で、いつ出来る?

5/8付共同通信(47NEWS版)より、

被災3県の全仮設住宅群に診療所 厚労省

 厚生労働省は8日、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の3県に建設する仮設住宅群すべてに原則、仮設の診療所を整備する方針を固めた。診療に当たる医師や看護師らも被災地だけでは足りないことから、日本医師会などに中・長期の派遣を要請。常時、千人程度の応援を送り込む。

 震災で被災地の地域医療は大きな被害を受けた。もともと医療過疎地だっただけに再建には数年以上かかるとみられ、仮設診療所での医療支援で「空白を埋める」(厚労省幹部)のが狙いだ。

 避難生活の長期化で、避難所では体調を崩す高齢者が増加、深夜に肺炎などで救急搬送される例も少なくない。仮設診療所では風邪から高血圧症の治療など地域の診療所で受けられるような初期医療を提供、感染症予防にも当たる計画だ。

 阪神大震災の際も十数カ所で仮設診療所が設けられたが、地域医療が徐々に回復したため、医療支援は医師や保健師の巡回が中心だった。

 厚労省では、近くに病院や診療所があるケース以外は、仮設住宅群に診療所を設置。近所に診療所があっても大規模な仮設住宅群には診療所を設け、すべての入居者が診療を受けられるようにする。

 厚労省は第1次補正予算で被災地への仮設診療所約30カ所の建設費として約10億円を計上したが、避難所周辺への設置が中心で、仮設住宅への本格的な整備は第2次補正予算からになる見通し。

 被災3県には5月2日現在で日本医師会の災害医療チーム(JMAT)や日本赤十字社の応援医師、看護師、保健師ら約1100人が展開。厚労省では「今後数年は現在の応援人員ぐらいは必要」としている。

仮設住宅の建設予定戸数は現在7万5000戸とされているようです。最終的にもっと増えるのか、これぐらいで収まるのかは予断を許しませんが、仮設住宅群毎に仮設診療所を設けるようです。仮設診療所とはどんなものかと言うと、同じニュースを伝える岩手日報に補足説明があります。

仮設診療所とは

 大規模災害により地域の医療機関が被災した際、医師や看護師らが常駐、住民に初期医療を提供する施設。プレハブ造りが主流だが組み立て式のものもある。阪神大震災時にも仮設住宅に併設された。東日本大震災厚生労働省が計画しているのは、エックス線などの検査室なども備えた本格的なもので、1カ所につき3千万〜4千万円程度の費用が必要となる。

「1カ所につき3千万〜4千万円」か・・・ビル診なら普通の内科診療所が一軒出来そうです。土地代とか運転資金(災害援助法が適用されると仮定してです)は今回は考慮しなくて良いはずです。そうなると建物代にいくら必要かですが、仮設住宅は一戸当たり238万7000円だそうです。X線を置くために多少丈夫に作るとし、建設費が2倍の600万円になってもまだ3000万円ぐらい使えそうで、かなり立派なものが出来そうです。

もっとも仮設診療所に泊り込むと言うか、住み込むなのなら住居部分が必要ですから、それぐらい必要かもしれません。ただ住み込みだとチョット条件が厳しそうな気がしないでもありません。この厚労省の記者発表が出ていないのですが、この記事にも少し判り難い点があります。

    厚労省は第1次補正予算で被災地への仮設診療所約30カ所の建設費として約10億円を計上したが、避難所周辺への設置が中心で、仮設住宅への本格的な整備は第2次補正予算からになる見通し。
一次補正予算の仮設診療所への予算が10億円かと思えばそうでもないようで、一次補正予算案(案)には14億円となっており、さらに厚労省平成23年度厚生労働省第一次補正予算案の概要には、

※ 本補正予算案は案のとおり成立いたしました。

「???」てなところですが、差し引き4億円は四捨五入しての切り捨て分になったのか、建設のための事務経費になったのか、予算特有の実質は他の目的の重複分なのかは皆目不明です。


この計画は被災者のためには有用ですが、実行については様々な懸念が出ています。とりあえず必要な医師数ですが

    仮設診療所では風邪から高血圧症の治療など地域の診療所で受けられるような初期医療を提供、感染症予防にも当たる計画だ。
いわゆる内科診療所みたいなものを想定すれば良いのでしょうか。ここで記事に書かれている「1000人」がすべて仮設診療所への人員と仮定してみます。事務職員とかは地元で採用とし、1000人が医師と看護師と考えると、診療所当たりで、
  1. 医師1人+看護師2人
  2. 医師1人+看護師3人
a.パターンなら300ヶ所程度、b.パターンなら250ヶ所程度が考えられます。単純計算で250〜300人程度の医師が必要みたいですが、被災地の地元の医師会でどれだけ賄えるかが不明です。被災地外の応援を求めるとしても、被災地外の応援規模にもよりますが、医師会から短期はともかく「中・長期の派遣」は現実的に厳しいところがあります。そうそう長期や中期で自院を休診したり、勤め先の病院を休める医師は少ないですからね。



医師の派遣をどうするかは、それでもとりあえず置いておきます。もう一つ気になるのは、あくまでも記事が正しいとして仮設住宅群への仮設診療所の建設は二次補正予算の成立後であると言う事です。一次補正予算は既に成立し、仮設診療所への予算が14億円と決定していますから、記事にある30ヶ所なり、予算を目一杯使っての40ヶ所が上限となります。

概算で250なり300ヶ所を作るには100億円程度は必要で、二次補正予算を待たないと作り様がなさそうです。そうなると二次補正予算がいつ成立するかが問題となります。現在の国会は6月22日(だったと思う)が会期末になりますから、今から1か月程度で二次補正予算を大急ぎで成立させるような情勢にあるかと言えば、どうにもそんな気配はありません。

マスコミ情報を見る限り、現在の国会には二次補正予算案すら上程する気は政府に無いようで、秋の臨時国会に提出して審議する予定の記事が踊っています。この秋の臨時国会ですが、例年なら9月ないし10月開催ですが、これもマスコミ情報では繰り上げて8月下旬に開く予定であるともなっています。予定は未定であって決定ではありませんから、どうなるかは不確実ですが、現在の国会ではどうやら承認どころか審議もされない情勢です。


仮に8月下旬に秋の臨時国会が開かれ、二次補正予算案が上程され、これが審議されて可決承認されるまでどれぐらいかかるのでしょうか。この辺の政治日程は「やってみないと判らない」部分が大とは言え、衆参で2週間づつ審議しても1ヶ月ぐらいは必要な気がします。もっと短くなるか、逆に長くなるのかは私にはわかりません。それでも早くても9月上旬ぐらいの可決承認ならスムーズぐらいじゃないかと思います。

予算が承認されてから仮設診療所の建設や医療機器の発注が行われ、医師や看護師の募集や派遣の調節が行われると考えます。仮設ですから建設は早いとしても、本格稼動は9月下旬か10月になってもおかしくなさそうです。審議承認が長引けばドンドン稼動は遅くなります。遅い方にずれこめば、10月後半とか11月なんて事があっても不思議ありません。

つまりと言うほどではありませんが、二次補正予算が成立し仮設診療所が稼動するまで5ヶ月とか6ヶ月の時間は必然的に生じそうだです。これも厳しい冬までには間に合わせる予定と解釈は出来ますので、必ずしもマイナス評価としている訳ではありません。ただ折角作るのなら、仮設住宅と同時進行ぐらいの方がより望ましいだろうぐらいのお話です。


後は余計な事ですが、被災地被害は甚大ですが、被害自体にも差はあり、また復旧の速度も地域差が出てくると考えています。この辺は被災地外にいる人間ですから、どのぐらいが感覚的にわかりづらいのですが、厚労省の方針の「一律」が変わることが十分に予想されるところです。つうか、その点で審議で揉めたらさらに長引く因子になりうると言う事です。

もう一つこれも余計な心配かもしれませんが、仮設住宅の建設地の確保に被災地は難渋していると聞きます。阪神大震災でもこれは難渋し、「こんなところまで」なんてところに仮設住宅は建設されていました。そういう仮設住宅群に仮設診療所を併設するプランですが、仮設診療所の用地確保はどうなっているのでしょうか。まだ予算化されていない仮設診療所の用地を確保しながら仮設住宅群は建設されているのでしょうか。

仮設診療所も、仮設住宅群の空き地に作れる程度の規模を想定しているのなら良いのですが、そうでなければ仮設診療所のための用地確保みたいな事も予算化されてから必要になる可能性も出てきます。ひょっとしたら仮設住宅の空き部屋利用みたいな事を想定しているかもしれませんが、この辺も先の話なので何とも言えないところです。

なんと言ってもかなり先の話なので、二次補正予算が成立する頃にこの話がどうなっているのか、備忘録にしておきます。



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