暗黒の週末

日本のワクチンにとって暗黒の週末になりました。

まずサーバリックス(HPV)が品薄のために新規予約は見合わせて欲しいの要請がGSKからありました。これは1月段階から囁かれていた懸念でしたが、ついに現実のものになったかの実感です。無い物は仕方が無いので、新規予約は即時に中止です。GSKの見通しでは「7月ぐらいには供給体制が整うかもしれない」とはしていましたが、当面は情報待ちです。個人開業医ではこれ以上どうしようもありません。

小児科医にとってもっと衝撃的だったのは同時接種による死亡例が出たことです。今朝の時点ではどうやら4人になったようです。これはどう考えても統計学的に多すぎる人数で、アクトヒブ(Hib)とプレベナー(PCV7)の接種が当面見合わせになったのはやむを得ないでしょう。さすがにこの状況で「問題なし」とできる人は殆んどいないと思います。かなりの数の予約が入ってますから今朝は電話連絡に忙殺されそうです。

週明け早々にも緊急専門家会議が開かれる段取りになっているようです。そういう段取り以外に選択枝はありませんが、難しい選択を迫られそうに思っています。原因究明となるのでしょうが、そうは簡単に原因が判明すれば苦労はしません。現段階でそれほどの情報が週明けでも集まると思い難いからです。限られた情報での判断を求められますから、難しい会議になりそうな気がしています。出せそうな結論も範囲は狭くて、

  1. PCV7、Hibの接種は全面中止
  2. 現段階では不明な点が多すぎるため、原因に一定の結論が得られるまで「見合わせ」を継続する
  3. 同時接種に原因を求め、単独接種による再開の方針
  4. ワクチンロットに原因を求めた上で、当面は単独接種にて再開の方針
5つ目に「まったく問題なし、不幸な事故がたまたま続いただけ」もあるにはありますが、これを結論とする可能性は限りなく低そうな気がします。やはり続けざまの4人は余りに重いからです。

それとワクチン行政を考える上でも大きな転換点になる可能性があります。MMRの件以来、日本のワクチン行政は萎縮の方向が続いていました。これが近年になり、ようやく世界の潮流に追いつこうと方針変換されていました。今回の事件の重さは再び萎縮の方向に戻る可能性が十分にあります。そうなっても不思議はないぐらいの重さを私は感じています。

今回は正直なところ、町医者レベルで云々できるような意見が出せません。静かに情報を待ちたいと思います。とりあえずは予約者への連絡に専念します。