ブログのこれから

私の理解している範囲でネットでの意見表明ツールの登場順は、

実際の起源論はまた別にあると思いますが、おおよそメジャーになった順はこんなものだと考えています。どの方式も今でも健在ですが、基本はBBSにあるように思っています。BBSの欠点と言うか弱点は2chを見れば判るような気がしています。弱点と言っても2ch特有の表現の強さではなく、BBS方式で起こる話題の拡散です。

あれだけ自由気ままと言うか、放埓な発言が跋扈する2chですが、あそこにも鉄のルールがあります。いわゆるスレ違い、板違いです。これについての適用は厳格で、破るものは速やかに寄って高って放逐されます。その代わりに無数とも言える板やスレがあるわけです。これは逆に言うとBBS方式がいかに話題が拡散しやすいかの証拠になると見れます。

これに対してブログは最初にBBSのスレの主旨を明記したようなものだと見ることが出来ます。主旨が明記してあるので話題の拡散防止にも有用ですし、主旨だけで従来のHPでの主張が可能になります。

ブログの基本は、HPでの意見の下にBBSをくっつけたような物だと考えています。かつてのHPにはそういう方式のものがありました。この方式の難点は、作るのが厄介な点です。昔試作した事がありますが、そういう形式のページを量産する手間にウンザリした記憶があります。BBSでも今のブログに近い形式のスタイルもありますが、自作で自分のHPに掲載するには、それなりのWeb知識が必要だったとさせて頂きます。


このブログが日本に登場普及していた時代に言われたのが「インターネット上の日記」でした。今から思えば、これはブログを普及させようとしていた人のブログへの認識がよく出ていたと思います。トラックバックシステムもそうだと思うのですが、ブログの利用法としてかなり狭い範囲のコミュニケーション・ツールを想定していた傍証になると考えています。

かなり古手のブロガーはブロゴスフィアなる言葉を使っていました。定義は幾通りかあると思いますが、初期のブログでは、そのブログが及ぼす影響範囲は狭く、その狭い範囲のブログ世界が構築される事をブロゴスフィアとしていたように理解しています。使われ方の主体として、日常の話題や趣味となり、その話題に集まる同好者グループみたいな方向性です。

狭いグループに対してのコミュニケーション・ツールですから、私もなんのためにあるのか良くわからなかったトラックバックがあり、これはあなたの意見に賛同ないし興味がありますのサインであったと理解しています。狭いコミュニケーションですから、トラックバックが来る相手もよくわかり、たとえ知らなくともトラックバックを契機にコミュニケーションの輪が広がるとでもすれば良いでしょうか。

そう考えるとSNSが登場して来たのはよくわかります。ブログは狭い範囲のコミュニケーションを目指すとする割りには発信方向がオープンです。そんなに範囲の広くないコミュニケーションならクローズにしてしまった方が使いやすいです。ま、SNSmixiのように巨大化してしまうとオープンなのかクローズなのかの境界線が曖昧になりますが、ブログのクローズ版がSNSぐらいと理解しています。

フェースブックは参加していないので実態は良く知らないのですが、クローズのSNSのさらに実名版ぐらいに考えています。狭いコミュニケーションの行き着く先は相手の身元のより詳しい確認です。SNSも基本は匿名であるところがあり、最後の最後のところで相手確認が不確実ですが、フェースブックになるとリアルに近い形の身許確認が可能になります。狭いコミュニケーションのさらなる発展系と見ることが出来ます。



もう一つの方向性として、ブログの内容は自由だと言う点です。長文を書いてもよし、短文であってもよしです。とくに短文量産型のブログを書かれる方はかなり多かったと思っています。時事でも、日常の事でも、何かあれば短文でサッと感想を書くスタイルです。そういうスタイルの書き方の人はブログは使いにくかったかもしれません。

いつでも気の向いた時にサッと書き込める要望に特化したのがツイッターと見ています。ツイッターを「ミニブログ」「マイクロブログ」と解説しているのに違和感もあるのですが、短文形式のブログと考えれば理解出来ます。

ツイッターにはもう一つ、人を魅了する機能があります。ブログでは他者のブログを読もうとすればRSSで引っ張り込むか、相手のサイトに行く必要があります。ましてやコメントを書こうとすれば相手のブログに行かないとどうしようもありません。ツイッターは相手のツイッターをフォローするだけで自動的に自分のタイムラインに流れ込んできます。

またコメントを返すのも簡単で、自分のタイムラインから返信を書けばそれで事足ります。それより、なによりフォローしている人のツイートがどんどん流れ込んでくるので、何も書かなくとも自分のツイッターが賑わっている様に見えます。

ツイッターがブログの発展型かと言われると判断に悩むのですが、短文ブログの流れは組んでいるとは思います。ただそれだけでなく、ブログのコメ欄の相互乗り入れ、さらには短文エントリーの相互乗り入れがツイッターだと思っています。むしろBBSに近いとも言えますが、BBSの欠点であった話題の拡散性をあえて伸ばしたツールと言えるかもしれません。


この辺のツールの相関関係をあえてまとめてみると、

HP
BBS
ブログ 広い範囲に発信指向 長文 ブログのまま
短文 ツイッター
狭い範囲のコミュ指向 SNS フェースブック


需要あるところにツールの発展ありみたいな形です。ブログがかつて猫も杓子もブームになったのは、ブログには、
  1. 手軽にHP形式で意見表明が出来る
  2. BBSより話題拡散がしにくい
  3. SNS的な要素もツイッター的な要素も兼ね備えていた
自分でHPを作るのはあれで手間ですから、お手軽になんでも出来るブログにどっと流れ込んだと考えても良さそうです。現在のブログの伸び悩みと言うか衰退傾向は、かつては他にツールが無かったために取り込んでいたSNS層やツイッター層が専用ツールの誕生により離れていったと見て良いかと考えます。


ブログ後に誕生したツールは専用ツールで使いやすいというだけではなく、ブログ最大の欠点を覆い隠す特徴を備えています。上述もしていますが、短期に自分の目に見える部分に賑わいを呼び込みやすいです。BBSにもそういう面がありますが、ブログもコミュニケーションツールと言いながら、実際にコミュニケーションを広げるのは大変難しいツールです。

これはLife mediaリサーチバンクの調査結果からなんですが、

アクセス数 比率 累積比率
わからない、ほぼ0 26.3% 26.3%
1〜5程度 24.2% 50.5%
5〜10程度 11.2% 61.7%
10〜50程度 19.0% 80.7%
50〜100程度 9.0% 89.7%
100〜200程度 5.8% 95.5%
200〜500程度 3.1% 98.6%
500〜1000程度 1.0% 99.6%
1000〜2000程度 0.3% 99.9%
2000〜5000程度 0.3%
5000以上 0.1%


四捨五入の問題か、累積合計が100%を超えてしまうのは御愛嬌ですが、だいたい9割のブログがアクセス数が100以下であり、8割が50以下であり、6割が10以下であると言うのが確認できます。もう少し言えばアクセス数5以下が約半分です。この手の調査は前からありますが、傾向は大きく変わっていません。ブログを書いてもある程度の人数に読まれる様になるのは1000に3つ程度と言う事になります。

ブログと言ってもしょせんは読み物で、アクセスが増えるかどうかはその内容に依存します。簡単には読む方が「面白い」と感じてくれないと寄り付いてくれないと言う事です。ほいじゃ、面白い内容を書けば解決なんですが、どういう内容を書けば面白いと感じるかのマニュアルはありません。あればモノを書く職業の方は苦労しません。

長ければ良いと言うものでもありません。あんまり長いとページを開いただけでウンザリして閉じられます。うちも長い方の部類に入ると思うのですが、何故にこんなに長いのが読まれるのかの説明をしろと言われたら立ち往生します。ほいじゃ、短ければ良いかと言うと、短いと一瞬に読んではくれますが、短いだけに余程インパクトを与えないと、読み捨てで固定読者にまで至りません。

さらに一番大変なのは、ブログは連載形式である事です。単発で良作を書いて人気を集めても、読者は常に次を要求します。この次なんですが、水準として良作に劣らぬものを要求します。つまり常に一定水準以上のエントリーを量産できるところだけが人気ブログとして成長する事になります。そしてその確率は1000に3つ程度と言う事です。



ではではこのままブログが消えてしまうかどうかです。需要としては消えないと思いますが、問題はネット上の無料ツールとして存在するぐらいの需要が残るかどうかが鍵になりそうです。ブログは一時需要が巨大化しています。巨大化すると巨大化したサイズに合わせてブログ運用会社も大きくなります。ここで巨大化した需要が急速にダウンサイズを起こすと、それだけで経営破たんする事は多々あります。

ブログを書くだけならレンタルサーバーで自前で挙げても可能は可能ですが、そこまでの手間をかけるかと言われれば、多くの人はやらなくなります。ブログ前の時代のようなものです。

私もブロガーの端くれですから、ブログと言うツールは残って欲しいと思ってはいます。しかしこの私だってもっと便利に、私が書きたい方向性に適したツールが出現すれば移るかもしれません。かつてブログを書いていたものがSNSツイッターに移行した様にです。

ま、そういうツールがまだまだ出現する余地が幾らでもあるのがネットの楽しさであり期待なんですが、これに関してはどちらかというとワクワクしています。