wikipediaより、
2007年(平成19年)から2009年(平成21年)にかけて、毎年自殺者が4、5人出ており、10万人あたりの自殺率に換算すると、150ポイント前後と、きわめて高い値となっている。このため、村では2010年度(平成22年度)から自殺予防への取り組みを行う集落に助成する制度をスタートさせたが、村民からは「何をやればいいのか」といった戸惑いの声も出ている。
この自殺率が異常に高いのではないかの指摘が出ています。本当に高いかどうかの検証とその後どうなっているかのムックをやってみます。
ソースとしたのは、
- 平成21年地域における自殺の基礎資料のうち2−1−1 都道府県・政令指定都市別単純集計(住居地)(自殺率、男女・年齢(10歳階級)・職業(8区分)・場所(6区分)・原因・動機別)
- 秋田県の市町村別・年齢別人口 −各年10月1日現在− (昭和56年〜平成22年)
- 2010年人口動態統計
手法は単純で、
- 平成21年地域における自殺の基礎資料で秋田県の年齢階級別自殺数を知る事が出来る。
- 秋田県データで、秋田県及び上小阿仁村の年齢階級別人口がわかる
- 秋田県の年齢階級あたりの自殺率が算出できるので、これを上小阿仁村の年齢人口に乗じる
- 参考として全国データを加える
- 全年齢階級の合計が年間自殺数となる
年齢 | 人口 | 自殺数 | 自殺率 | 上小阿仁村換算 | |||||
秋田県 | 全国 | 秋田県 | 全国 | 秋田県 | 全国 | 人口 | 秋田水準 | 全国水準 | |
総数 | 1097483 | 126381728 | 422 | 29554 | 38.45 | 23.38 | 2,823 | * | * |
0-19歳 | 179533 | 22717343 | 5 | 514 | 2.79 | 2.26 | 338 | 0.01 | 0.01 |
20-29歳 | 88000 | 13459546 | 26 | 3002 | 29.55 | 22.30 | 106 | 0.03 | 0.02 |
30-39歳 | 123484 | 17902005 | 53 | 4265 | 42.92 | 23.82 | 196 | 0.08 | 0.05 |
40-49歳 | 129110 | 16616735 | 53 | 4790 | 41.05 | 28.83 | 307 | 0.13 | 0.09 |
50-59歳 | 171598 | 16264372 | 90 | 5555 | 52.45 | 34.15 | 417 | 0.22 | 0.14 |
60-69歳 | 158296 | 18284797 | 72 | 5556 | 45.48 | 30.39 | 469 | 0.21 | 0.14 |
70-79歳 | 148751 | 12959616 | 67 | 3453 | 45.04 | 26.64 | 566 | 0.25 | 0.15 |
80歳以上 | 98198 | 8177314 | 56 | 2266 | 57.03 | 27.71 | 424 | 0.24 | 0.12 |
上小阿仁村の計算上の自殺者数 | 1.18 | 0.72 |
上小阿仁村の自殺者数は、
-
2007年(平成19年)から2009年(平成21年)にかけて、毎年自殺者が4、5人出ており
(平成21年人口動態統計より) | ||||||
順位 | 自治体名 | 自殺率 | 総数 | 男 | 女 | 人口 |
1 | 上小阿仁村 | 177.1 | 5 | 2 | 3 | 2823 |
2 | 五城目町 | 65.2 | 7 | 5 | 2 | 10738 |
3 | 大潟村 | 62.0 | 2 | 2 | 0 | 3226 |
4 | 三種町 | 57.8 | 11 | 8 | 3 | 19023 |
5 | にかほ町 | 57.1 | 16 | 10 | 6 | 28006 |
6 | 藤里町 | 49.8 | 18 | 9 | 9 | 37198 |
7 | 男鹿市 | 48.5 | 16 | 11 | 5 | 33017 |
8 | 北秋田市 | 48.4 | 18 | 9 | 9 | 37198 |
9 | 羽後町 | 46.8 | 8 | 7 | 1 | 17112 |
10 | 大仙市 | 45.9 | 41 | 29 | 12 | 89398 |
母数が少ないのである程度仕方が無いとは言え、上小阿仁村がダントツであるのは確認できます。それでも2009年が5人と確認できたので、
- 秋田水準の4.24倍の自殺者数
- 全国水準の6.94倍の自殺者数
もちろん上小阿仁村も手を拱いているわけではなく、
-
村では2010年度(平成22年度)から自殺予防への取り組みを行う集落に助成する制度をスタート
イ市町村実践事業の推進(平成19年度〜)
市町村モデル事業の成果を踏まえ、合併市を含めた県内全市町村への事業拡大促進を図るために事業メニューを例示し補助事業を実施した(補助期間:3ヶ年度以内)。
(平成19年度補助対象市町村)
・当初予算8市町鹿角市、能代市、北秋田市、にかほ市、仙北市、横手市、五城目町、羽後町
※能代市はその後、秋田大学の協力により厚労省科研費で事業実施することとなったため件補助は受給せず。・補正予算10市町村
ただ平成19(2007)年度は補助対象になったようですが、平成20(2008)年度以降は補助対象から外れたようです。ただこれとは別に地域自殺対策緊急強化事業費補助金と言うのを平成21(2009)年度に受けています。もっともこれは全市町村が対象になっています。この平成21年度地域自殺対策緊急強化事業費補助金内訳も公開されており、
上小阿仁村で行われた事業内容は、関係団体職員研修会の開催(相談スキル、交流サロン等)
なんとなくですがwikipediaにある2010年度からの取り組みは、これらの補助事業と別の村独自の取り組みであったと考えられます。だからこそ秋田魁新聞が記事として取り上げたのだと考えます。成果が上っている事を心から願うところです。村の姿勢については平成23年第2回上小阿仁村議会定例会会議録に村長(小林宏晨)の発言として、
- 自殺予防につきましてでありますが、22年度には集落の心の健康づくり、自殺予防普及啓発活動が各集落会長などのご協力で実施されまして、一定の成果を見ております。23年度におきましても同様の補助を予算計上しておりますので、よろしくご活動のほどをお願い申し上げます。
- 現在、独居高齢者の見守りや自殺予防を含め、光ファイバーを村の医療に利用する準備を整えるよう検討しているところでございます。
さらに平成23年第8回上小阿仁村議会定例会会議録にも村長(中田吉穗)発言として、
声かけサポーター研修(心の健康づくり講演会)について、第1回目は、村の現状と今後を考えようのテーマで秋田大学の佐々木久長先生。第2回目は心の病うつ病を正しく理解しよう、ということで秋田県精神保健福祉センター所長の伏見雅人先生。第3回目は、認知症を正しく理解しようということで、認知症キャラバンメイトの児玉美幸先生に講演をしていただきました。いずれの研修会も会場に入りきれないほどの参加者となり、関心の高いことを認識させられております。
今後も村民を対象にして、12月19日と来年の1月16日に行い、全部で5回の研修を予定しております。この研修会は自殺者を少なくするために心の不安の軽減を図り、皆が支え合っていくための絆の再生や、自殺につながる孤立を予防するための身近な相談者を育成ものです。5回の研修が終了した時は、参加者の方々に見守りボランティアとして、声かけサポーターとなっていただいて、自殺予防につながっていくことを期待しております。
自殺対策は政争とは関係なく進められている様子が窺えます。
でもって成果なんですが、やっとこさ見つけました。内閣府経済社会総合研究所の表1−13 市区町村別自殺者数 - 自殺日・住居地 - (平成22年)に、
平成21(2009)年度:4人
平成22(2010)年度:0人
どうも2009年度までは4〜5人ペースが続いていたようですが、2010年度にはゼロを達成したようです。さらに2011年度は平成23年の地域における自殺の基礎資料で確認可能で1人です。表にしておくと、
年度 | 自殺者数 |
2009 | 4 |
2010 | 0 |
2011 | 1 |
ここも注釈を入れておかないといけないのですが、2009年度の上小阿仁村の自殺者数です。秋田県データは5人で、内閣府資料では4人となっています。理由として考えられるのはデータのさらにソースで、この2つは微妙に違います。全般的には人口動態統計より警察庁統計の方が1割程度多くなるのですが、上小阿仁村では逆に警察庁統計の方が少なくなっているようです。表では警察庁統計の方を使わせて頂いています。それはともかく、この成果は称賛しても良さそうな気がします。自殺対策の難しさは周知の事だからです。
称賛ついでなのですが、2012.5.4付あきた北新聞に、
これに次ぐ上小阿仁村は1日現在で2,141日を数え、同現在の比較では藤里町に1,761日の開きがあるものの、最後に発生した18年6月21日以来ゼロ日数を更新し続けている。
これは交通事故死日数連続ゼロ記録だそうです。もう一つ2012.5.11付あきた北新聞に、
小坂、上小阿仁の両町村は前年同期と同様、検挙者、事故とも皆無で、1位の9市町村に名を連ねている。
これは飲酒運転の検挙者だそうです。どうも
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上小阿仁村は統計上の交通マナーでは非常に良い
交通マナーの確立と、それ以上に難しいと考えられる自殺対策を成功させているのですから、次は「よそ者医師」対策に取り組んで頂ければと外野からは思います。医師の問題はあの状態から3人目が現れたわけですから、この状態になっても4人目が現れる可能性はあります。ただし5人目、6人目と無尽蔵に現れるかと言えば保証の限りではありません。
よそ者医師対策は自殺対策より、目に見える具体策があると言う点で自殺対策より容易ではないでしょうか。いや容易と思うのですが、容易じゃないんでしょうか。とにもかくにも上小阿仁村の自殺はwikipediaの記載状態から脱却している事実だけは、ここにお伝えしておきます。