病院機能評価機構の無敵の経営前編・一点のシミ

もともと一つのエントリーだったのですが、妙に長くなったので前後編の予定でお届けします。今日は公益法人名にもなっている病院機能評価事業のお話です。データがあちこちに散らばっているので集めるのが大変でしたが、可能な限りの範囲で機能評価を受けている病院数の推移のデータを集めてみました。

年度 受審病院数 新規病院数 更新病院数 認定病院数
H.9 125 125 * 58
H.10 125 125 * *
H.11 133 123 * *
H.12 177 177 * 456
H.13 245 245 * *
H.14 398 360 38 883
H.15 591 451 140 1184
H.16 603 465 138 *
H.17 484 341 143 1876
H.18 338 174 184 2333
H.19 422 130 292 *
H.20 503 99 394 *
H.21 500 93 407 2574
H.22 498 69 429 2518


これをグラフにしてみます。
データは見ようなんですが、とりあえず認定病院数は頭打ちである事はわかります。2010年度時点で病院数で28.9%、病床数で44.7%となっていますが、このあたりがとりあえずの限界ぐらいみたいな感じです。ここは機構側の目論見問題があります。制度の位置付けで、認定を取得する事にメリットがある制度か、認定を取得しない事にデメリットが生じる制度かです。

メリットが出る制度なら、3割弱で十分でしょうし、考えようによってはこれでは多すぎるも成立します。一方でデメリットが生じる制度なら、それこそ8割とか9割以上を網羅する必要があります。どちらを基本的に目指していたかはわからないでもありませんが、現状に対してどう分析しているかです。つまり機構側自身がどう判断しているかです。これがなかなか味のある表現でして、平成21年度事業実績報告書では、

1.全国受審状況

平成21年度末における病院機能評価の受審状況は、全国8,708病院中、受審病院は2,926病院(対全国数33.4%)、認定病院は2574病院(対全国数29.4%)であった。また、病床数では、受審病院803,668床(対全国数50.0%)、うち認定病院725,471床(対全国数45.2%)となっている。

淡々とデータを紹介するのみに留まっています。これが翌年の平成22年度事業実績報告書になると、同じようにデータを紹介した後に、新たな項目が付け加えられています。

2.平成22年度受審病院の確保状況について

平成22年度の受審病院数は、498病院(新規69病院、更新429病院)であった。事業計画数に対しては91.7%の達成率であった。受審病院数合計は、ここ数年においては平成21年度に次ぐ実績であったが、相対的に更新受審数の達成率が低く、今後の課題である。

どうもなんですが、平成21年度の事業報告を受けた平成22年度の事業計画として受審病院数とか、とくに更新受審数の目標設定を行ったようです。平成21年度の事業報告書にはありませんから、なんらかの危機感を抱いた結果と見えなくもありません。平成22年度の事業計画書が見当らないのが残念なんですが、平成23年度の事業計画書には、

1.受診病院の確保対策について(重要事項)

 未受審病院に対する受審意向調査の結果や、更新対象病院の更新率などを踏まえ、新規70病院、更新391病院、合計461病院とした。

ほう「重要事項」と来ましたか。この辺りから判断すると認定病院数に少しは危機感を抱いているのかもしれません。認定されていた病院の更新率が下がり、新規が減っていけば認定病院数はジリ貧になります。ただ新規の目標数は高いとはいえないので、当面は現状維持にせざるを得ないとの判断の様に見えなくもありません。

微妙な時期と言うか判断で、最盛期には年間600病院の審査を行っており、一度落ち込んだものの500病院台を今のところは維持しています。これだけの審査数に必要な職員を抱えているわけですから、年間の審査病院が急激に減ると余剰な人員を抱え込む事になります。なんとなく網羅路線から、希少価値路線への転換を模索している様に見えなくはありません。

ただし機構の人員対策についてはある意味万全の手を打っています。

評価調査者は、機構の依頼に基づいて受審病院の訪問審査等を行う。委嘱期間は2年間である。診療管理、看護管理、事務管理の3領域があり、病院長経験5年以上、看護部長経験5年以上、事務長経験5年以上の者等から委嘱している。

平成22年度当初の評価調査者数は827名(診療管理297、看護管理239、事務管理288、付加機能3名)であり、年度内に新たに88名(うち付加機能45名)を委嘱し、58名が退任した。

平成23年度当初の評価調査者数は857名(診療管理288名、看護管理235名、事務管理286名、付加機能48名)である。

評価調査者とはいわゆる「さーべいやー」の事なんですが、すべて2年間の短期契約にしているようです。機動的にリストラをいつでも行える状況ですから、路線変更があってもさほど困る問題ではないとも見えます。



危機感を示すのは受審病院数の推移もそうなんでしょうが、もう一つありました。賛助会員数の年次推移があります。ちなみに賛助会員はA・B・Cの区分があり、

会員種別 会費 該当者
A会員 50万円 各種団体・会社関係
B会員 30万円 医療機関・各種健康保険組合
C会員 2万円 教育機関の研究者等


リンク先を見てもらえれば出入りの激しさが良くわかるのですが、年度ごとの会員数の推移だけグラフにしてみます。
グラフを見ればそれまでなんですが、2005年時に賛助会員総数が129人に達したのがピークだったようです。その頃にはA会員もB会員もピークになっています。しかし「なぜか」その後は減少に向い、平成22年度時点で80人になっています。ピークの翌年の2006年度から2010年度までの入退会の実数の合計は、

A会員 B会員 C会員 合計
入会 退会 入会 退会 入会 退会 入会 退会
1 14 1 29 0 8 2 51

5年間のうちに入会が2人であるの対して退会は51人に達しています。はてさて何があったのでしょうか。何があったかと言えばこれもよくわからないのですが、終始決算総括表と言うのがあります。そこの事業活動収入に会費収入と言う項目があります。平成21年版平成22年版がデータとしてあるのですが、これをピックアップしてみます。
会費収入 平成21年 平成22年
賛助会員会費収入 2496万円 2496万円
認定病院協議会会員会費収入 記録なし 8835万円

一生懸命探して見たのですが、平成21年版には「認定病院協議会会員会費収入」と言う項目は見当りませんでした。無かったと言う事から考えられるのは、
  1. 新設された
  2. 機能評価等事業収入から平成22年から分離された
どっちなのかはサッパリわかりません。わからないと言えば賛助会費も会員数が平成21年の85人から平成22年には5人減(A会員1人、B会員3人、C会員1人)の80人になっているはずですが、会費収入が全く同じと言うのも謎といえば謎です。ここはそうなっているぐらいにさせて頂きます。



色々書きましたが、データ的には審査病院数が頭打ちからジリ貧傾向になっている事だけは確認できますが、これが機構の経営を揺るがすようなものかと言えば、全くそうでないとするのが妥当かと考えています。平成22年の事業収入の合計は8つの項目から10億187万3072円、つまり10億円であり、そのうち機能評価等事業収入が9億5140万円と事業収入の95%を占めていても問題のうちに入らないとするべきでしょう。

これについては長くなるので明日予定の後編にしますが、10億円の事業収入が丸ごと吹っ飛んでも、せいぜい「一点のシミ」に過ぎないと言う事です。何故かは賢明な読者の方ならすぐ判ると思いますが、明日に項を譲ります。