消えたロハス記事

発端

準定期巡回ルートの琴子の母様の「妊婦さんの笑顔を見たい」―大野事件・加藤医師が公開シンポで講演に、

■「大野事件は誰も関わりたくない『東電案件』」

脅すんですね、こうやって...。大野事件の当時、ある産科医の方から東電の話は聞きまして、非常に納得したんです、何故このようなことになったのかっていうことを。

私はですね、大野病院の、これらのお話をおもうと必ず思い出すのが、産科医の方から教えられた

『これで逮捕なら、(私の話をした上で)助産師こそ逮捕じゃないか!』

と警察に電話された産科医の方がいらっしゃる、ということです。

本当に、その通りだとおもいます。そして、こういう悪用は今後、二度としないで欲しいですね。っていうか、一度もあってはならないことなんですけどね、本当は。

原発のことについてもありますし、是非。

こういう記事があったので、興味を引かれてリンク先を流し読みしました。福島大野事件と東電を直接結びつける話はあんまり聞いた事がなかったので、内容的には正直なところ「どうかな?」ぐらいのレベルのお話でした。後出しジャンケンと言われそうですが、ネタに困れば読み直そうぐらいの関心です。ネタ探しはブログを続ける上ではいつも重圧ですから。

それ以上何もなければ忘れてしまいそうなお話でしたが、感情的な医者様から、

ロハスメディカルの記事
 「妊婦さんの笑顔を見たい」―大野事件・加藤医師が公開シンポで講演
http://lohasmedical.jp/news/2011/10/13145147.php?page=6
 について 琴子の母さんが
http://d.hatena.ne.jp/jyosanin/20111013/1318501072#c 
■「大野事件は誰も関わりたくない『東電案件』
というところに注目したんですが、すでにその部分は(自然に)抹消されています。

魚拓をとっておくべきでした。残念。 ロハスメディカルにどんな圧力が加わったのやら。

日付・時刻関係だけ簡単に整理しておくと、

date 経緯
10/13 14:51 ロハス記事アップ
10/13 19:17 琴子の母様リンク
10/14 朝 私が読む
10/14 12:41 ロハス記事消滅のコメント


10/13の午後に記事がアップされ、夜に琴子の母様がエントリーに取り上げ、おそらく10/14の午前中に消滅したと考えて良さそうです。ここで本当に存在していたかどうかですが、ググってみるとスクリーンショットが入手できたので、証拠として提示しておきます。
現在のロハス記事は5ページまでですが、6ページ目に存在していた事が確認できます。


憶測

なぜに消えたのかについては、唐突であったので圧力説もこの時期ですから自然に出ますし、内容に問題があり削除編集した可能性も当然あります。疑惑を呼ぶのは削除を行った説明をロハスが行なっていないことです。小なりと言えども商業メディアであり、とくに医療関係者に信頼を得つつあるメディアなだけに疑惑のタネが自然に育つといえば言いすぎでしょうか。

とくに医療関係者には特別関心の深い福島大野事件と、一般的には関心が強い東電との関係が書かれた記事ですから、圧力説であっても医療関係者なら遺族関係が頭をよぎりますし、そうでなければ東電を念頭に置く人も当然出てきます。もう一歩進めて連携なんて陰謀論さえ出る余地さえあります。

私も流し読みしていただけですから、消滅したとなると読みたくなるのが人情です。探してみるとキャッシュに残っていました。下品の指摘もあるでしょうが、あれば原因を考えてみたくなります。


では読んでみよう

まず冒頭部なんですが、

加藤氏が退出してからは、これまで公の場で語られることの少なかった東電と大野病院事件との関係について踏み込んだディスカッションが展開された。

ここはホッとしました。とりあえず加藤医師とは無関係な記事である事が確認できます。これはシンポジウムのレポート記事なんですが、参加したシンポジストは、

コラムニストの勝谷誠彦氏、参院議員で医師の梅村聡氏、奈良県立医科大准教授で救急医、小児科医の西尾健治氏。今回のゲストとして、加藤氏、日本産科婦人科学会副幹事長の澤倫太郎氏を迎えた。

そうなると加藤氏退出後にディスカッションを行なったのは勝谷誠彦氏、西尾健治氏、澤倫太郎氏と言う事になります。消えたページは前半部と後半部があり、後半部は産科無過失補償制度の話で内容からしてさほど問題があるとは感じませんでした。つうか大部分が梅村氏の話で、もう一人西尾氏の話はどこにも問題点はまず無いとして良いかと考えます。

梅村氏の話は産科無過失補償の話と言うよりは、事故調関連から医師の時間外勤務に関連した主張ですが、ここに削除しなければならないほどの問題点を指摘するのは困難です。


そうなると問題は前半部にあった事になります。ここで発言が記載されているのは澤氏、梅村氏、勝谷氏です。ここも梅村氏の話が半分ぐらいを占めるのですが、あえて問題になりそうな個所は、

「あえて真実の話をしますと、実はある医療事故を担当されている大手新聞社の論説委員と言われる方が私の元にやってきました。3時間ぐらいお話をしました。例えば『梅村さんの民主党という立場はどうもお医者さん寄りのことを言い過ぎているんじゃないか、国民の方を向いたらどうなんだ』というふうな最初の問いかけをされてこられました。

ここも大手新聞社の論説委員とはしていますが、特定を避けていますし、当時も今も梅村氏が経験した話は内緒の話と言うより社説レベルで堂々と掲げられている内容ですから、これが問題になるとはとても思えません。さすが政治家ですから言質を取られない様に巧みに話していると判断します。


残りの澤氏、勝谷氏ですが、流し読みした時も違和感が強かったところです。それでも澤氏の発言だけならギリギリでセーフのような気がします。澤氏の発言から東電と福島大野事件の関りは垣間見える程度です。つまり東電と福島大野事件が直接の関係があるとは明言していません。どうも関係があるんじゃないかの感触があったぐらいの感想です。

それでも澤氏の発言が問題になるのは、とくに2回目の発言になります。ロハス記事の構成として澤氏の2回目の発言は勝谷氏の発言を受けたような形式になっており、勝谷氏を補足するような配置になっています。実際のシンポジウムの様子は出席していませんから判りませんが、記事では勝谷氏の発言を肯定的に受け取って発言したと解釈出来てしまう位置付けになっています。

あえて言えば、勝谷氏の発言とセットで判定でアウトはありえそうな感じです。ちょっと寄り道ですが、

また慶應大学医学部の医局は他の東電関連の病院にも医師を派遣していたが、加藤医師逮捕直後の大野病院への派遣要請は断っていたと明かし、「当時彼を助けようと考える人は誰もいなかった」とした。

これは意味が取り難い発言です。

    加藤医師逮捕直後の大野病院への派遣要請は断っていた
こう書いてあれば、逮捕以前は派遣していたみたいですが、産科以外には派遣していたのでしょうか。また「直後」としていますから、その後は産科以外の医師派遣を復活させているのでしょうか。よく分からないところです。これも外野なので真相は不明ですが、慶応医局はとくに東電関連の病院に力を入れて医師派遣を行っていた実績があるのでしょうか。もう一つ、
    当時彼を助けようと考える人は誰もいなかった
これも主語と時期がはっきりしませんが、産婦死亡事故から逮捕に至るまでの時期の事を指しているのでしょうか。確かに事故報告書の作成過程の酷さは後に周知の事となりましたが、私が知っている限りでは故佐藤前教授はかなり尽力したと思っていましたが、実際は故佐藤前教授さえも冷淡な姿勢で終始していたのでしょうか。記事を書いたロハス記者には一定の信用を置いていますが、意味が非常に取り難いところです。


消去法になりますが問題発言を行ったのは残りの1人と考えられそうです。消えたページのサブタイトルになった発言も残りの1人ですし、この方の発言が残りの方の発言にかなり濃厚に色をつけていると読めます。私が分析する限り、残りの1人の発言は非常に希薄な根拠で強引に福島大野事件と東電を関連付けているように感じます。

当時の原発の位置付けは、福島県まで含むこの地方の基幹産業であり、基幹産業ですから関係者も少なくないのは当然です。ただ当たり前に考えて、いかに東電と言えども社員の家族のために影響力を行使して1人の医師を刑事罰に持ち込もうとするかどうかは大いに疑問です。それも警察や検察庁まで動かしてです。東電の政治力は大きいものでしょうが、そこまで末端社員を守る会社とは思いにくいところがあります。

もちろん東電相手に逆らいたくないの心理は当時の住民にあったと言われれば、これを否定する材料を持ち合わせていません。喩えは悪いかもしれませんが、東海地方の大企業に地元で逆らうと有象無象の圧力がかかると言われるのと類似しているぐらいには思います。いわゆる企業城下町で城主である企業に逆らい難い空気の醸成です。

それでも城主である企業が直接に影響力を行使したの主張はそれなりの根拠が必要でしょう。外形的な部分をつないで陰謀論を考えるのは楽しいですが、あくまでも仮説であり噂に過ぎません。それを肉付けするのが立証作業ですが、残りの1人の主張は仮説段階の根拠を真実だとして立脚している様にしか見えません。あえて付け加えれば、現在の世論からして何でも東電に結びつければ受けるだろうに見なされそうな主張です。


私の推測的見解

取材した記者は福島大野事件についても造詣の深い記者です。推測するとその思い入れと、シンポジウムの場の雰囲気から最後の部分を報道するのに価値ある部分と判断したと考えます。原発問題での東電への感情部分もあるかもしれません。そういう心情から記事にはしたものの、記者自身あるいはこれを読んだものから「勇み足」の指摘を受けたと考えます。

最後のページの部分のために、福島大野事件の位置付けが警察・検察の暴走から東電の陰謀論に矮小化してしてしまうと気が付いたとすれば良いでしょうか。これに気が付いたが故に削除編集になったと考えます。あくまでも私の推論ですけどね。

そうであってもなくてもですが、ロハスはメディアの中でも医療関係者がそれなりの信用を置いているものであり、医療関係者にとって福島大野事件は巨大な存在です。記事の訂正は行っても問題はありませんが、「てにをは」レベルではなく、ここまで大きな削除編集を行ったのなら、一言ぐらい説明があった方が良いと思います。

そうする事がかえって信用を上積みすると思いますし、説明までの時間が長いほど余計な疑念が広まりやすくなります。これからのロハスのために適切な対応を期待したいところです。