昨日の予防接種実施状況を調べてみるの余談みたいなものです。問題にしたいのは2010年度の麻疹・風疹の2期の接種率です。2004年度からの集計も合わせてピックアップしておくと。
年度 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | ||
麻疹 | 1期 | 93.7 | 97.8 | 97.4 | 100.2 | 94.3 | 93.6 | 95.7 | |
2期 | - | - | 77.9 | 89.2 | 91.8 | 92.3 | 92.2 | ||
3期 | - | - | - | - | 85.1 | 85.9 | 87.3 | ||
4期 | - | - | - | - | 77.3 | 77.0 | 78.9 | ||
風疹 | 1期 | 98.1 | 143.6 | 100.8 | 100.3 | 94.3 | 93.6 | 95.7 | |
2期 | - | - | 79.1 | 89.6 | 91.9 | 92.3 | 100.0 | ||
3期 | - | - | - | - | 85.2 | 86.0 | 87.3 | ||
4期 | - | - | - | - | 77.3 | 77.1 | 79.0 |
麻疹及び風疹の予防接種は殆んどがMRワクチンが使われます。若干の誤差が生じるのは、何らかの理由(既感染とか卵アレルギーなど)で麻疹なり風疹の単独ワクチンが使われ、どちらかの予防接種を行わなかった時が考えられます。ですから接種率は同じか、差はごく僅かです。ところが2010年度の2期は、
ワクチン | 対象人口 | 実施人口 | 接種率 | 接種人数差 |
麻疹 | 1110535 | 1023941 | 92.2% | 86750 |
風疹 | 1110535 | 1110691 | 100..0% |
チト差が大きすぎはないかです。実に12.5人に1人が麻疹を接種せずに風疹のみを接種した事になります。成人の風疹流行の噂は聞きますが、小児の大流行は聞いていません。また風疹流行の影響があったとしたら、少なくとも1期にも影響が出るはずです。やっぱり「妙だ」です。もう一つ傍証を挙げると、2010年度の中間集計からの変化もあります。
年度 | 種別 | 2期 | 3期 | 4期 | |||
4〜12月 | 年度通算 | 4〜12月 | 年度通算 | 4〜12月 | 年度通算 | ||
2010 | 麻疹 | 70.9 | 92.2 | 68.9 | 87.8 | 58.8 | 78.9 |
風疹 | 70.9 | 100.0 | 69.0 | 87.3 | 58.9 | 79.0 |
4〜12月までの中間集計では麻疹・風疹とも70.9%です。これが1〜3月の間にこれだけの差が付いたです。これもちょっとあり得ない話です。でもって原因と考えられるものを特定できました。これも厚労省の麻しん風しん予防接種の実施状況に2010年度第2期麻しん風しんワクチン接種率全国集計結果2011年3月31日現在と言うのがあります。この集計結果のタイトルは、
表1-2 2010年度 第2期 麻しん風しんワクチン接種率全国集計結果 2011年3月31日現在、最終評価
こうなっているのですが、結果部分を引用します。
麻しん風しんワクチン接種対象者数 | MRワクチン接種者数 | 麻しん単抗原ワクチン接種者数 | 風しん単抗原ワクチン接種者数 | 麻しんワクチン接種率 | 風しんワクチン接種率 |
1110535 | 1023749 | 192 | 156 | 92.2% | 92.2% |
2010年度の風疹予防接種2期の正しい接種者数及び接種率は
- 接種者数111万691人ではなく102万3905人である。
- 接種率は100%ではなく麻疹と同じ92.2%である。
つまりは厚労省が定期の予防接種実施者数の表を作る時に転記ミスを行なったと考えて良さそうです。人がやる事ですからミスは仕方ありませんが、厚労省統計は多くの研究者が権威あるデータとして重く信用し、そのまま引用する事が多いですから速やかな修正を希望します。