ホメパチ式インフルエンザ用砂糖粒「宇宙への一滴」

ゴメンナサイ。ネタギレと言うか、他のネタの準備が間に合わなかったので、またもやホメパチネタでお茶を濁させて頂きます。モトネタは忘却からの帰還様の、

とにかくリンク先をお読み頂ければそれで終ってしまう話なんですが、それじゃエントリーにならないので、引用先を読まれたと前提して少しだけ角度を変えて話を紡ぎます。つうても殆んど忘却からの帰還様の引用になります。

ここで出てくる製薬会社があるのですが、これがBoiron社です。製薬メーカーの名前なんですが、これがなんとフランス第2のOTC(大衆薬)製薬会社です。主力製品と言うか、作っているのはどうやらホメパチ砂糖粒ばかりのようです。ホメパチ砂糖粒でフランス第2のOTCメーカーになるぐらいですから、そりゃ日本のホメパチもまだ見ぬ日本のマーケットに夢を見る気持ちぐらいはわかります。まさにくわばら、くわばらです。

このBoiron社の主力製品の一つに

    Oscillococcinum
こんな名前のホメパチ砂糖粒があります。カタカナにすると「オシロコシナム」と読むそうです。調べてみると日本でも販売されていまして、特徴として、

感冒、熱、寒気、筋肉と節々の痛みの症状用。
ホメオパシー医療(同種療法−自然治癒力を強めて病気の原因を取る治療法)
投薬量は6回 - 各回1g。

でもって謳い文句は、

オシロ(Oscillo)はフランスではナンバーワンの OTC(大衆薬)流感薬で、アメリカではナンバーワンのホメオパシー流感薬です。
臨床治験によって、流感の初期症状で服用すると、オシロ服用者の63パーセントが48時間以内にはっきりした症状の改善が見られたということが分かっています;ぜひ手にとってみてください!

漠然と薬事法関連が頭に浮かびますが、今日はあえて突っ込まないことにします。値段は6粒入りで1548円ですから、1粒258円になります。さてこのホメパチ砂糖粒は何を希釈したものかになります。もっともホメパチ希釈ですから、元の成分が何であっても意味は「まったく」ありませんし、このホメパチ砂糖粒の希釈単位は驚きの、

    200C
あえて説明しておきますと100倍希釈を200回繰り返したものです。え〜と桁がデカ過ぎて算数に自信がなくなるのですが、10の400乗希釈のはずです。どれほどの希釈になるかの概算もあり、

200c希釈は1mlのオリジナルの有効成分を既知の宇宙の体積の水で希釈することに相当する。

よく太平洋に水一滴の希釈なんて表現が用いられますが、そんなレベルではなく宇宙に一滴です。太平洋に水一滴の方が、ムチャクチャ濃い事になります。もちろんそんな事はホメパチ式科学にとっては些細な事です。それでも希釈された成分が何であるかぐらいは気にはなるのですが、

有効成分:Anas Barbariae Hepatis Et Cordis Extractum 200 CK HPUS

なぜかフランス語(たぶんです。少なくとも英語ではなさそうです)のようですが、これは「殺したばかりのアヒルの肝臓と心臓を40日間培養し、濾過して凍結乾燥させたもの」だそうです。このホメパチ砂糖粒は流感すなわちインフルエンザに有効となっています。宇宙サイズで希釈したものの有効性を考えたところで意味は「まったく」無いのですが、なぜにアヒルの肝臓とか心臓がインフルエンザにそもそも有効なのかの謎は出てきます。


これは1917年まで話がさかのぼる事になります。フランスの医師Joseph Royがインフルエンザ患者の血液の中に奇妙な物体を発見した事に始まるそうです。Joseph Royは1891年生まれと言いますから、当時26歳であった事になります。かれは発見した物体をオシロ小体(oscillococci)と名付け、同様の小体が、

癌患者の血液と腫瘍、梅毒性潰瘍、結核患者の結核結節、そして淋病の患者の膿の中に見つけた。さらに、湿疹、リウマチ、流行性耳下腺炎、水痘、麻疹の人々が、この"普遍的病原菌"の宿主であることが判明した。

Joseph Royが顕微鏡で何を見ていたのかは今となっては誰にもわかりません。1914年と言えば第一次世界大戦が勃発した年で、既に近代細菌学を確立したパスツールやコッホも死亡している時代になります。治療法で言えば北里柴三郎破傷風菌に対する血清療法が1890年に発見されています。そんな時代でも「普遍的病原菌」なる概念が通用したようです。いや、通用したかどうかはわかりませんが、弱冠26歳のJoseph Royは偉大な発見と信じて疑わなかったようです。

この辺は時代背景もあるようで、パスツールやコッホは近代細菌学を切り開きましたが、1914年当時ではまだ細菌と言うか病気には個々の病原菌が存在すると言う近代細菌学の考え方に否定的な勢力がそれなりに残っていたようです。Joseph Royの発見らしきものは近代細菌学に対して疑問を持つ人に受け入れられたとなっています。

ここでポイントは近代細菌学は現代までの系譜をしっかり引いています。医師でなくともコッホやパスツールの名前ぐらい知っている人は少なくありませんし、その業績を否定するものもありません。もちろん現在に至るまでコッホやパスツールの細菌学は数知れない研究・検証が重ねられています。となると、Joseph Royが受け入れられた近代細菌学を否定的に考えた勢力は衰え、消滅したとしても良いかと思われます。

当然ですがJoseph Royが発見したと主張するオシロ小体なるものも否定され消え去ったものであると言う事です。ま、1914年当時の顕微鏡で発見されたものが、現代科学の検査で発見不可能ですから、Joseph Royは全く違うものを見たと言い切っても良いでしょう。

おそらく当時でもJoseph Royの主張は現在に続く主流医学からは一顧だにされなかったと考えられます。そこで主流でない医学に傾斜する事になったようです。

Royはただちにホメオパシーへの応用を考えた。

応用と言うか、ひょっとするとそういう素地が元からあったのかもしれませんが、Joseph Royの発想は銀河系程度には飛躍します。

Roy医師は書いている「古代人は肝臓を病気が居座る場所だと考え、心臓より重要なものだと考えた。これは深い洞察である。というのは、血液の病理学的改変が肝臓のレベルで起き、肝臓で心筋のエネルギーの質が耐久性のある方法で変化するからである。」

なんの事やらミカンやらなんですが、無理やり考えてみます。Jseph Royの発見は「普遍的病原菌」が宿主とするオスロ小体です。ホメパチ理論から言うと、オスロ小体そのものというか、病原菌がついているオスロ小体をホメパチ希釈するべきだと思うのですが、余程採取は難しかったようです。そこで発想を大きく転換させたようです。

オスロ小体は血液中に存在するのであり、肝臓は血液に大きな影響を与える臓器であるという考えた方です。この考え方は基本的には間違っているとは言い難いのですが、血液そのものに大きな意義付けを置いたとも言えます。血液に意義付けを置くのも基本は間違いとも言えませんが、おそらくJoseph Royは肝臓が血液を作りかえているとしたようです。そういう理論の集大成が、

    血液の病理学的改変
肝臓で強化された血液は、
    心筋のエネルギーの質が耐久性のある方法で変化
これをもたらすと言う事でしょうか。「でしょうか」ともったいぶってつけていますが、無理やり解釈してもこれぐらいが限界です。これが何故にアヒルの肝臓や心臓を内服すると有効になるかと言われれば、正直なところもうついて行けませんが、フォアグラが好物だったのか、フランスで比較的簡単に手に入れやすかったからぐらいが考えられます。

それとJoseph Royが「発見」したのは普遍的病原菌が取り付くオシロ小体だったはずです。つうかその前に普遍的病原菌と言う概念が前提になっています。この概念自体はホメパチでは現在どう扱われているかは興味があります。Joseph Royがホメパチへの応用を考える際に、どういう理論構成を行ったか知る由もありませんが、普遍的病原菌が基ですから文字通り万能薬になるはずです。

ところが現在ではインフルエンザ用として取り扱われています。ま、この辺は作ってみたらインフルエンザにしか効かなかったのかも知れませんし、肝臓云々の話の時点でオシロ小体から話はジャンプしてしまったのかもしれません。理論はどうあれ宇宙の一滴レベルの希釈ですから、考えるだけ無駄な話です。たとえどんな猛毒であったとしても、なんの意味も持たないのはホメパチ信者以外には自明すぎる事です。


存在しないオスロ小体があると仮定して出発して作られたJoseph Royのホメパチ砂糖粒ですが、現在でも堂々とインフルエンザ治療薬として販売されています。「福島で採取した土」でさえホメパチ砂糖粒として販売される日本のホメパチを見ている我々からすると、ささいなお話かもしれません。最後にこのホメパチ砂糖粒の特徴を引用して軽いツッコミだけいれておきます。、

  • 素早く解けるペレット(小球丸)


      ただの砂糖粒ですから素早く溶けると思います。


  • 眠気を催すことがなく、相互作用もありません。


      ただの砂糖粒自体に眠気を催す作用もないでしょうし、相互作用も考え難いところです。


  • ホメオパシー医療用薬です。


      その通りです。


  • 高齢者およびハイリスク患者の方々にも安全にご使用いただけます。


      糖尿病患者にはどうかと思いますが、砂糖粒の安全性は高いかと思います。


  • 処方薬、栄養補助サプリメント、ハーブ類と併用しても安全です。


      ただの砂糖粒ですから安全だと思います。


  • トラック運転手、機械のオペレーター、パイロットといった従来の大衆感冒薬の使用を禁じられている職業についている患者の方々がお使いになっても安全です。


      ただの砂糖粒を飲むだけですから問題ないでしょう。


  • 43の国々で数百万人の方々に 65年もの間ご愛用いただいています。


      悲しい事に43の国の中に日本も入っています。


  • 人工の添加物や保存料は一切使用しておりません。


      厳格にやって砂糖粒(ショ糖)とタダの水。レメディメーカーを使えば砂糖粒だけですから「人口添加物」も「保存料」も入っていません。

今日はこれぐらいで・・・。