札幌医科大の
これを見たいと思います。まず冒頭部ですが、医学部では、顕在化している医師不足に対して、北海道立の医科大学として道内で医学・医療に従:!』『する医師を養成するために、「北海道医擦枠」(募集人幽35名)を設縦しました。これにより一般入試は「一般枠」「北海道医療枠」の2種類の出願枠となります。
この北海道医療枠では、今まで以上に本学の建学の精神に共感し、また、北海道に魅力を感じ、本道の地域医擦についてI荷い志を持った道内外の学生を求めております。
北海道医療枠の学生に対して、卒業後、本道の医学・医療の分野で指導的・中核的役割を担いうる人材への育成を目指した必修プログラムを実施する考えです。
ちなみに札幌医大の建学の精神とは、
- 進取の精神と自由闊達な気風
- 医学・医療の攻究と地域医療への貢献
建学の精神に謳われている「地域医療への貢献」とは北海道の地域医療への貢献である事が明らかにされ、北海道以外の地域医療への貢献は重視していないと解釈して宜しいようです。なんと言ってもわざわざ、
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この北海道医療枠では、今まで以上に本学の建学の精神に共感
学部学科 | 合計 | 一般入試(前期日程) | 推薦入試 | ||
北海道枠 | 一般枠 | 一般推薦 | 特別推薦 | ||
医学部医学科 | 110 | 35 | 40 | 20 | 15 |
このうち推薦入試ですが、資格は平成24年度学生募集要項より、北海道の高校を卒業したものであるのが前提条件で、
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特別推薦:本学卒業後、一定期間北海道の地域医療に従事することを確約できる者
一般推薦:上記の条件の無いもの
見慣れたパターンの奨学金縛りです。でもって一般入試に設けられた北海道枠の応募条件ですが、
なお、出願者の出身地、および出身高等学校等所在地による制限はありません。
推薦入試と違い北海道限定の条件はないようです。まあ、ここも北海道限定にしてしまえば定員110人中80人が自動的に北海道限定になるので避けたのかもしれません。ただ、もう一度くり返されている部分があり微笑を誘います。
「北海道医療枠」及び「一般枠」のいずれも、出願者の出身地、および出身高等学校等所在地による制限はありません。
どうも札幌医大は「一般枠」の言葉にも、通常と違う用法があるのかもしれません。一種の学風でしょうか。さてなんですが、問題の北海道枠ですが、一般入試と試験による競争は完全に別枠となっているようです。
合格者は、総合点の高い順に、「一般枠」及び「北海道医療枠」それぞれで決定します。
まあそんなものだろうと思うのですが、次の条件がまたもや微笑を誘います。
- 「北海道医療枠」への出願は、第2志望として「一般枠」へ併願したものとみなします。
- 「北海道医療枠」で合格とならなかった場合、「一般枠」での合格の可能性があります。
北海道枠への人気が沸騰し入試レベルが「北海道枠 > 一般枠」になった場合の配慮のようです。ちなみに一般枠から北海道枠への併願は認めないとなっています。もっとも現実的配慮もちゃんと行っており、
「北海道医療枠」については、応募・選考状況により、合格発表数が募集人員に満たない場合があります。
なるほどです。
誰でも関心を寄せるのは北海道枠の条件です。
至極簡単な理解として、卒業すれば札幌医大の医局に属し、札幌医大の医局人事で連続9年間勤務する事のようです。このあたり、ここまでやると人材派遣業とか、職安法の絡みが出てきそうにも感じてならないのですが、詳しい方がおられれば宜しくお願いします。特別推薦枠は「義務年限9年間中5年間」となってますから、より義務年限は長いと受け取って良さそうです。もっとも来年度の条件は北海道枠と同じになるかもしれません。
他にも少々違う点があります。
「北海道医療枠」には、修学資金貸与制度はありません。
そうなると注目されるのは卒業後に義務を蹴飛ばした時です。従来の奨学金縛りの場合は利息付の一括返済義務と言うのがあります。北海道枠はありませんから、「カネ返せ」は使いようがありません。一応の縛りはありまして、
「北海道医療枠」を志望する者は、出願時に、一般入試への出願書類に加え、本人及び保護者の同意も含めた確約書を提出する必要があります。
在学中に気が変わったと表明してくれれば確約書を盾に退学させる事も可能でしょうが、国試は卒業後に行われます。ただ卒業後に追っかけての卒業取り消しは理論上は可能なようです。たとえば在学時の定期試験の不正の発覚とか、在学時に隠していた刑事事件の発覚とかです。もう一つ不正入試もそういう処分に該当する事はあるとされます。
卒業後に9年の義務を確約していたのに、それを果たさないのは北海道枠の入試を不正に利用したです。この辺については、かなり微妙な判断とも考えられ、杓子定規に適用できるかの問題は出てきそうな気がします。なんつうても建学の精神は「進取の精神と自由闊達な気風」ですからねぇ。
それと確約書1枚で求められる代償が大きすぎると言うのも出てくると思います。特別推薦は奨学金を返却するかしないかの選択が認められています。これもどうかと思わないでもありませんが、北海道医療枠になると選択すらありません。そういう状況で卒業資格だけではなく医師免許まで喪失させる行為はどうなんだろうです。
ま、卒業資格の取消から医師免許剥奪が確約書一つで可能であるなら、現在全国で行われている奨学金縛り制度はかなり不要になります。札幌医大の特別推薦の奨学金も不要になりそうです。そりゃ、確約書1枚で
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約束を破れば、卒業資格剥奪(自動的に医師免許剥奪)
見方を変えてみます。あくまでも一般論ですが、勤務条件を満たせば数百万円の奨学金の返済が免除される特別推薦と、確約書1枚で9年間の義務を課す北海道医療枠が同じものと思えません。特別推薦枠の奨学金返済免除条件は明示されており、
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義務年限9年間中5年間を、本人の意向を尊重し、知事が指定する道内の公的医療機関に勤務すること。
もう少し確実なソースに基づきたいところですが、他の類似の奨学金縛り制度から勘案すると、
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国試合格後の9年間のうちで5年間を知事が指定する北海道の病院で勤務すること
- 2年間の前期研修をどこで受けても自由
- 残り7年間のうち、2年間はどこに勤務しようが自由
これの読み方ですが、初期研修病院は札幌医大以外の他の道内の医療機関の選択枝を認めていますが、その後は札幌医大に所属する事を条件としています。ですから実質的に卒業と同時に札幌医大に入局する事が条件であると見て良いかと思います。後の事を考えると、初期研修を札幌医大以外で受けるメリットは少ないと見ます。
さて問題は
ここの読み方なんですが、素直に読めば北海道内勤務が条件になります。ただ拡大解釈は可能かもしれません。「従事する」を「籍を置く」に解釈可能じゃないかです。「籍を置く」が「従事する」と同等であれば単なる医局員と変わりません。国内留学に行こうが、海外留学に行こうがOKになります。つまり医局入局希望者のための優先枠のニュアンスを含ませているです。傍証としては、- 「北海道医療枠」への出願は、第2志望として「一般枠」へ併願したものとみなします。
- 「北海道医療枠」で合格とならなかった場合、「一般枠」での合格の可能性があります。
入試難度が「北海道医療枠 < 一般枠」であれば医局入局希望者のための優遇枠として機能しますが、「北海道医療枠 > 一般枠」状態にもしなれば優遇枠の意味がなくなり、これへの救済策として設けられたです。かなり偏った見方ですが、札幌医大の本当の意図は北海道医療枠での入局者は一般枠より優遇するです。
誰のために優遇するかもきっとあり、パッと読めば特別推薦入学者と同様の僻地義務が課せられているように思わせておき希望者を絞ろうです。もちろん、そんな事を明記すれば大問題ですから、知る人ぞ知るみたいな状態にしておくです。来年は初回ですから、希望者が絞られすぎた時の対策として、
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「北海道医療枠」については、応募・選考状況により、合格発表数が募集人員に満たない場合があります。
もっとも本当にそう読むかどうかは何の保証もありません。また来年度入学して卒業し入局する頃に医療情勢がどうなっているかは誰にも判りません。仮に現時点では私が考えているような意図があったとしても、実際に入局した頃には状況が一変し、確約書一枚の僻地義務医師になる事さえありえます。入学条件はあくまでも書面に書かれているものであり、裏の口約束はいつでも反故にできますし、大学側の解釈変更も自由だからです。
でもまあ、一時は医局の存在自体をあれだけ敵視していたものが、これだけ露骨な医局強化策をとっても良い方に評価されるのは皮肉なものです。