公務員も厳しいなぁ

まずは5/10付時事通信より、

原発事故恐れ休暇、県外へ=生活市民部職員を処分−茨城・土浦

 福島第1原発事故による被ばくを恐れ、3月17日から2日間休暇を取り、県外へ避難したとして、茨城県土浦市は10日までに、生活市民部の男性主幹(33)を訓告処分にした。また、3月下旬に4日間ずつ休暇を取得したとして、51歳と48歳の同部課長補佐を厳重注意とした。

 市は「全職員が24時間体制で働いていた中で、このような行為は市民からの信用失墜を招きかねない」と説明している。

記事と言うのは簡潔である方が良いとされているようですが、これだけ簡潔だと妙な憶測を呼びます。震災時とは言え一番素朴な疑問は、正式に休暇を取得したにも関らず、これが処分されるとはどういう事だろうです。そりゃ、震災時に市役所職員が休暇を取っているのは、あんまり好ましい状態とは言えないの一般論はあるでしょうが、市長がまるで感情に任せて処分した様にも読めてしまいます。

また公務員は様々な批判が起こり易いのは同情しますが、働く時には働いてくれると信じています。震災と言う非常事態に直面すれば、誰だってしばらくは奮い立つはずです。ましてや市の職員ですから、自然に使命感が湧きあがってくると考えています。事件が起こったのは土浦市ですが、ここがどれほどの被害を受けたかが市のHPの土浦市の被害等情報にあります。住宅被害は、

  • 全壊 3棟
  • 大規模半壊 2棟
  • 半壊 41棟
  • 一部損壊 3060棟

東北の被害が桁外れなので感覚がおかしくなっている部分がありますが、土浦もしっかり被害を受けています。ライフラインは、

  • 水道


    • 3月11日 14時46分 全配水場停電及び県からの送水停止に伴い、市内全域断水
    • 3月12日 5時50分 大岩田配水場へ試験送水開始
    • 3月12日 11時20分 右籾配水場へ試験送水開始
    • 3月14日 2時00分 県より神立・右籾・大岩田配水場へ通常平均水量を配水
    • 3月15日 23時53分 神立・右籾・大岩田配水場の配水圧力回復(通常配水)
    • 3月18日 16時05分 県より新治浄配水場へ通常平均水量を配水
    • 3月18日 18時00分 新治浄配水場の配水圧力回復(通常配水)


  • 都市ガス(東部ガス)


    • 3月11日 16時55分 市内数か所で、ガス漏れ発生につき当該箇所のみ供給停止
    • 3月11日 18時20分 桜川以北から真鍋地区(6,834件)について供給停止
    • 3月28日 全面復旧


  • 東京電力


    • 3月11日 市内全域で停電
    • 3月12日 市内99%復旧、計画停電実施予定
    • 3月12日 全面復旧
    • 3月14日 計画停電区域の対象外

電気の復旧は早かったみたいですが、ガスも水道も復旧にそれなりの時間がかかっています。避難所も、

震災後(11日夜)、市内小中学校等29箇所にて避難所を開設。避難者数2,311名。

この避難所は3/25に閉鎖されたようですが、しばらくは職員も大車輪で働いていたと十分に推測できます。そういう最中に休暇を申請するとは、ちょっと考え難いと言う事です。色んな憶測が広がるのですが、さすが地元紙で茨城新聞はもう少し詳細に事情を報じてくれています。5/10記事より、

震災直後休暇の3職員処分「信用失墜招く」と土浦市

土浦市は9日までに、東日本大震災への対応に市が忙殺される中で、福島第1原発事故で被ばくすることなどを恐れ3月中〜下旬に県外に“避難”した男性主幹(33)を訓告とする処分をした。また永年勤続休暇を取った51歳と48歳の男性課長補佐を、それぞれ厳重注意とした。

市によると、男性主幹は「地震福島第1原発事故で妻が精神的パニックに陥り、3月16日深夜に静岡県内の親類宅へ車で移動した」などと、妻を送るためのものと説明。その後21日まで休んだ。17日朝に電話で上司に18日までの休暇取得を告げ、3連休の19〜21日は災害対策の公務から外れて公休だった。心配した元上司が17日に電話で出勤を促したが、戻らなかった。

男性課長補佐2人は3月下旬、勤続25年の職員に与えられる、5日を限度とする「リフレッシュ休暇」を取得した。休暇は次年度に持ち越せず、2人とも震災前に申請し認められていたが、瀧ヶ崎洋之副市長は男性主幹を含め「非常事態、震災対応の中で市民の信用失墜を招きかねない」と、3人の処分理由を説明。中川清市長は「職員の権利もあるが、それとはまた別の問題として処分した方がいいと考えた。残念だ」と話した。

震災発生で市は災害対策本部を立ち上げ、ライフラインの復旧など、ピーク時は職員約850人が対応に当たった。今回処分された3人は市民生活部に所属。同部は3月18日から、震災に関する問い合わせの総合窓口になっていた。

時事通信でもわかりますが、問題となったのは3人の職員のようです。まず1人目は、33歳の男性主幹です。とりあえず3人とも生活市民部に所属しているようです。この男性主幹の休暇は事後承諾であったのが確認できます。3/16の夜に発作的に静岡の親類宅に移動し、3/17の朝に上司に電話連絡を行い2日間の休暇を取っています。3/19からの、

    3連休の19〜21日は災害対策の公務から外れて公休だった
これがもともとそうであったのか、休暇取得の状況に応じてそうしたかまでは不明ですが、実質的に無断欠勤に極めて近いと言わざるを得ないかと思います。残りの2人は
    勤続25年の職員に与えられる、5日を限度とする「リフレッシュ休暇」
これを震災前に申請し許可されていたようです。2人のリフレッシュ休暇のさらに詳しい内容は5/10付東京新聞にあります。

課長補佐二人は二十五年の永年勤続リフレッシュ休暇を二月内に申請。五十一歳補佐は三月二十一日から五日間休んだ。四十八歳補佐は同二十三日から四日間の予定で休暇をとったが、後半の二日間は出勤。

記事情報しかないのですが、3人の休暇の様子をまとめてみます。

33歳主幹 48歳課長補佐 51歳課長補佐
休暇取得期間 3/17〜3/18 3/23〜3/26 3/21〜3/25
取得理由 自己理由 永年勤続リフレッシュ休暇 永年勤続リフレッシュ休暇
休暇取得時期 3/17朝 2月下旬 2月下旬
休暇行使期間 取得期間通り 3/23〜3/24 取得期間通り
処分 訓告 厳重注意 厳重注意


少し注釈を入れておくと2人の課長補佐の休暇取得期間(by 東京新聞)が疑問で、理由は3/21が休日、3/26が土曜日にあたるからです。ですので実は2人とも3/22〜3/25の4日間であったかもしれませんが、それぐらいに留めておきます。


この3人の休暇取得に対して、「こんな時に休むなんて」「公務員ともあろうものが」とする考え方は当然出てきます。私もそう言われやすい職業に従事していますから、それぐらいの批判は十分予想できます。またそう言われる職業である事は自覚しているので、様々なシチュエーションで「そう言われないよう」に努力はしています。

批判はとくに33歳の主幹に集まりやすいとは思いますが、それでも同情します。「こんな時に休むなんて」「公務員ともあろうものが」は義務規定と考えるか努力規定と考えるかで話は変わりますが、個人的には努力規定と思っています。私の立場なら純粋に努力規定です。もし努力規定とすれば、土浦市の職員は850人程度のようですから、その中で3人だけと見ることも可能と考えます。3人の内容をもう少しだけ考えてみます。


33歳主幹

33歳主幹の休暇取得理由は、

この理由だけ聞くと批判は高まるかと思います。ただ詳細は分かりませんが、この理由を挙げて休暇を取得したのなら、33歳主幹は本当にパニック状態に陥っていたとは言えます。もう少し計算高く行動していたら、「病気」を理由が可能だからです。それこそ「インフルエンザと思われる高熱」とか「食あたりを思わせる胃腸症状」なんてのが遁辞で可能です。

そう言わずに震災によるパニックを理由に挙げているのなら、本当にパニック状態に陥っていたと考える事は可能です。公務員であれば震災のような非常事態に率先して働く事が求められますが、公務員とて鉄の意思を無条件に持っているわけではありません。持つように努力しているだけで、一皮剥けば公務員とて普通の人間です。

今回の震災被害の大きさは説明するまでもありません。3/16頃は繰り返し放映される震災被害の光景に、日本中が不安心理に覆われていたと言えば大げさすぎるでしょうか。平穏な関西でもそうですから、相対的に被害が小さいとは言え、土浦ならもっと大きいと思います。そういう不安心理に押し潰されそうになる人間が1/850ぐらい公務員に出現しても不思議無いと思っています。

ここで仮にですが、不安心理を無理に押し潰して業務を続けていたらどうなったかを考えても良いかと思います。あくまも仮定ですが、33歳主幹はどこかの時点で精神的に潰れていた可能性はそれなりにあります。不思議なもので無理に働いて鬱なりが発症すれば「早く言ってくれれば・・・」的な反応がありそうに考えています。

33歳主幹は不安心理からのパニックを休暇を取ることで回復させ、以後の業務に従事できたと見ることも出来るわけです。喩えが悪いかもしれませんが、本当にインフルエンザで寝込んでいたのであれば、おそらく誰も文句は言わなかったと思います。精神的に休暇が必要な状態に陥っていたと考える余地はなかったのだろうかと思わないでもありません。


二人の課長補佐

この2人に関しては、最終的に休暇を行使するときにどういうやり取りがあったのかが注目されます。2人がこの時期に休暇をとるのは震災前から判っていた事です。当時の土浦市の業務状況から、2人が休暇を取ることにどういう姿勢を示したかです。この2人にも休暇の行使をやめるように要請ないし「お願い」したのでしょうか。

一つのポイントとして要請があったにも関らず、これを振り切って休暇を行使したかどうかの情報が欲しいところです。もし要請もなく休暇を行使したのなら完全に後出しジャンケンです。2人が休む事による業務の負担については、それこそ上司が判断する事になり、休んでも業務に負担が無いと判断された上での正式の休暇行使を、自発的に返上しなかったとの理由で公式に処分するのはやり過ぎではないかと言う事です。

また市として代替条件を提示したかどうかも気になります。2人の休暇取得理由は25年の永年勤続に対してのもので、記事によれば昨年度内しか権利期間はないとされています。許可されていた休暇がこういう非常事態に当たってしまったのですから、その休暇権利をもう1年延長するぐらいの条件提示を行っても良いんじゃないかと思います。

ただこの2人については休暇の取得時期が少々不可解なところがあります。3月下旬といえば震災がなくとも決算期になり、業務として繁忙期に当たるんじゃないかと言う事です。休暇をいつ取るかは労働者の権利とは言え、常識的には繁忙期を避けます。つうか無理に繁忙期を選ぶ事はしません。この辺は生活市民部なる部署が決算にはあんまり関係ないかもしれませんから、なんとも言えないところです。


市長

市長のコメントです。

  • 全職員が24時間体制で働いていた中で、このような行為は市民からの信用失墜を招きかねない(時事通信
  • 組織全体が震災対応に奔走する中、公務員としての使命をきちんと考えるべきだった。残念だ(読売
  • 事前申請をしており規則に違反したわけではないが、市民の理解を得られない(共同通信47NEWS版
  • 大震災発生という状況に対し、判断が足りなかったと言わざるを得ない(東京新聞

どうなんでしょう。あくまでもなんとなくですが、「市民の声」とか「議会の声」が反映されているような気がしてなりません。気のせいですかねぇ。もうちょっと、うちうちの「注意」程度で済ますつもりだったのが、事が大きくなりそうな気配を感じて、先手を打って対応したと言うところです。



まあ、この処分については賛否両論があるとは思いますから、私は同情して弁護させて頂いたぐらいに御理解下さい。公務員も厳しいですねぇ、ホントに。



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