小さな停電対策

昨日の話の続きですが、もっとスケールを小さくして診療所で出来る範囲のお話です。まずはhiro様のコメントですが、

こちらは中国電力の管内なので停電の可能性は少ないのですが、それでも心配でいろいろ対策はしています。

かなり前に台風の塩害で長期間停電した時に今後のためにと購入していた発電機を引っ張り出してきたのですが、メンテなんてしてないので動かなくなっていました。しかたないので震災需要がなくなった秋に3000Wの発電機を購入したのですが医薬品用の冷蔵庫とレセコン2台、分包機これだけでいっぱいになります。実際は同時に負荷をかけなければまだつなげられるのでしょうが定格電力の合計だとこれぐらいで一杯です。レーザープリンターは結構電気を食うのがわかりましたが、プリンター買い換えるのももったいないし。

6000wの太陽光発電もあるのですが、15Aまでしか出力ないんですね。非常用コンセント1個だけですから、長い長い延長コードが必要になって実用的ではありません。高い買い物のくせに役立たずです。売電もびびたるもので元も取れそうではありません。

診療所レベルでは冷暖房を無視しても、まともな診療するための電力を自力で確保するのは非現実的なようです。有床診療所や病院も非常用発電でどれだけカバーできるのでしょうか。

発電機安心料としては少し高いですが、ワクチンが夏場におじゃんになるのリスクを考えると仕方がないかと考えています。ヒブ・プレベナー・サーバリックス・ロタすべて合計するとけっこうな金額になりますので。

とりあえず3000Wの自家発電機がどんなものか探してみたのですが、自家発電機にも2種類あるようでインバーター搭載と非搭載があるようです。でもって精密機器にはインバーター搭載の方が良いらしく、レセコンにも使うとなればインバーター搭載の方が良さそうです。でもってhiro様が購入されたものと同じかどうかわかりませんが、2800Wで24万円ぐらいします。

連続運転時間は条件にも依りますが20時間は可能となっていますので、診察時間ぐらいはカバーしてくれそうです。ただ問題は購入価格とか、収納場所もありますが、

    今後のためにと購入していた発電機を引っ張り出してきたのですが、メンテなんてしてないので動かなくなっていました
そうなんですよねぇ。機械物はある程度定期的に使っておかないと動かなくなります。この定期的に使うと言うのが実際にはかなり面倒で、いざと言う時に動かないはありえてしまいます。そう言えばAEDでもそんな話はありました。

hiro様のところが凄いのは、

これも前にチョット気になって調べた事があるのですが、hiro様もお書きになっている様に、基本的に売電用の装置であって、自家用の非常電源に使おうとすればコンセントは1個しかありません。これを非常用に活用しようと思ったら、長い延長コードとそこからのタコ足配線が必要になります。それと日が暮れると無力ですし、天候でも発電量はかなり左右されます。

他にもポータブル蓄電池みたいなものもありますが、これもまた発電機同様にメインテナンスの問題が付いて回ります。当たり前ですが停電前に充電しておかないと役に立ちませんから、自然放電していたら本番では役に立たないです。結論的には、

    診療所レベルでは冷暖房を無視しても、まともな診療するための電力を自力で確保するのは非現実的なようです。
hiro様のところはどうも自己所有の診療所みたいですから、自家発電機や太陽光発電装置を備え付けられましたが、うちのようなビル診ではそもそも難しいところです。また備え付けても「これで診療もバッチリ」にはいかないようです。

それに冷暖房の問題も大停電なら無視できません。停電も非常事態ですが、それこそ地震とは様相が異なります。とくに昼間ならかなり平穏な状態ですから、真夏の冷房、真冬の冷暖房の停止が長時間化すればたまりません。たまらないのは職員もそうですが、患者もたまらんと言うところです。言うても診療所レベルの患者ですから、「それでも」の需要は多いとは言えません。

停電時でも普段どおりにフル稼働は余程のコストと手間をかけないと現実的ではないとして良さそうです。それに院内調剤ならともかく、院外調剤なら薬局の問題もあります。薬局も同様の自家電源で武装してくれないと診療所だけでは実質として機能しません。薬品だって大停電で1日単位で続けば、問屋からの配送が期待しにくくなりますから、無い物はないになります。またモーター揚水式の水道方式なら断水もありえますから、そこまでの備えは個人の限界を越えるとして良さそうです。


そうなると停電、とくに大停電時の対策は発生時にどうするかを考えるのが現実的になります。診療開始のかなり前、たとえば前夜からなら素直に休診です。だいたい職員が出勤できるかどうかさえ怪しい話になるからです。連絡を取るにも電話回線が生きているかもありますし、生きていてもパンクする可能性は大です。つまり連絡を取れるかどうかは運次第と言う事です。

それでは診療時間中に発生すれば、その場に居合わせた患者をどうするかになります。ここも結構悩ましい問題で、懐中電灯程度でも小児科診療所レベルなら99%ぐらいは対応可能です。重症患者が「たまたま」の話は今日は置いといて、患者が帰れるかです。停電状態では電車はもちろんですが、バスも信号の問題もあって運行されるかどうかは疑問です。

自家用車であっても、立体駐車場だとか、コインパーキングなんて利用していたら動かせない可能性があります。道路事情もどうなるかも未知数です。要するに「帰れない」と言われたら少々困るです。ちょっとこれには適当な対策が見つかりません。置いておくとした重症患者問題も、もし起これば難題で、これも適当な対策が思い浮かびません。


それとこういう時に一番困るのが情報不足です。どの程度の範囲が停電を起こし、どのぐらいで復旧するかの情報の入手をどうするかです。情報は重要で、診察中の停電なら、復旧を待つのか休診にするのかの大きな判断材料になります。停電の規模、復旧見通しで対応が変わってきます。普段の情報入手経路であるネット、テレビ、さらに電話が使えないと想定すると・・・ラジオが生き残りそうです。

テレビも生き残るとは思うのですが、電池式のテレビをわざわざ買うよりラジオの方が安価ですし常備するのにかさばりません。あれこれ考えたのですが、昨日の院外薬局の話と合わせて、停電対策として最低限として備えて置くのは、

  1. 情報入手のためのラジオ
  2. 散薬処方のための電源のいらない秤
  3. できれば照明としてのランタン
  4. 電池
うちの診療所的には院外薬局との秘密会談で秤を停電時用に購入を検討(持ってませんでした)してくれるそうですから、ラジオをとりあえず買ってくる事にします。ついでにランタンも買っておこうと思います。ささやかですが、それだけあれば最低限はしのげそうです。もう少し広げるのならhiro様のコメントにある、
    ワクチンが夏場におじゃんになるのリスク
これへの対策です。自家発電機以外で良い手はないかと考えたのですが、お手軽にはクーラーボックスはどうだろうかと思います。冷蔵庫に保冷剤を冷やしておいて、停電時にクーラーボックスに移しワクチンを冷やしておくです。これについては保冷時間と保冷力がどれぐらいになるか良く分からないのですが、それぐらいなら対策出来る範囲です。

最後は出たとこ勝負としか言い様がないところです。やっぱり大停電は起こって欲しくないですねぇ。