小児科医として残念な優先順位

11/16付CBニュースより、

成人用肺炎球菌ワクチンの助成を検討へ- 民主・予防接種法小委が初会合

 民主党の医療・介護ワーキングチーム(WT)の下に設置された予防接種法小委員会(小委員長=仁木博文衆院議員)が16日に初会合を開いた。この中で、参加議員からは、厚生労働省が2012年度の事業継続を表明している3種のワクチン(子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)の接種の公費助成に、成人用肺炎球菌ワクチンを追加すべきとの意見が上がった。これを受けて、小委では今後、同ワクチンの公費助成を論点の一つと位置付けて検討する。

 初会合で厚労省は、ワクチンの予防効果による医療経済効果の推計を提示。それによると、成人用肺炎球菌ワクチンは接種対象になる人数が多く、小児用のワクチンと比べて費用低減効果が格段に高いという。小委では、臨時国会中にある程度の結論を出し、医療・介護WTに報告する方針だ。

 小委ではこのほか、厚労省が来年の通常国会への提出を予定している予防接種法の改正案についても議論する。

まずピックアップしておきたいのは、

    厚生労働省が2012年度の事業継続を表明している3種のワクチン(子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)の接種の公費助成
HPV、Hib,PCV7の公費助成は延長されると思ってはいましたが、厚生労働省が来年度も継続すると「ちゃんと」表明していたのは、恥ずかしながら初めて知りました。どうも与党も反対でないようで、この助成措置が延長される事を既定事実として、さらなる臨時公費の予防接種を追加しようとしているのもわかります。

ここについては小児科医の期待として、2年間の臨時公費化だけではなく、これが終了するまでに公式に定期接種化に進む事を期待していたのですが、それが実現しなかったのは少々残念なところです。それでも打ち切られるよりは遥かにマシですから、来年度に期待する事にします。


公費助成延長の感想はそれぐらいにして、新たに追加される予防接種は、

    成人用肺炎球菌ワクチンを追加すべきとの意見が上がった
あんまり縁が無いというか接種した事がないので詳しいとは言えないのですが、23価ですからPCV23(正しくはPPVでした)とでも略すのでしょうか。これも有用なワクチンである事は否定しませんが、追加される予防接種が1つであるとの前提であるなら、他の予防接種との比較はどうなんだろうです。比較対象にあげておきたいのは水痘、ムンプス(HBVも入れたいかな)です。水痘、ムンプスに較べてPCV23(正しくはPPVでした)が優先される理由としては、
    厚労省は、ワクチンの予防効果による医療経済効果の推計を提示。それによると、成人用肺炎球菌ワクチンは接種対象になる人数が多く、小児用のワクチンと比べて費用低減効果が格段に高いという
ほぉ、厚労省の御推薦ですか・・・。そりゃ、ほぼ決まったようなものです。あくまでも推測ですが、この委員会のテーマとしては追加で加える予防接種は何かが一つのテーマであり、その候補に舞台回しを事実上勤めるといってよい厚労省が強力推薦なら、参考資料もバッチリだと想像します。後はHPVの時のようにドサクサで水痘なり、ムンプスなり(HBVなり)を抱き合わせで潜り込ませる事が出来るかどうかが、今後の焦点になるかもしれません。


ところでですが、PCV23(正しくはPPVでした)の現在の適用は、これはe-paharmaからですが、

脾摘患者の肺炎球菌による感染症の発症予防、(鎌状赤血球疾患、肝機能障害、呼吸器慢性疾患、心慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、脾機能不全、高齢者、免疫抑制作用を有する治療が予定されている者)の肺炎球菌による感染症の予防

保険適用は2歳以上の脾摘患者だけだそうです。それ以外の「鎌状赤血球疾患、肝機能障害、呼吸器慢性疾患、心慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、脾機能不全、高齢者、免疫抑制作用を有する治療が予定されている者」に対してですが、高齢者以外は文句も何もありません。高齢者(65歳以上だそうです)も文句は本来無いのですが、選択が一つであれば小児科医としては悔しさが残るところです。

それとPCV23(正しくはPPVでした)は5年ぐらいで有効性は切れるはずですから、継続接種も延々と助成するのでしょうか。詳細はこれからでしょうが、厚労省の費用低減効果の試算はともかく、ここで予防接種の予算が大きく取られて、小児用のワクチンの助成が予算不足でドンドン後回しにされる事態になるのはあんまり嬉しい想像ではありません。


もっともなんですが、どこかの自治体の様にRotaを突然助成されても正直なところ困惑します。これはRotaの有用性を否定している訳ではなく、接種スケジュールがバラ打ち定着傾向のために、希望されても非常に接種し難いからです。もっとも今回の民主党委員会は初会合であり、これから最終的に何が飛び出すかわかりませんから、今後の動向は注意しておいても良いと思います。

まあ、瓢箪から駒で、ゾロゾロと芋づる式についでにあれこれワクチンが公費化に追加されたら嬉しいのですが、そこまでは期待しすぎでしょうねぇ。