がデータとして示されています。指標の定義がちょっと注意なので引用しておくと、

指標の定義

(1)行為者率

    ある時間幅(15分・6時間・24時間)に該当の行動を少しでも(15分以上)した人が、全体の中で占める割合。
(2)平均行為者率
    15分ごとの行為者率を基本単位として、ある時間幅(30分・1時間など)に合わせて、行為者率を平均化したもの。
(3)行為者平均時間量
    該当の行動を少しでも(15分以上)した人が、その行動に費やした時間量の平均。
(4)全員平均時間量
    該当の行動をしなかった人も含めた調査相手全体が、その行動に費やした時間量の平均。

新聞の行為者率

細かくまとめてあり、平日・土曜・休日、男女になっています。まず国民全体の行為者率(新聞を15分以上読んだ人の割合)をグラフにしてみます。

現在国民の約4割ぐらいが毎日15分以上新聞を読んでいる事になります。曜日毎の差は無いとして良いかと思われますので以下は平日データを示しますが、職種別のデータもあります。
勤務医なら勤め人にあえて分類できますが37%、開業医は自営業と考えると50%の行為者率になります。「購読率 = 行為者率」ではありませんが、まあ購読していれば読む率も高いぐらいは言えますから、国民全体、また勤め人・自営業者に較べると高率に新聞を読んでいそうであるぐらいは言えます。新聞の購読率にしろ行為者率にしろ、世代間の影響も確実にあります。これは集計が男女別なので2つに分けて示します。
作ってはみたものの見難いですねぇ。そこで2010年度分だけ表にして見ます。

世代 男性(%) 女性(%)
20代 13 15
30代 23 24
40代 41 40
50代 49 45
60代 68 66
70代以上 78 57

勤務医は20代後半から50代までが殆んどで、一方で開業医は50代以上と見る事も可能かと思います。開業医はおおよそですが60%以上の行為者率はあると見えます。一方で勤務医は40%切りそうな感じです。ここから考えると、
  1. 医師会員を開業医と仮定すると購読率65%は該当世代の平均に近い
  2. 医師会員以外を勤務医と考えると、購読率70%は異様に高い
勤務医の場合は「さらに」の可能性も考えられます。自分で購読していなくとも、病院が購読している新聞を医局なりで読む者が少なくないです。そうなると勤務医の行為者率はさらに高くなるとも考えられます。全体の行為者率から言っても、非常に高い率で新聞を読んでいる事が推測されます。開業医は自分で購読していないとまず読めないですからね。

とりあえずの結論としては、同じ業種、同じ世代に較べても医師は新聞への行為率(読む率)はかなり高いぐらいは言えそうです。商売としてみれば「お得意様」と出来そうにも思います。


オマケ:新聞の全員平均時間

全員平均時間とは読まない人も含めた平均の新聞を読む時間になります。ここで素朴な疑問なんですが、

世代 1995 2000 2005 2010 95-10
増減時間(分)
男性
10代 3 2 2 3 0
20代 11 8 6 4 -7
30代 23 13 10 10 -13
40代 29 21 14 14 -15
50代 41 31 23 20 -21
60代 49 49 44 33 -16
70代以上 51 56 51 51 0
女性
10代 3 3 2 1 -2
20代 9 7 4 4 -5
30代 16 13 8 7 -9
40代 24 21 16 11 -13
50代 28 28 24 16 -12
60代 32 36 29 32 0
70代以上 31 32 32 36 +4
全体 24 23 21 19 -5

1995年に較べて2010年は新聞を読む時間が減少した世代が多いのは一目でわかります。それはともかく、これだけ各世代で新聞を読む時間が減っているのに、全体では5分しか短くなっていません。直感的にトータルの減少時間が少なすぎないかの感触です。そこで世代間の構成比を確認してみます。
世代 1995男性 2010男性 1995女性 2010女性
NHK 動態 NHK 動態 NHK 動態 NHK 動態
10代 6.6 7.1 6.2 4.8 6.2 7.4 4.6 5.1
20代 7.5 6.9 7.3 5.4 7.3 7.5 5.2 4.8
30代 6.4 7.2 6.2 7.2 6.2 8.1 7.0 8.2
40代 7.9 9.1 7.8 6.6 7.8 9.0 6.5 7.8
50代 6.7 7.4 6.8 6.4 6.8 8.3 6.5 8.4
60代 5.3 6.9 5.8 7.0 5.8 6.8 7.4 9.0
70代以上 3.6 3.7 5.9 6.8 5.9 4.8 9.9 9.0

見難い表で申し訳ありませんが、NHKの調査と人口動態調査をあわせてみました。NHKのサンプルの構成比は人口動態調査の世代比率とそれなりにシンクロしています。それは調査として良いのですが、黄色の背景を付けた所を良く見て欲しいと思います。70台以上の人口比が1995年に較べて2010年はかなり増えています。これ自体は少子高齢化現象そのものなんですが、新聞を読む時間と言う点についても大きな影響を及ぼしています。 世代毎の読む時間と構成比率が判っていますから、これを世代毎の読む時間の合計時間に換算する事は可能です。グラフにすると、
これは男女合計のデータですが、
  1. 70代以上が14.2%から38.0%に
  2. 60歳以上で見れば37.7%から65.7%に
1995年では新聞を読む時間の総合計のうち6割以上が50代以下であったものが、2010年には60台以上が6割以上(ほぼ2/3)になっています。50代以下の読む時間の減少は大きいのですが、人口比率の増えた60代以上、とくに70代以上がその他の世代の読む時間の減少分をかなりカバーしている事が確認できます。これは高齢者ほど読む時間が長いので、統計上は読む時間の総合計の減少に歯止めとなっているです。


単純に少子高齢化減少を反映しているのに過ぎないのですが、素朴な疑問が判ってスッキリしました。それにしても、業種の中でも新聞を読む率がかなり高そうな医師に対する刺激的な記事は多いのは何故だろうと思ったりします。やはりある種の「読者サービス」でしょうか。あの手の記事も刺激には間違いありませんから、読者の関心をつなぎ止めるための商法と理解する事にします。