ホドホドが実は天王山

敬意をもって接させて頂いているDr.Pooh様のツイートからです。

しかし在宅の24時間対応というのは来年度医師会で取り組まないといけないテーマになりそうなんだよね。どうしたらいいものかなー。

この後にツイートのやり取りがあったのですが、要約すると在宅医療政策が進められ、医師会としてもその対応と言うか、体制作りにある程度関与しておく必要があるみたいなお話です。これでは誤解を招きそうなんですが、もう一つツイートを紹介しておくと、

説明が足りなかったですが,地区医師会で在宅部会を立ち上げて診療所同士で連携するにあたって,そこに自分が関わることになるという話です。個人的には24時間対応していないところも参加できるようにしたいと思っています。ムリしていると長続きしないですからね。

つまり在宅医療に従事する診療所が増えてきたと言うか、今後の大きなウエイトを占めると予想されるので、医師会としても対応部門を作っておこうぐらいのお話です。どことも似たり寄ったりの対応を考えているぐらいには推測できます。ここまでのお話は導入部であって、Dr.Pooh様も所属されている医師会も何もおかしな事をしているわけではありません。



この話から連想した事があります。かつて医療崩壊論議が熱かった頃に投げつけられた言葉です。「投げつけられた」はチトきつい表現ですが、私には結構応えました。おおよそこんなニュアンスです。

    今の医療崩壊を招いたのは、現在の中堅層以上が異常な労働環境を異常とも思わず、無理やり成立させてしまっていたからだ。
まさしく御意です。この言葉に対する弁明としては「当時はそれが当たり前だった」ぐらいしか出来ません。私も該当する世代にはなり、実際もそうであったのは否定できませんし、現実にほんの5年前ぐらいまでは「医師たるものは・・・」の考えが残っていました。今はあんまり言われなくなったかもしれませんが、奴隷自慢は勤務医のありふれた会話でしたし、医師ならそうあるべきだを後進に指導していたのも事実です。

この奴隷自慢の後遺症は深刻で、医療現場の交替勤務推進でも、同じように過酷と言われる看護師に比べ遥かなる遅れを取っています。看護師が三交替であっても過酷なのは否定はしませんが、ほいじゃ無交替の勤務医が過酷でない無い訳がありません。むしろ暴挙とした方が適切です。

看護師側は実に精力的に取り組まれ、交替勤務制は当たり前すぎる物としてあり、さらに人数(定員)の増加、さらには二交替か三交替のどちらが「よりマシか」と言うレベルに達しておられます。さらにそれでも信じられないほど過酷であるから、さらなる改善策を着実に主張し、さらにこれを受け入れさせる行動を粛々と取られています。

ほいじゃ勤務医はになりますが、言うも無残な状況で、未だに当直と言う違法夜勤戦力の確保増強とか、当直勤務の翌日は休みにした方が良いなんて状態です。公的な会議で何の疑問もなく「勤務医の当直負担の軽減」とか、「救急にあたる当直医」なんて表現が使われる始末です。当直医の本来の、さらに厚労省が通達した医師向けの規定を適用すればヘソが茶を沸かす代物です。

そうやって勤務医が「斃レテ後休ム」式の奴隷自慢、滅私奉公をやっているうちに、ここまで勤務環境の改善はなおざりにされ、現在もこれでもかの後回し状態で対応されていると言う事です。この点について私も反省していますし、執念深くブログを続けているのも、ささやかな罪滅ぼしの意味も少しは含まれています。



さてなんですが、厚労省の政策推進により在宅医療が否応無しに定着させられつつあるのは現実です。今日は在宅と施設の効率の話はあえて置いておきます。現実問題としてある在宅医療への対応です。実際問題として取り組まざるを得ないのが実情ではありますが、在宅となると24時間365日対応が問題になります。問題になるどころか、厚労省は熱心に政策誘導に励まれております。

ここでの問題点は、そう遠くない将来に在宅医療も「需要 > 供給」になる点です。今もそうなのかもしれませんが、今より状況は酷くなるであろうです。厚労省もその点の懸念があるらしく、総合診療医の促成栽培からの大量動員のレールを一生懸命に敷きつつあります。厚労省の施策が実を結ぶかどうかは不明ですが、とりあえず大事なのは今かと思っています。

地域事情によって異なる点は多々あるでしょうが、異常に頑張ってカバーしてしまう愚は二度と行ってはならないです。これはサボれとの意味でなく、

    永続できるペースで働く
かつてやらかした「斃レテ後休ム」式の異常な頑張りは宜しくないです。絶対に勤務医の労働環境を異常状態にしてしまった二の舞をやってはならないです。足りないものを無謀な努力で補うのではなく、足りないものは足りないとハッキリ示す事が大事な時期になっていると考えます。本当は足りていないのに、足りるように異常に努力する事は個人としては称賛されるかもしれませんが、行政上の評価は、
    結果としてこれだけの医師数で十分と判断される事が示された
それだけの話に過ぎません。さらにその基準で以後の計画・予算は進められてしまいます。医師は眼前の患者のためには我を忘れる一面はありますが、我を忘れて無理算段した結果が勤務医の労働環境です。在宅に関してはまだ歴史が浅く、厚労省さえも必要戦力の見積もりが不十分です。今、この時にしっかりとしたアピールを行っておかないと、悔いを30年以上は残すと私は見ます。Dr.Pooh様もちゃんと理解しておられてツイートに、

先鋭的な先生が主導するとレベルは上がっても他がついてこないことにもなりかねないですからねー。ほどほどにするのが自分の役割かと思ってます。

「先鋭的な先生」は自分の持ち場だけで働いて下さい。どんなに働いて頂いても何の文句もありませんが、間違っても「オレが出来るから、他も出来て当然」みたいな調子で周囲を巻き添えにするのは御遠慮願いたいです。「今の需要を賄うには、オレ並に皆が働けばしのげる」も宜しくありません。それを日本中でやり続けた報いが勤務医の労働環境として残されているのはあからさま事実です。

医師会の在宅部会に参加するような医師なら、世代的に現在の勤務医の労働環境の形成に手を貸した世代になります。この世代が在宅医療においても同じ遺産を残せば後進にどれだけの批判を喰らうかを自覚して欲しいです。せめて在宅医療においては「そうはさせない」を達成できれば、少しだけですが償えるんじゃないかと考えています。

実りあるものになる事を願っております。現在の勤務医基準が在宅医療に準用されたら、困るのは医師より患者になると思っています。理由はクドくなるので今日は省略させて頂きます。