無線LANの個人では対処できない困った話

今日は医療とはまったく関係ない、前に悪戦苦闘した無線LANのお話です。この分野についてはお世辞にも詳しいとは言えないので、

ここを参考資料として勉強してみます。無線LANの規格は、こうなっているそうです。うろ覚えですが、私も無線ルーターを購入した時に目にしたように記憶していますし、たしか売り文句は「b/g/n対応」(g/nだったかな?)なんて書いてあったと思います。もう少し言えばそれ以外の無線ルーターは売っていなかったようにも思います。これらの規格の細かい違いはリンク先を読んで頂くとして、それらの規格はすべて、
    2.4GHz帯
これを使う事になります。この2.4GHz帯ですが無線LANに使われるだけではなく、

コードレス電話や電子レンジ等も同じ2.4GHz帯を使っている

これも無線ルーターの注意書きに書いてありました。電子レンジはともかく、院内ではコードレス電話を使っているので、設置時にトラブルについて少し懸念した記憶も残っています。それでも電波としてチャンネルが13あるとなっており、これを干渉しない様に自動的に切り替えるとなっていましたから、13もチャンネルがあれば「まずは大丈夫だろう」ぐらいと思ったものです。

ところがですが、13あるチャンネルはすべては独立していないそうです。

IEEE802.11b/g/n」の機種では、一般的に1〜13チャンネルのいずれかを使用しているはずですが、
実は、完全に独立して使えるチャンネルは3つまでなのです。

これもリンク先の図を確認して欲しいのですが、たとえば1チャンネルと2チャンネルは8割ほど重複しています。チャンネルとして別でも、周波数帯が重複している部分が多く、同時に使えば干渉が起こると言う事です。アクセスが3つまでなら完全に独立した干渉のない無線環境を提供できても、4つ目のアクセスが来ると、どこかと干渉すると言う事です。干渉が起こると接続が不安定になります。

それでも一般家庭で同時に4ヶ所も使う事はそうはないんじゃないかの考え方はあります。当院で考えてみると、コードレス電話が2個、プリンターが1個、無線接続にしているPCが1台です。全部を同時に使えば干渉が発生する可能性は残りますが、そうは起こる可能性はありません。自宅に至ってはiPod touch一つですから、実際にも問題は体感的に起こっていません。


では例外的な問題かと言えばそうではないの指摘がなされています。

今や、一家に1台無線LANアクセスポイントがあるような状況です。
実際に、無線LANの接続が不安定だと言われて行ってみると、
電波を拾えるアクセスポイントが、やたら数多く検出できたりします。
ほとんどすべて、2.4GHz帯のアクセスポイントです。

メーカーも機種も無線ルーターには沢山ありますが、使っている周波数帯は同じですから、お隣の無線ルーターの電波も干渉の原因になると言う事です。たしかに私が購入した無線ルーターは「強力」タイプではなく廉価品ですが、それでも予想以上に広い範囲に電波が届きます。「一家に1台」時代となれば、向こう三軒両隣からの電波がバトルロイヤルする事になります。

そう言えば自宅で無線ルーターを設置した時にも、どこかからの電波を確実に受信していました。


こういう状況と言うか基礎知識を踏まえた上で、

これを読むと興味深くなります。

ちょっと前に、とある近郊の小さな駅に用事があっていくことがあったんです。その駅の出口からすぐ目の前には、小さな個人商店がたくさん並んだ商店街っぽい感じの道があるんです。大体、すべてのお店が、間口3m〜5m程度の。

そこで見た驚くべき光景とは。

隣り合ったお店ことごとくに、ソフトバンクWi-Fiステッカーが貼ってあるんですよ。駅に一番近い定食屋みたいなところから、その商店の並びの果てまで、全部のお店に「Wi-Fi使えます(犬)」のステッカーが貼ってあるんです。

電波干渉の巣窟状態になっている事がわかります。そうなるとどうなるかですが、

Wi-Fiは基本的に自律的にタイミングをずらすことで電波が潰れることを防ぐ方式です。ただし、電波がつぶれない代わりに、他のAPや端末が出した電波をよけるために、それを避けるのに必要な時間以上を自発的に止めるということが必要になるため、他のAPや端末が増えれば増えるほど加速的に効率が悪くなる方式です。

このため、一つのフロアに複数台を設置したり、またその配下に多くの端末を収容したり、あるいは、近隣に多くの他社APがあるような場所では、無線LANの通信効率が非常識なほど落ちてしまい、たとえば、Wi-FiVoIPを活用した構内電話システムを作ってはみたけれどほどなくまともに通話できなくなってしまった、などという問題を起こしています。このため企業では、AP同士の配置を綿密に設計し、さらに隠れ端末問題の排除のためにWi-Fiの電波を遮断するパーティションを設けるなど四苦八苦していたんです。

それとこう言う事がごく最近のトピックスかと言えばそうでもないようで、

2000年代前半、企業へのWi-Fi導入が盛んだったころ、ネットワーク系の専門誌は一時期どこも「これからは構内Wi-Fiで低コストLANを」という論調一色だったんですが、その1〜2年後から一斉に「企業を悩ます構内Wi-Fi」という話題があふれたんです。

10年前ぐらいに企業無線LANで大問題になり、その対策が行われたようです。



読みながら漠然と頭に思い浮かべていたのはトランシーバーです。トランシーバーも決められた周波数帯を使います。同じ周波数のチャンネルでは1つしか通話できないです。同じ周波数で複数が通話したら混線状態になるです。トランシーバーも少人数が使う分には問題ないのですが、同時に10人とか20人が受診地域で交信しようと思えば混線で通信不能状態になる(・・・と思う)です。

無線ルーターも機能的にはトランシーバーと同じように考えれば理解しやすそうです。一定範囲で少数の無線機器を使う分には配線がなくなって快適ですが、多数が同時にアクセスするとなればパンクするです。

多数アクセスは目に見えている無線ルーター1個だけの問題に留まらず、他の無線ルーターとも起します。機種は違い、他人の無線ルーターであっても、使っている周波数も機能も同じですから、自分は1個しかアクセスしていなくとも、向こう三軒両隣がテンコモリのアクセス環境を持っていればビシバシ干渉現象が発生するです。

ちょっと深刻だと思うのは、2000年代前半に企業で問題になった時には解消方法はあったです。同じ企業内の事ですから、原因さえわかればシステム改善は可能です。しかし家庭の無線ルーターで発生した場合には、これの解消方法が事実上無い事になります。まさか向こう三軒両隣に「無線はやめてくれ」と捻じ込むわけにはいかないからです。


無線LANは設定は時に手強いですが、使える様になれば配線地獄から確かに解放してくれます。私も無線LAN環境が手に入った時に「なんと便利な文明の利器」と無邪気に喜んだものです。ただ普及すればするほど、今度は干渉問題が深刻になる構図もありそうです。うちの無線LAN環境が今後もトラブらないように、近隣に無線LANが普及しない事を密かに祈っておく事にします。