国際個別化医療学会

名称の変遷

恥ずかしながらNATROM様の国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更していたで知ったのですが、国際統合医学会なるものがあり、さらに2011年12月に国際個別化医療学会に名称変更していたのを初めて知りました。さっそく沿革を確認してみたのですが表にまとめてみます。

Date 沿革
1999年 国際統合未来医学会として発足
2002年 国際統合医学会と改称
2006年8月 有限責任中間法人となる
2008年12月1日 一般社団法人に移行
2011年12月9日 国際個別化医療学会に改称


ちょっと補足しておきますが、2002年の改称に年月日の記載はなく単に「第4回の会合より」となっています。この会合とは学術集会を指すと考えてよく、2012年には第14回学術集会が開催されています。年に1度と考えると第4回は2002年にあたるです。1999年に発足以来、10年ぶり2度目の改称と見て良さそうです。前回の改称は「未来」が取れただけですが、2011年の改称は大幅な変更と感じられます。


役員と理事長のお言葉

ここの役員一覧が誠に興味深いのですが、名誉顧問だけでも安保徹氏、帯津良一氏、渡邊昌氏が名を連ねる一方で、高久史麿氏や日野原重明氏もおられるです。ずっと下って顧問に天野篤氏の名が見られる一方で評議員船瀬俊介がおられたりします。とにかくたくさん名を連ねておられますので、興味ある方はお楽しみ下さい。これも見ようですが、今までどこでつながっていたんだろうと思っていた方々の関係が少し判った気がします。

それにしても10年も使ってきた名称を変更するのは何らかの理由が必要です。名称もある種の財産で、周知されることにより一種のブランドになります。昨今では製薬メーカーの合併が相次ぎ、まったく新しい社名に変わったところは、その名前が通用せず苦労したとの話も聞いた事があります。理由について理事長の阿部博幸氏は、

 私たちは統合医学が純粋に「個別医学・個別医療」であることを、本学会の設立当初から主張してきました。この根本的な考えが統合医学の新たな創造の可能性を示唆しております。それは「Personalized Medicine」そのものであると考えます。

なるほど元もとそう主張していたから14年目にして主張通りの名称に変更したとしているようです。それだったら「始めからそうしとけ!」との指摘も出てきそうですが、ココロは統合医学的な考えをさらに進化させたぐらいだと解釈します。さて理事長のお言葉に最初に「統合」を選んだ理由らしきものが書いてあります。

 現代医学は人類に大きな恩恵をもたらしております。ラ・メトリの「人間機械論」により端を発した臓器別医学は、病気の原因と治療に素晴らしい発展をもたらした一方で、人間全体を見失った感があります。これを一つの反省点として統合医学が提唱されてきました。ここには東洋的宇宙観・人間観と西洋のそれとの統合があります。それは精神と肉体との統合的思想でもあります。そのために、洋の東西を問わず伝統的な医学・医療の統合が試みられてきました。

ほいなら「統合」のままで良さそうに感じてならないのですが、どうも「パーソナライズド・メディシン(Personalized Medicine)」と言う考え方に重点が移ったとのお話のようです。ほいじゃパーソナライズド・メディシンとは具体的に何かと言えば理事長の言葉では、

パーソナライズド・メディシンとは、バイオテクノロジーに基づいた患者の個別診断と、治療に影響を及ぼす環境要因を考慮に入れた上で、多くの医療資源の中から個々人に対応した治療法を抽出し提供することです。

興味ある方はリンク先の理事長の言葉を読んで欲しいのですが、良く言えば蘊蓄に富む、悪く言えば衒学趣味的な文章で、サラッと読んでも何を言いたいか判り難いものなので、理事長のお言葉での紹介はこの辺に留めさせて頂きたいと思います。


パーソナライズド・メディシン

さて会の名称を変更してまで導入されたパーソナライズド・メディシンのより具体的な説明がライブラリにありました。

 パーソナライズド・メディシン(個別化医療)とは、バイオテクノロジーに基づいた患者の個別診断と、治療に影響を及ぼす環境要因を考慮に入れた上で、多くの医療資源の中から個々人に対応した治療法を抽出し提供することです。個別化医療の基幹となる要素は、薬理ゲノム学やバイオマーカーのみならず、ライフスタイルや生活歴、人生観、現在の身体的問題など、患者固有の情報を浮き彫りにした個々人の医学的ポートレイトです。

 患者自身の基礎体力による条件などによっても複雑に変化する、個々人の医学的ポートレイトに基づく最適な治療には、コアとなる治療は当然ながら、サポートケアも含まれます。アロマテラピー、マッサージ、鍼灸、温熱療法、漢方、気功、サプリメントやビタミン療法などのサポートケアの要素をいかにコア治療へ結びつけていくか、いかにその有用性を実証していくか、これらもパーソナライズド・メディシンの実現においては重要なポイントと言えます。

 薬理ゲノム学やゲノム医学そしてプロテオミクスなど、個別化医療を実現する上でのトランスレーショナル・リサーチは急速に進歩を遂げておりますが、それらをいかに臨床現場で活用し、患者に治療を提供していくかという手法や技術についての議論や研究の場が、パーソナライズド・メディシンの進展を加速させると期待されております。

これをどう解釈したら良いか私の手でも余りそうなのですが、どうやら、

  • コアなる治療
  • サポートケア
こういう風に分けられ、サポートケアには、こういうものになるとぐらいに考えます。とりあえずこういうサポートケアを、患者個々の適性を見極めながら「コアなる治療」(現代医学の標準治療かな?)に結びつけるぐらいです。ちなみにプロテオミクスとは蛋白質の解析を指す最先端の研究分野の一つです。


これだけでは判ったような判らないようなお話なんですが、もう少し具体的なものはないかと国際統合医学会誌Vol.2 No1の阿部理事長による巻頭言「新時代に入った統合医学」からもう少し引用して見ます。

顧みれば,統合医学の分野に新しい先端医療が組み込まれつつあり,本邦においても高濃度ビタミンC点滴療法,キレーション療法,樹状細胞がんワクチン療法などが次々と登場している。これらは研究歴も長く,臨床的なエビデンスもしっかりしていることから重要なツールになると考えられる。そして,今日的視点からみて,これらの先端医療のみならず,あらゆる医療についてエビデンスが求められているところであるが,ゲノム医学に基づいた真のエビデンスを希求してゆくことの重要性を痛感している。

どうも

このあたりが「新時代に入った統合医学」の一つの象徴のようです。確かに国際統合医学会誌にはこの関連の投稿が多く見られます。Vol.2 No.1には高濃度ビタミンC点滴療法関連が多く発表されておりザッと紹介しておくと、高濃度ビタミンC点滴療法についての国際個別治療学会の位置付けは、
    研究歴も長く,臨床的なエビデンスもしっかりしている
高濃度ビタミンC点滴療法に対するエビデンスは聞いた事がありますが、位置付けとしては阿部理事長が力説するほど高かったかと言われるとチト疑問です。キレーション療法,樹状細胞がんワクチン療法となると「なおさら」みたいな感じがしないでもありません。


リアル点滴バー

ついでですから寄り道しますが、

マイヤーズカクテル??? マイヤーズ・ラム(mayer's Rum)なら良く知っているのですが、ここはMR21点滴療法研究会のマイヤーズ・カクテル(Myers' coktail)点滴療法についてからザッと紹介しておくと

マイヤーズカクテルは米国自然療法医の定番です。人間の体の中に存在する栄養素であるビタミンやミネラルだけの点滴療法で、気管支喘息、偏頭痛発作、慢性疲労症候群線維筋痛症などさまざまな疾病に有効です。

含まれる成分として、

ビタミンB1,B2,B3,B5,B6,B12,ビタミンC、グルタチオン、マグネシウムなどの点滴製剤を使います。

でもってお値段は、

点滴の処方内容によって料金が変わります。7,000円〜15,000円が平均的な料金設定です。

よくNATROM様が「点滴バー」みたいな表現を使われますが、まさか名前の付いたカクテルまであるとはちょっとビックリでした。残りの投稿で目に付いたものはタイトルを紹介するだけにしておきますが、Vol3 No.1からです。

考え様によっては楽しそうな学会で、NATROM様が参加されれば必要にして十分すぎるほどのネタが仕入れられそうに思います。それにしても統合医学と言うか、個別化医療学と言うのは色んな治療とか検査法が並列に語られる学問分野である事が何となくわかりました。そう言えば統合医療大学院計画で、大学としての定義や概念すら打ち出せず門前払いにされていますが、その理由の一端が改めてわかる気もします。


なんとなくの感想

学会の名称変更についてNATROM様は服に薬理作用があるから服用という?で、

国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更した理由の一つが、統合医療という言葉につきつつあるネガティブなイメージを避けることにあるかもしれない。

これも一理あると思います。確か先々代の首相の時には所信表明演説に「保険適用を考える」とまで言わしめた統合医療ですが、あの頃を頂点として、とくにホメパチVitK事件以降はイメージ低下が著しいのは私も同意します。それと、もう一つ個人的に考えるのは延命政策がしっかり組み込まれていると思います。代替療法に限らず、この世に奇跡的な治癒例はあります。医療者なら1例や2例はそういう経験を持っています。

奇跡的な治癒例のネックは一般化できないことです。同じ事を他の人に試みても同様の効果が得られる可能性が極端に低いです。ただ効果があったのは間違いありませんから、何らかの機序により奇跡的な効果を起こしたんじゃないかの発想はありです。奇跡的が起こった要因を人体の個人差に求めると言うのが新たな路線のように感じます。

確かにその方面の研究は近年猛烈な勢いで進んでいます。この解明が進めばやがて奇跡的な治癒を起す患者の特定とかメカニズムが可能になるみたいな感じです。医学の進歩の将来としてはありえないお話とは言えません。その時こそ代替療法として日陰の身に甘んじていた療法が花開くぐらいでしょうか。発想としては悪いとは思いません。

その日が来るまできっと頑張られるのだと予想します。「いつ」については、私が生きている間に来たら「良いのになぁ」と思っています。統合医学じゃなかった個別化医療学を研鑽されている方々にとってもメリットは大きいでしょうが、私のような現代医学の徒にとっても、途轍もなく巨大なメリットが期待できるからです。

ただなんとなく同床異夢の感じがしてならないのは不思議です。