まずは11/15付読売新聞 yomiDr.より、
彷徨う再生医療/京都のクリニックで治療後、韓国人が死亡。なぜ?
弘法大師・空海は、唐の都・長安で真言密教を学び、日本に広めた。密教とは、言葉では伝わらないため、修業などを通して学ぶ「秘密の教え」。その教義を実践する 根本道場が、京都市中心部にある東寺だ。京都駅近くの新幹線車窓からも見える東寺の五重塔は、京都のランドマークタワーとして知られる。終日、観光客が絶えず、一方で、信徒にとって今も、大切な信仰の対象となっている。
そのすぐそばの静かな住宅街の一角に、明るいベージュ色のモダンなコンクリート製の建物が建つ。大きなガラスと曲線的な外観が特徴的な建物と、5階建てのマンションのような建物の2棟から成る。前者の個性的な建物の1階バルコニーには、外周を囲むように木が植えられ、おしゃれな白いイスがいくつか置かれている。もともとは、企業の研修施設だったそうで、それを大きく改修したという。
木造2階建て住宅が多いこの地域では、明らかに浮いた存在だ。際立つ存在感とは裏腹に、その実態は闇に包まれている。
「何のための建物か、知っていますか」と、周辺住民に聞いても、首をかしげる人が多い。
「話している言葉から、出入りしているのは韓国人だと思う。我々とは接触がなく、何をしているのか分からない」
「在日韓国人の知り合いに尋ねても『知らない』と言っていた。本国の人しかいないみたいだね」
「突然、大型バスで大勢の韓国人がやってきて建物に入っていく。何か宗教的なものだと思っていた」
そんな感想が返ってきた。かなり不気味な存在だったらしい。記者は7月半ば、初めて、ここを訪れたが、人の出入りはなく、ひっそりしていた。インターホンを押しても誰も出てこない。周辺住民によると、2011年に入ってからは、韓国人の姿がほとんど見られなくなったという。
ただ、ある中年女性だけは、少し、「秘密」を知っていた。「韓国人を連れてきたバスの日本人運転手にこっそり聞いた。本当かどうか知らないけど」と前置きして言葉を継いだ。
「韓国のバイオ会社が、患者の体から細胞を取り出し、それを戻す治療をここで行っているそうですよ。韓国で行うと違法なので、日本にクリニックを作ったらしいです」
建物全体をよくよく見回すと、上部の外壁には「RNL bio(アールエヌエル・バイオ)」、正面玄関近くの外壁には、しゃれた字体で「Bethesda Clinic(ベテスダ・クリニック)」という英語の文字が書かれてある。人の出入りがないのは当然だった。2011年5月、税金滞納で不動産が差し押さえられており、事実上、閉院していたのだ。
働きが悪くなった細胞・組織・臓器を作り直したり、改善させたりする「再生医療」を試みているクリニックだった。ここで2010年9月、自分の細胞の投与を受けた後、一人の韓国人が亡くなった。
ミステリー仕立てみたいな表現が散りばめてある上に、字数制限が厳しいはずの新聞記事にしては東寺の説明が無闇に長いのですが、それは置いといて焦点は、
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Bethesda Clinic(ベテスダ・クリニック)
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2011年5月、税金滞納で不動産が差し押さえられており、事実上、閉院していたのだ。
京都ベデスタクリニックは2010年5月に開院
1年しか持たなかった事になります。ただひっそり開院して、ひっそり閉院したかですが、閉院はともかく開院の時はかなり派手だったようで、20101.5.9付聯合ニュースに開院の時の様子が写真で掲載されています。リンク先の写真を良く見て欲しいのですが、風景はテープカットの瞬間である事がわかります。
そしてズラリとならぶ面々ですが、左端は京セラの稲盛会長だと考えられますし、その右側は前原誠二氏であると思われます。でもってこの開院式の会場がどこかなんですが、2011.3.7付京都・環境ウォッチに、京都の雑誌「ねっとわーく京都」の3・4月号ー「覆面記者座談会」の記事が引用されています。
ー4月号ー
その「富裕層観光」の続きとして
「京都に韓国系企業による再生医療クリニックが開設され、その開設式に京都市の副市長はじめ国交省・観光庁の役人が参加している。自分は安全問題や富裕層向け医療という点で疑問や不安を感じている」との情報から、話題が展開されている。
「昨年5月にホテルオークラで韓国のバイオ関連会社『RNLBIO』によって、成人幹細胞治療の専門病院である京都ベテスダクリニックの開設式が行われ、そこに京都市の副市長も参加していた。京都ベテスダクリニックは何をやる病院かと言えば、いま話題の最先端の医療技術である幹細胞を使って、アトピー、リュウマチ、糖尿病、ガンなどの治療を行う・・・」
開院式はホテルオークラで開催され、
ま、稲盛氏、前原氏の横に並ぶのに相応しい人々がおられたと考えてよいでしょう。それと読売記事にある-
ただ、ある中年女性だけは、少し、「秘密」を知っていた。「韓国人を連れてきたバスの日本人運転手にこっそり聞いた。本当かどうか知らないけど」と前置きして言葉を継いだ。
「韓国のバイオ会社が、患者の体から細胞を取り出し、それを戻す治療をここで行っているそうですよ。韓国で行うと違法なので、日本にクリニックを作ったらしいです」
クリニックを韓国でなく日本に設立したのは、韓国では自己幹細胞の治療を薬事法で「医薬品」として管理しており、複雑な臨床試験など厳しい規制を設けているため。日本では、自己幹細胞の治療を「高度先進医療技術」と定め、医師の判断の下で自由に治療が可能だ。
で、どの程度の目論見だったかも聯合ニュースにあり、
京都ベテスダクリニックは、来年1万人、2015年には10万人の患者を誘致する計画だ。これが実現すれば、産業的価値は3兆ウォン(約2379億円)に達すると見込まれる。
こうはならなかったから1年で閉院しています。それにしても10万人とはかなり野心的な計画であったのがわかります。読売記事では見出しに「韓国人が死亡」としている割りには、シリーズ物のためか一言も記事中では触れていないのですが、2010.10.23付東亜日報に、
国内で許可されていない幹細胞治療を中国や日本で受けた患者2人が死亡したことが分かった。国会保健福祉委員会の朱昇鎔(チュ・スンヨン)議員(民主党)は22日、国政監査で、「先月30日、バイオ企業アール・エヌ・エル・バイオの協力病院の日本の京都ベデスタクリニックで、幹細胞治療剤の投与を受けたイム某氏(73)が、肺動脈塞栓症で死亡した」という事実を公表した。肺動脈塞栓症とは、血管に流れる浮遊物が血管をふさいで生じる。この患者は、アール・エヌ・エル・バイオと1年間のメディカルツアー契約を結び、日本に渡って治療を受けた。
2010.10.23時点で2人が死亡していると韓国政府が発表している事が確認されます。東亜日報にはバイオ企業アール・エヌ・エル・バイオの営業手法も証言としてあり、
朴氏は、「アール・エヌ・エルは、『コーディ』と呼ばれる営業社員が別の患者を紹介すれば手当を与える方式で営業している」と話した。
なるほどの営業手法です。このバイオ企業アール・エヌ・エル・バイオですが京都だけに拠点があったわけではなく、
アール・エヌ・エル・バイオは、中国、日本、米国など8ヵ所で協力病院を運営し、約8000人の患者に施術している。
どうもなんですが、2010年5月に開院したものの、2010年10月に死亡事故が公表され、その後の逆風で沈没したと考えて良さそうです。たぶんですが、日本が8番目の開院で、いわゆるメディカル・ツーリズムとして発展すると踏んで、稲盛会長、前原誠二氏、京都副市長、国交省・観光庁の役人が集まってと考えて良さそうです。
しかしよく読んでみれば「約8000人」とは協力病院数からするとささやかです。この8000人が述べ数なのか、年間なのかですが、院長あいさつにこうあります。
8000例を超える症例を経験する中で
このあいさつは京都が開院する時に書かれたと考えて良く、そうなれば8000人なり8000例は日本以外の7ヶ所の協力病院で行なわれたと考えられます。でもって7ヶ所が同時に出来たとは考えにくく、何年かの内に順次拡大されたとするのが妥当でしょう。詳細がわからないので大雑把な算数にしますが、7ヶ所の協力病院の平均存続期間を2年とすれば、1ヵ所当たり年間600人弱となり、週にすれば10人チョットぐらいになります。
もちろん10人が「例」であれば毎週新患が10人程度と解釈も可能ですが、京都の目標であった2010年には1万人、2015年には10万人の計画に較べると、かなりささやかな規模に見えます。なんとなくですが、それまでホソボソと展開していた事業の旗艦施設として京都を作った様にも見えます。それだけ力を入れていたので、あの華々しい開院式があったと考えられなくもありません。
これぐらいは30分もあれば調べられるのですが、読売記事がこれからどんな展開を見せるのかは楽しみにしておきます。院長インタビューでも出てくるかもしれません。申し訳ありませんが、かなり風邪気味でしんどいので、この程度の情報提供に留めさせて頂きます。うぅ、頭が痛くて、咳がひどくて、鼻も詰まって苦しいよ・・・。