あの佐賀好生館跡地利用にまつわる軽い話

とりあえず5/21付朝日記事の、

ごく簡単に記事内容を紹介しておけば、あの佐賀好生館が移転する事になり、その跡地に看護大学を作る計画を打ち出したところ、医師会が反対を表明し困っているみたいな内容です。これに対する朝日の「取材後記」は、

 看護師不足は県内でも深刻だ。看護師育成は急務で、大学開設計画は問題解消には役立つはずだ。だが、市医師会は開設に難色を示しているとされる。取材を申し入れたが、「お話しすることはない」と断られた。どんな事情があるにせよ、どうすれば地域医療の危機を救えるのか、正面から議論してもらいたい。(上山崎雅泰、大野宏)

でもって「どんな事情」に対するssd様の推測 が秀逸で、

んなもん、開業医の先生が、4大卒看護師なんかイランという話でんがな。
そんな本音を言わせられるわけないだろ(w。

確かに4大卒の看護師なんかを量産されれば開業医でなくても扱いが厄介になります。これで話を終わっても良いのですが、チョット気になったのは、

来春、移転する佐賀県立病院好生館(佐賀市水ケ江1丁目)の跡地に、鳥栖市九州龍谷短大が移り、看護系の4年制大学を開設する計画に問題が生じている。

へぇ、鳥栖市にも龍谷系の大学があるんだと感心していたのですが、この跡地利用を検討したのが県立病院好生館跡地活用検討懇話会です。そこには第1回会議の結果だけなぜか公開されています。全部で6回あったようなのですが、残りの5回はまだ未公開のようです。その第1回会議の資料3「県立病院好生館移転決定までの経過等」に佐賀好生館の周辺地図が掲載されています。

な〜んだ、佐賀好生館の南隣は龍谷中・高、さらに九州龍谷短大附属龍谷の保育園、幼稚園があります。ここに鳥栖から九州龍谷短大が移ってきて一体化しようの計画に見て取れます。いや、それだけなんですが「なるほど」と思った次第です。


もう一つなんですが、県立病院好生館跡地活用検討懇話会の資料4「県立病院好生館跡地活用に関する市の内部検討状況」には、様々な角度から跡地利用の問題点や周辺整備の課題を列挙した後に、

跡地活用の基本コンセプト
「人が“来る”“住む”」
(サブテーマは『賑わい創出』。)

事務局側の準備資料ですから、ある程度佐賀市側のコンセンサスが出来た上でのコンセプトと考えたいところです。佐賀好生館は旧佐賀城内の一角にあり、また佐賀城を観光地として整備したいのプランもどうもあるようです。それに相反する様に住宅地にするプランも出ているのが珍妙と言えば珍妙なんですが、その辺については第1回議事録概要に経緯をうかがわせるものがあります。

発言者 内容
委員 基本コンセプトについて「人が“来る”“住む”」という説明があったが、「住む」というのは住居等々を想定したものなのか。
事務局 人が「来る」というのは観光、歴史などいろいろな想定でこの地を人が訪れるというのを想定、「住む」というのは定住を想定している。地元からも人口が減っている、お年寄りが多くなってきているという声も聞いているので、そのあたりも意識している。
委員 「人が“来る”“住む”」というテーマと、資料18頁の「住居系土地利用」の説明の「病院跡地であることから、住宅用地として不向きな面もある」という記載は矛盾していないか。
事務局 地元との約束でもあることから、可能性として「住」も残している。ただ、病院跡地であるので「住」という面で活用しづらい面がある。


なるほど住の概念は地元からの要望であったようです。ただ市側はあまり乗り気でないようなのは察せられます。佐賀市の事は良く存じませんが、ここに住宅を建設するのはあまり賢い利用法とは思いにくいところがあります。それは理解できるとして、
    ただ、病院跡地であるので「住」という面で活用しづらい面がある。
私は医療関係者ですから意識していなかったのですが、病院跡地と言うのは住居にするのには忌わしい場所である感覚があるのは初めて知りました。出席者は議事録を見る限り異論が出ていないようですから、どうもそうみたいで勉強になります。さて議論は進むのですが、ある委員の発言です。

県の四師会や市医師会などが参加して「佐賀県保健・医療・福祉拠点検討委員会」を設置し、拠点施設について議論を行っている。長年あの土地は医療の地であったわけですから、そういった拠点をつくりたいという想いを我々は持っている。全国的にみても保健・医療・福祉の拠点というのは少ない。一方で周辺の環境なんかを考えた場合に本当にそういう施設が望ましいのかどうかとも考える。現在まで、委員会、小委員会により8回ほど議論を行ってきているところ。

発言委員名が書かれていないので特定はしにくいのですが、委員名簿には、佐賀市医師会の会長と佐賀県医師会の副会長が名を連ねられておられます。そのどちらかの発言であると推測しますが、この第1回会議では医療系の施設を作るのを推進していた事がわかります。それもかなり具体案を作っていたらしいもわかります。

この意見を受けての会長発言は、

好生館の長い歴史を考えると、“地の霊”というか、その地に宿る精神、精神性というか、やはりあると思う。そういった意味でも、今ご紹介された検討内容は次回以降、もう少し詳しくお聞きしたいと思う。

「地の霊」とはまた物凄い表現で支持している様に思います。後の結果から推測するに、医師会側からの発言から跡地利用は医療系施設へと流れが作られたと考えて良さそうです。医師会側がどんな構想であったか、また市による具体策発表がいつだったかですが、5/11付佐賀新聞に、

 県立病院好生館跡地(佐賀市水ケ江)に看護系4年制大学などを新設する計画で、佐賀市は10日の市議会全員協議会で概要を報告した。6月にも具体化に向けて協議する連絡調整会議を立ち上げ、詳細を詰めていく。

 跡地には学校法人佐賀龍谷学園が現在、鳥栖市にある九州龍谷短期大学を同地に移転し、短大に加え、新たに4年制の単科大学を新設。県医師会などが検診センターをはじめ、健康づくりの支援施設を建設する方向で協議を進めている。大学は全体で学生数500人程度を想定している。

正式発表は5/10の市議会だったようで、看護大学と医師会による健診センターを作る作る案です。これが5/10に突然発表されたかと言うとそうでもないようで、5/8付朝日記事に既に、

2013年春に佐賀市嘉瀬町中原に移る県立病院好生館(同市水ケ江1丁目)跡を4年制大学と医療福祉施設として活用する方向で関係者の話し合いが進んでいることが分かった。

どうも関係者会議で摺り合せが行われていたようです。でもっていつの時点から医師会が難色を示したかですが、5/18付佐賀新聞より、

    正看護師の資格が取れる3年制の看護学校を検討し、最終的に4年制大に行き着いた。
状況証拠ばかりなんですが、跡地に看護学校を作る事自体は医師会も賛成していたと見て良さそうです。そうでなければ案が発表される前にもっと揉めていたかと思います。つまりある時点までは3年制の看護学校の計画であったのが、最終段階で龍谷側の要望で4年制大学に代わり、話が違うと医師会が渋面を作ったです。

あくまでも推測ですが、舞台裏はこんなもので、医師会が渋面を作った理由はssd様の推測に同意です。