何回か著作権のお話をしていますから、簡単な解説にしておきます。他人の著作を使う時に転載は許可が必要ですが、引用は自由です。
著作権法第三十二条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
「公正慣行」とは具体的に、
引用における注意事項
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
- 他人の著作物を引用する必然性があること。
- かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
- 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
- 出所の明示がなされていること。(第48条)(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
こんな感じです。とくに、
-
自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
著作権法48条2項
前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
この辺までは基本です。言うまでもないですが、
著作権法10条8号
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
八 写真の著作物
写真もまた著作物として扱われます。
2010.4.6付J-CAST(Yahoo !版)より、
新聞業界で注目を浴びてスタートした日本経済新聞の「電子版」に、思わぬ形で逆風が吹いている。サイトへのリンクについての方針が、「個別記事へのリンクはお断り」「違反した場合は損害賠償を請求することがある」という異例の内容で、強い批判を浴びている。
詳細はリンクのお話をお読み下さい。今日は日経のリンクへの方針の是非ではなく、著作権法の運用に厳しい方針である傍証と見てもらえれば十分です。別にリンクだけではなく、商業メディアは著作権法については飯の種ですからウルサイのは当たり前です。何が言いたいかですが、当然模範を示す立場にあるです。
時代の最先端だね!さすが日経だよ! / “日経新聞の記事はクレジット表記なしで自由に転載していいことが判明しました - 頭ん中”http://htn.to/xHzduc
てなものがありリンク先の7/27付頭ん中「日経新聞の記事はクレジット表記なしで自由に転載していいことが判明しました」をワクワクしながら読ませて頂きました。
こちらの記事に
当ブログの記事のスクリーンショットが掲載されていますが、
「あるブログ」とだけ表記されておりますし
情報元へのリンクもされていませんし
そのことについて事前にも事後にもご連絡はいただいておりませんので
上記のような方針で運営されているものと判断しました。
「上記のような方針」とは、
こりゃ宜しくなかろうです。
では実際の記事がどうなっているかですが、まずNOV1975様が指摘した時点の記事の
確かにNOV1975様のエントリーのスクリーンショットが引用されており、キャプションとして、24日に掲載されたあるブログの写真が話題に
こうなっています。実は今朝時点の日経記事を先に確認していたのですが、そこでのキャプションは、
24日に掲載されたあるブログの写真が話題に(写真はブログサイト「頭ん中(www.meng.info)」より。27日20時50分追記)
魚拓を追いかけると確かに「27日20時50分」頃に追記されているようです。ツイッターなりNOV1975様のエントリーから情報を得て修正したと考えられます。誤りがあれば速やかに訂正する事自体は評価します。人間のする事ですから間違いも生じるでしょうし、誤りがわかれば、訂正できるものなら訂正を認めるべきだと私は考えています。
ではこの訂正でNOV1975様の指摘が是正されたかです。
- 日経新聞ウェブ版の記事は、スクリーンショットを自由に転載していい
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スクリーンショットの著作権は私の知る限り微妙です。現在のところボーダー(灰色がちょっと濃いかな?)ぐらいの位置付けだったと思います。ただNOV1975様はスクリーンショットに関する著作権は主張していないとも言えますから、とりあえずセーフとしておきます。
- 情報源は「ある新聞」と書けばよい
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これは追記により「頭ん中」と明記されました。ただなんですがいつの記事であるの記載がありません。さらに言えば著作権法48条2項が求める著作者名が欠けています。「頭ん中」の著作者はブログの中に明記されております。
- 元記事へのリンクは必要ない
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これも追記により「www.meng.info」が記されていますが、これは不親切すぎるリンクかと存じます。リンクは出来るだけ元記事に近いほうが好ましく、やはり引用したエントリーの「www.msng.info/archives/2012/07/nk.php」を示すべきかと存じます。
- その際、許可を取る必要はない
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転載でなく引用であれば著作者の許可は不要です
それにしても、どうせ追記するなら、もう少し気を使って「やりゃ良いのに」と思った次第です。どうにも無頓着な「やっつけ仕事」に見えて仕方ありません。