つなぎの軽いのです

インフルエンザの予防接種が始まり、ブログにかけられる時間が厳しくなっています。時間が少々厳しくなっても良いネタがあれば書けるのですが、そうはいかない日もありまして、今日はつなぐだけの軽い話題です。

10/19付読売新聞(Yahoo !版)より、

司法修習生給費、続ける?やめる?…貸与化目前

 司法修習生に国が給与を支給する「給費制」から、国が生活資金を貸す「貸与制」に移行するまであと10日余りという“土壇場”に来て、給費制を維持するため、議員立法で裁判所法を改正しようとする動きが強まっている。

 国会で審議をしないスピード可決を目指す動きだが、なし崩し的な給費制維持には「司法制度改革の流れに反する」との批判も強い。

 「自民党を除く政党からはかなり理解を得られた」

 日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は13日の定例記者会見で語った。日弁連は給費制維持を訴え、国会議員に法改正を求めてきた。「年間の司法試験合格者を約3000人に増やすとの目標のもとに貸与制が考案された。だが、3000人の合格者は実現しておらず、法曹の志願者も減っている。改革全体を検証する必要がある」(相原佳子・日弁連事務次長)との主張で、「3年間の施行延期」を議員側に働きかけてきた。

 修習期間は1年間。国はここ数年、約2000人の修習生に年間計100億円近い給与を支給している。しかし、法曹人口の増加に伴い財政負担が過重になるとして、2004年に貸与制の導入が決まった。この施行日が11月1日に迫っている。

 ところが、民主党の法務部門会議は9月13日、給費制を維持する方針を決定。公明党も施行を3年間延期する考えに傾いているという。

 民主党などは11月1日を前に、議員立法の一つである「法務委員長提案」の形で改正案を提出することを検討している。事前調整で全会派が合意した場合に提案し、審議を省略して全会一致で可決することを期待している。

 全会一致には自民党の協力が不可欠だ。同党は10月20日に予定する法務部会で方針を決めるとみられる。5日の部会には、宇都宮会長が出席し、「国が給与を払うからこそ、弁護士が公に奉仕しようとする気になる」と給費制の意義を訴えた。平沢勝栄部会長は「裕福な人にも一律に給与を払うのは国民の理解が得られない」と疑問を示したが、日弁連の組織を挙げた要請に同調する議員も増えつつあるという。

 ただ、こうした動きには異論も強い。最高裁によると、新制度の対象となる今年の新司法試験合格者2074人のうち、生活資金貸与を申請したのは79%の1648人。ある最高裁幹部は約2割が申請しなかったことについて、「経済的にゆとりがある人も少なくないのに、十分な議論がないまま全員に国民の税金から給料を支払っても良いのだろうか」と疑問を投げかける。

 現在、司法修習中の男性(27)は「法科大学院の学費などで数百万円の借金を抱えている人もいる」と日弁連の主張に理解を示しつつも、「財政事情を考えるなら、過疎地で弁護士として働くなど公益的な活動をした人に返済を免除することも検討したらどうか」と提案する。

 給費制の維持を、法曹人口拡大などを目指す改革への逆行と見る関係者も多い。

 早稲田大総長に就任する鎌田薫・法科大学院協会副理事長(62)は「改革の流れに沿って、志願者や合格者を増やす努力をしなければならないのに、給費制を維持すれば予算の制約上、合格者を減らすことになるのではないか」と懸念する。第二東京弁護士会の元会長で、企業法務に精通する久保利英明弁護士(66)も「法曹人口の拡大を減速させる給費制維持より、企業や自治体で働く弁護士を増やすことをまず考えるべきだ」と指摘している。

ここの司法修習生とはwikipediaより、

司法試験の合格者は、最高裁判所司法修習生として採用され、公務員に準じた身分で司法修習を行う。司法修習は裁判官・検察官・弁護士のいずれを志望する場合であっても、原則として同一のカリキュラムに沿って行い、修了後、裁判官であれば判事補として任官、検察官であれば検事(2級)として任官(これを「任検」という。)、弁護士であれば弁護士会への登録を行い、それぞれ法曹として活動するほか、研究者等それ以外の進路を選ぶ者もいる。

要は司法試験合格後の進学先と言えばよいのでしょうか。もうちょっと言えば司法試験とは司法修習生の資格を得るための試験としても良いかもしれません。司法修習生として修習を終えた後に国家試験があり、これに合格してやっと正式の裁判官、検察官、弁護士になれる事になります。その修習期間ですが、制度の変更があって煩雑なんですが、これもwikipediaより、

旧司法試験合格者対象の司法修習

  • 第52期(1998年4月修習開始)まで - 2年
  • 第53期(1999年4月修習開始)から第59期(2005年4月修習開始)まで - 1年6か月
  • 第60期(2006年4月修習開始)から - 1年4か月
新司法試験合格者対象の司法修習
  • 新60期(2006年11月修習開始)から - 1年

旧司法試験と新司法試験の合格者の比率まで調べていませんが、やがて新司法試験に収束されるでしょうから「1年」と考える事にします。なんとなく医師の研修医制度と似ているのですが、医師の場合は国家試験で先に医師の資格を付与されていますが、司法の場合はあくまでも学生扱いぐらいに解釈すれば良いのでしょうか。現在の研修医制度と言うより昔にあったインターン制度の方が近いかもしれません。

とは言え天下の司法試験合格者ですから「ただの学生」とはチト違います。これもwikipediaからですが、

司法修習生は、司法試験合格者から最高裁判所がこれを命ずる(裁判所法66条1項)。身分は公務員ではないが国家公務員に準じた地位を有するため、守秘義務・修習専念義務を負い、副業・アルバイトは許されない。行状が品位を辱めるものと認めるとき、その他最高裁の定める事由があると認めるときは、罷免される(裁判所法68条)。

なかなか重々しい身分で、公務員並の守秘義務もあり、さらに兼業禁止も課せられているようで、準公務員みたいな待遇です。ここで副業やアルバイトも禁止となれば、司法修習生の間の生活はどうするかの問題が出てきます。収入が無ければ食べていけないのは現実です。そこで給費制度と言うのがあります。

司法修習生は、国家公務員と同じく国から給与を支給される(裁判所法67条2項)。国家公務員一種採用者と同等額(本俸20万4200円に各種手当)が支払われる。

あくまでも素直な感想ですが、公務員並の義務を課しているわけですから、それなりの待遇もまた補償されても良いとは思います。現在の司法試験では大学卒業後に法科大学院を卒業する必要があります。どうやら法学部卒が2年、その他の学部であれば3年のようですが、大雑把に医学部並みの6年と考えても良いかもしれません。

医学部と異なるのは、医学部を卒業すればかなりの高確率で医師になれますが、法科大学院を卒業してもかなりの確率でプロになれない点が異なります。医師免許を持たない医学士(基礎とかは除く)の価値は非常に低いですが、プロになれなかった法科大学院卒業生も価値が高いとも思えません。そうなるとかなりのリスクと言うか、犠牲を払ってようやく司法修習生の身分を得ているわけです。

司法修習中も公務員並の義務を課せられるわけですから、生活費の面倒を見ても過保護とは思いにくいと個人的には感じています。ところがこの給費制度を貸与制度に切り替える事が決まっているそうです。

2010年11月採用の修習生(新第64期)からは給与支給を廃止し、最高裁が無利息で生活資金を貸与し修習後にこれを返済する制度となる(平成16年12月10日法律第163号参照)。司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)によれば、貸与額は基本額23万円であり、貸与後5年据置きで10年以内で返済することになる。

2010年の11月と言えば目前ですが、このwikipediaの記載から計算してみます。月額23万円で1年ですから基本額だけで276万円です。これをプロになってから5年目以降に返済し、10年以内には完済する制度のようです。さすがに無利息ではあるようです。給費制に較べて待遇が大きく異なり、実際の司法修習生の負担も大きい事から反対意見が根強くあるようです。

ここでよく判らないのは、貸与制移行への反対意見として、

    司法制度改革の流れに反する
正直なところ、これだけの記載ではサッパリ意味がわからないのですが、あえて推測すれば、新司法試験移行に伴い、これまで非常に数が抑制されていた弁護士の増加が期待されるとなっています。おそらく改革とは弁護士が増えることを許容した事であり、弁護士を増やす交換条件として給費制を貸与制に切り替えて予算を節減するのが「改革」と言う意味でしょうか。

どうも「改革」という言葉からは予算をバッサリ以外のイメージを紡ぎだすのが難しいのですが、他にも高邁な理念が実はあるのかもしれません。あくまでもこの記事だけからの解釈ですが、これまで法曹人口の拡大を阻んでいたのは給費制による人数制限であり、これを撤廃する事により多数の法曹資格者を量産するのが司法改革の高邁な理想であるはずだぐらいにも思えます。

それとこの貸与制は強制貸付でないらしく、希望者に貸与する奨学金みたいなものでもあるようです。今年の貸与希望状況は、

    新制度の対象となる今年の新司法試験合格者2074人のうち、生活資金貸与を申請したのは79%の1648人
給費貸与論争は、この2割ほどの非希望者の存在を重視しているのだけはわかります。2割も不要な司法修習生がいるのだから、一律に給付するのは無駄遣いの考えもある事は確認できます。なかなか難しいところかもしれませんが、記事に出てくるある司法修習生の言葉の趣が非常に深かったので紹介しておきます。
    「財政事情を考えるなら、過疎地で弁護士として働くなど公益的な活動をした人に返済を免除することも検討したらどうか」と提案する。
チイとばかりブラックな妄想が頭に浮かんでしまいました。現在の研修医も国から給与を受けています。これを無給にして希望者のみに貸与制に変更する「改革」です。それでもって返済を免除して欲しければ僻地義務を課す方式です。もうちょっと工夫すれば、研修期間中の貸与金を返済しないうちは官製医局への所属を義務付けられる方式と言えばよいのでしょうか。

研修医制度は私も話にしか聞いたことがないインターン制度への反対運動(インターン闘争)の一大成果ですが、いくら偉大な成果であっても時が経てば覆される事が多々あります。研修医への貸与制度がそのうち真顔で論じられても、今の医療情勢なら不思議でないかもしれません。