筑西・下妻保健医療圏の「しんみり」した話

ssd様も取り上げた、タブ紙の3/3付記事、

これから面白いネタでも発掘できないかとググっていたら、なんとも言えない気持ちになってしまいました。とりあえず直接の舞台になっている筑西市桜川市の人口なんですが、
    筑西市:107307人(1995年には118078人)
    桜川市:46554人(1995年には51972人)
wkipediaで調べた程度ですが、17年前から長期低落を続けています。これも詳細には調べていないのですが、この手の地方都市の人口がジリ貧になれば、
  • 税収をアテに出来る勤労人口の減少
  • 社会保障費用が増える高齢者人口の増加
これが両輪で起こり、財政は悪化の一途になります。どんなにうまくやっても余裕無しです。それでもって合併対象とされる筑西市民病院ですが、タブ紙には、

特に筑西市民病院は柱が損傷し、現在は新入院病棟(50床)でしのいでいます

これだけ読めばもっと多く(病院HPには173床とあります)の病床があったのが、震災のために縮小を余儀なくされたのかと思いそうですが、

平成15年9月
病床数を223床から206床に変更
平成17年7月
病床数を206床から173床に変更
平成20年1月
運用病床数を60床として届出
平成22年6月
4階病棟個室改修工事完了。運用病床数を90床として届出
平成23年3月 東日本大震災により入院病棟閉鎖
平成23年11月 新病棟完成 運用病床数50床として入院再開


たしかに震災の影響により病床は減っていますが、震災前にかつて206床あったものが90床まで減少していたことが確認できます。ここまで病床数を減らしての病床利用率を平成21年度病院経営分析比較表(茨城県)で見てみると、1日平均在院患者数が43.0人。平成21年は60床で運用していますが、90床に換算して47.8%になります。


問題になっている筑西・下妻保健医療圏には4つの一般病床を持つ病院があり、筑西市には市民病院のほかにもう1ヵ所協和中央病院があります。ここは、

    共和協和中央病院:一般199床
    共和協和南病院:療養109床
共和協和中央病院の沿革を見ると、昭和54年に48床で始まっていますが、手広く経営の手を広げ、共和協和中央病院が199床になったのは平成9年、共和協和南病院が109床になったのは平成12年となっています。筑西市民病院は平成15年まで233床あったわけですから、一時は筑西市に432床が存在していた事になります。なんとなく生き残ったのが共和協和中央病院であったような気がしてなりません。


もう一つの県西総合病院ですが、沿革の大要に、

昭和32年6月岩瀬町国保病院として開院、その後隣接する大和村、真壁町、協和町明野町を含めた5ヶ町村による一部事務組合立として昭和43年12月県西総合病院が発足しました。

ここも昭和43年には

一般195床、結核33床、伝染30床

こういう規模でスタートしたのですが、ここも順次拡張され昭和55年には一般299床までになっています。そうなると筑西市桜川市は一時的ですが両市合わせて平成9年から12年にかけて731床の一般病床があった事になります。ところが平成12年には46床を療養に転換しています。転換しても構わないのですが、県西総合病院にも興味深いデータが出ています。県西総合病院改革プランの点検・評価より、

項 目 20年度 21年度
経常収支比率 91.70% 100.60%
医業収支比率 81.10% 84.50%
職員給与費比率 81.70% 73.10%
病床利用率 42.60% 47.20%
1日入院患者数 129人 136人
1日外来患者数 430人 426人

今日は経営データはさておきますが、病床利用率を見て唸っています。これは参考データに過ぎませんが平均在院日数も凄いデータが残されていまして、
病床区分 H.19 H.20 H.21
一般病床 58.7日 43.3日 40.9日
療養病床 45.8日 38.8日 71.6日

ついでですから筑西市民病院は、
病床区分 H.19 H.20 H.21
一般病床 43.1日 19.9日 24.8日

経営の事は触れないとしていますが、平成21年度病院経営分析比較表(茨城県)で見る限り累積赤字はともかく単年度の純損益は両病院とも黒字にはなっています。詳細については余裕のある方は分析してみてください。 それともう一つ筑西・下妻保健医療圏には一般病床を持つ城西病院と言うのが結城市にあるのですが、ここも民間病院で手広く多角経営を行っており、病床規模は一般113床、療養148床となっています。 ここで仮に震災前の状態として、筑西市民病院が実働50床、県西総合病院が実働150床(療養病床を含む)と考えればあわせても200床しかありません。そういう状況下で300床の新病院の必要性になります。大きくなった方が医師を呼ぶ魅力も増すでしょうし、新たな需要を喚起する可能性もあります。一方で従来の病床利用率を考えると果たしてペイするかの疑問は出て来ても不思議ないと思います。 なんとなくですが、この合併に桜川市が反対しているのは、新病院が筑西市に作られるという地域エゴはもちろんあるとは思います。ただタブ紙に書いてある

県西総合病院は現行の299床から120床程度に縮小する案

これにしても、現在の一般病床の実運用数が150床程度(もっと少ないはず)である上に、あらたに新病院が300床で出来上がれば共倒れの懸念が大です。まあ、すべて療養病床にするのかもしれませんが、経営がさらに悪化するとの懸念が出てもおかしくありません。タブ紙にある

桜川市議会は2回にわたり否決。「両市合わせて人口15万で、経営は赤字になりかねない。県が担うべきだ」「民営化の選択肢はないのか」など経営の根本に関わる議論が噴出。2月29日の臨時会は議長が審議入りの必要がないと判断しました。

なんか空気として、そこまでして自力で自前の病院を維持する事への疑問が出ている様に感じてなりません。まとめの話的なものが最後に必要なんですが、とにかく「しんみり」した気持ちになっています。進むか、退くか、留まるかの、どの選択が一番良いかは正直なところ私には判りません。