医療機能評価機構の定期ウォッチング その1

参照データは、

ここからです。今日のテーマは、
    会員数と会費収入
他も合わせてやるつもりだったのですが、ここだけで膨らんでしまったので絞ります。


賛助会収入

医療機能評価機構(機構)には賛助会なるものがあり、

会員種別 会費 該当者
A会員 50万円 各種団体・会社関係
B会員 30万円 医療機関・各種健康保険組合
C会員 2万円 教育機関の研究者等


こういう区分が為されています。会費は去年も同じです。そいでもって会員数の変動なんですが、
このうち2008年度から2011年度を表にしておくと。

年度 A会員 B会員 C会員 合計
2008 28 63 5 96
2009 26 54 5 85
2010 25 51 4 80
2011 25 45 2 72

ここで財務諸表には企業会員受取会費、病院等会員受取会費、個人会員受取会費と細かく収入を表示してくれています。後は割り算ですから、実際に会費を払った会員数が計算可能になります。これについてはもちろん正確なものでした。正確ではあったのですが、会費収入と会員数、入退会の経緯から勘案して、
    年度の途中の入会、もしくは退会であっても、年会費は全額払うもので、分割は無い
検算中に「あれ?」と思った時があり、そう考えて計算しなおしたピッタリ合ったので間違いないと存じます。そういうシステム自体は珍しいものではありませんから問題ではありませんが、チト年会費は「結構高いのにな」と思ったぐらいのお話です。賛助会の会費収入は会員数に比例するものであり、概算ですが2005年頃が最高で4300万円ぐらいあった事になります。これが平成23年度財務諸表によれば現在は2456万円になっています。2000万円ぐらいの減収になります。
会費収入は減ったか
それだけ賛助会の収入が減れば手痛いと思いたいところですが、機構の会費収入自体は2009年度を底にして2010年度から劇的に増えています。どれぐらい劇的かと言えば、
    2496万円 → 1億1331万円
わぉ、一挙に4.5倍、金額にして8835万円です。ちなみに賛助会収入は2009年度も2010年度も同額の2496万円です。つまり賛助会以外の会費収入が突如8835万円も湧き出てきたわけです。言ったら悪いですが、この御時世にどんな打ち出の小槌を振られたのか嫌でも興味が湧きます。今日はメインテーマはそのムックです。
新たな収入源?
2009年度から2010年度の会費収入を財務諸表でチェックしておくと、
会費収入 2009 2010 2011
賛助会員会費収入 2496万円 2496万円 2456万円
認定病院協議会会員会費収入 記録なし 8835万円 記録なし
患者安全推進協議会会費収入 記録なし 記録なし 8757万円

読めばわかるように2010年度には「認定病院協議会」、2011年度には「患者安全推進協議会」なるところからの莫大な会費収入が流れ込んでいます。ほいじゃ、この2つの会はなんだろうになります。名前はかなり違いますが、会費収入の金額からすると出所は同じではないかの推測は容易に成り立ちます。言ったら悪いですが、9000万円近くの会費をかき集められる会を単年度毎に作っては潰すなんて考えられないからです。 そこで調べてみると機構の事業の中に、
    認定病院患者安全推進協議会
こういうものが存在します。どうも2010年度は名称の前半を取ったもので、2011年度は後半を取ったものと解釈できます。なぜに2010年度と2011年度で表現が変わったかは不明です。
認定病院患者安全推進協議会
認定病院患者安全推進協議会(協議会)のホームページの中の協議会についてには、

「認定病院患者安全推進協議会」とは、(公財)日本医療機能評価機構の認定証を取得した認定病院の有志が主体となり、患者安全の推進を目的として平成15年4月に組織化された協議体です。

これまで、患者安全に関して、緊急性が高い課題に応じて部会・検討会を設置して種々の検討を行うとともに、患者安全推進ジャーナルを発刊するなど、患者安全の推進に成果をあげてまいりました。

同協議会は、認定病院であれば申請により会員病院になることが可能で、現在、認定病院の約6割が入会しています。

協議会は平成15年(2003年)4月に出来たようです。構成メンバーは「認定病院の有志が主体」となっています。また機構の事業内容には現在でも、

認定病院患者安全推進事業

病院機能評価の認定病院が自主的に行う患者安全推進協議会の活動を支援します。
患者安全推進ジャーナルを年4回発行するほか、セミナー等を通じて情報を発信しています。

あくまでも協議会の有志が自主的に行うのを機構が「支援する」と謳っております。自主的とは書いてはあるのですが、HPを見る限り、どこをどうやって見ても機構の直轄部門の体裁をなしています。気になったのは協議会が建前上は独立であり、機構と非常に親密な関係であるだけと言うのか、単なる附属団体かです。つまり建前上が独立であれば独自会計を持っているはずであり、そうでなければ運営経費は機構に全面依存です。

もう少し平たく言うと、もともと会費があったかなかったかです。この協議会のページを探し回ったのですが、会費の話は私の手では見つけられませんでした。ただなんですが担当理事のごあいさつに気になる記述がありました。

それらを含めての協議会活動の基本方針、活動計画、部会の設置等についての全体をまとめる場としての「運営委員会」が組織されております。その運営委員会は、会員病院の代表、学識経験者、機構側の理事で構成されています。平成20年度からは機構内の組織改革が行われたことで、本協議会は事業推進部が担当しております。

これをどう読むかなんですが、今でも組織図では運営委員会がトップにあります。これが、

    平成20年度からは機構内の組織改革が行われたことで、本協議会は事業推進部が担当しております。
これは運営委員会の上に機構の事業推進部が2008年から乗っかったって事でしょうか。どうにも解釈が難しいところです。それでも2008年度に事業推進部が協議会に乗り込んで行った組織改革の一端が平成21年度事業報告書にあります。

2.会員病院と年会費

 平成21年度の協議会会員病院数は1462病院であった(認定病院数2574病院;入会率56.8%)。年会費6万円とした。

もちろん「会員病院」とは協議会の会員病院です。つまり2008年度に機構は協議会に事業推進部を送り込んで組織改革を図り、2009年度に会費を6万円に設定し、2010年度からその徴収を始めたと受け取れそうな気がします。ただなんですが、一つ妙なことがあります。2009年度はまだ会費を徴収していないわけです。その会費を徴収していない時代の認定病院協議会事業収益と、会費を徴収している2011年度の認定病院協議会事業収益が興味深い関係になっています。

項目 2009 2011
認定病院協議会事業収益 9953万6450円 1114万7700円
患者安全推進協議会会費収入 なし 8429万7381円


これどうも収入項目の付け替えみたいに見えます。つまり協議会には以前から6万円の会費が存在したです。2009年度までは認定病院協議会事業収益として機構が受け取っていたものを、2010年度からは会費収入に切り替えたです。何故にこれが行われたかですが、誰か会計に詳しい人にアドバイスを頂きたいのですが、私が見る限り会計名目の違いによるものみたいです。

機構は2011年4月に財団法人から公益財団法人に移行しています。どういう経過であったかですが、平成22年度事業実績に、

1.公益財団法人への移行について

平成21年11月4日付けで公益財団法人への移行申請をおこなっていたが、平成23年3月23日付けで内閣府より認定書が交付された。平成23年4月1日に移行登記を行った。

そのための会計対策みたいな感じと受け取ります。ここも表にして見ます。

年度 法人形態 項目 会計分類
2009 財団法人 賛助会会費 一般会計のみ
協議会事業 特別会計のみ
2010 財団法人 賛助会会費 一般会計のみ
協議会会費 特別会計のみ
協議会事業
2011 公益財団法人 賛助会会費 公益目的事業会計と法人会
協議会会費
協議会事業 公益目的事業会計のみ


理由は私の手には余るのですが、経緯からすると2008年度から公益財団法人移行の為に機構が動いた結果のように考えます。協議会に書いてあった「組織改革」とは公益財団法人移行の事であり、移行に伴いなんらかの理由で協議会事業収益を会費の名目に変える必要が生じ、公益財団法人移行の前年度から実行されたです。この意味について判る人は是非アドバイス下さい。


「有志」と「自主的」と「支援」

大した事実ではないかもしれませんが、もし認定病院が払っている会費があるとしても賛助会ぐらいと思っていました。そりゃそれしか表に出ていなかったからです。ところが協議会もあるのを確認できたのは一つの収穫だと思っています。そいでもって協議会の会費は機構にほぼ直行便と見て良さそうです。2011年度の協議会からの会費収入を現在の協議会会員数で除せば、ほぼ6万円であり、端数は会員数の変動と見れるからです。

一方で協議会の活動紹介には、行っている事業として、

  • フォーラム
  • セミナー
  • 患者安全推進ジャーナル
この3つが上げられています。協議会の性質からして、いかにもの事業なんですが、この事業の収益が1000万円以上あるのにまず驚かされました。2011年度のものですから、これは純粋に上記事業による事業益と見れます。ここで確認しておかないといけないのは機構側からの協議会への支出です。これがどう見てもありません。私が見る限り協議会への支出項目がどうしても見当らないです。


今回のお話で日本語もつくづく難しいと思った次第です。協議会は認定病院の「有志」が「自主的に行う」と書いてあるのですが、そう書いてあれば機構側とは何らかの一線が引いてあると思ってしまいます。たとえ機構の一部門であっても何らかの独立性があるみたいな感じです。そうでなきゃ通常は「有志」とか「自主的」の言葉は使いにくいです。

しかしカネの流れを見る限り、「有志」も「自主的」も会費を認定病院の意思で払っている以上の意味合いは乏しそうに感じてなりません。つまり会費を払う気がある「有志」が「自主的」に協議会を通じて機構に上納しているです。ほいじゃ機構の「支援」とは・・・なんでしょうねぇ。会計管理をやってくれると言うぐらいのお話でしょうか。


それでも認定病院のすべてが協議会に加入している訳ではありません。そりゃ「有志」だからです。強制でなく「自主的」ですから「有志」でない認定病院もおられる訳です。データが3ポイントしかないのが遺憾ですが、

年度 会費収入 会員病院数 認定病院数 会員率(%)
2010 8835万円 1462 2574 56.8
2011 8757万円 1473 2518 58.5
2012 * 1455 2434 59.8
*2012会員病院数、認定病院数は2012.8.4時点

これだけしかないので判じ物みたいなものですが、現在の加入率は6割程度です。つまりは4割は協議会に加わっていません。これも協議会が発足した2003年時点からそうなのか、賛助会同様にジリ貧傾向にあるのかです。どっちなんでしょうね?
感想
それにしても認定病院の資格つうのは、ゴマみたいなものだと感じています。ココロは絞れば絞るほどたくさん油が絞り取れるです。認定病院の場合は絞る相手が認定機関であり、認定を審査する側が絞る理由を考えると言うのに特徴があります。どこであってもそうですが、認定を受ける時には審査を行う側には気を使います。面接試験みたいな状況を思い浮かべてもそんなに外れていないと思います。 そういう時には審査側の人間の気に入らない事を避けたいと思うのが人情です。そういう優越的な立場にある人間が、いくら「審査とは無関係です」と断りを入れられても、協議会加入をちらつかされたら断り難いものです。断った事で実際の審査でどんな意地悪をされるか嫌でも頭に浮かぶです。でもってこの認定病院の審査がどんだけ重箱的なものかは周知の事です。とくに認定更新を考える病院は頭に浮かぶだろうです。 そこまで考えると、4割の認定病院が会費6万円を断っていると言うのは意味深かもしれません。そこについては「その2」で分析してみたいと思います。